俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
サイド 猛田視点1
ボコられた翌日、協会から派遣してもらったイスに腰を掛けて、俺はテレビを見ていた。
「――単純に、あの猛田くんが負けたって聞いて、よっしゃって思いましたね」
「俺、猛田カルマくんのこと、正直、嫌いなんですよねぇ。なんか、言動の端々――」
テレビの中の芸人は、ヘラヘラと笑いながら、好き放題に俺をディスっていく。
さすがに、この瞬間だけは、砦よりも、この芸人にイラついた。
俺は、
「こいつを殺せって要求したら、通るのか?」
とイスに声をかける。
二十代中盤の男。
本当は女がよかったが、それはダメだと言われた。
男ならいいのかよ、とも思ったが、まあ、それは言わないでおいた。
「それは……勇者にふさわしくない行いです」
下から、そんな声がする。
『イスがしゃべるなよ』……と、理不尽ボケをしてやろうと思ったけど、ダルいからいいや。
「人をイスにしてんだぜ? 勇者もくそもあるかよ」
その後、コーナーが変わり、俺とあの濃紺《のうこん》色の髪の女の戦闘シーンの動画が流れ始めた。
画面の中の俺は、ボコボコにやられている。
個人的な感覚では、もうちょい派手にやられていたと思うが……
こうしてみると、俺もかなり粘っている。
やはり俺は強いし、何よりイケメンだ。
目がカッケェ。
芯のあるまっすぐな目をしている。
これは、女が放っておかないのもわかるぜ。
動画には、コメントの嵐が押し寄せていた。
『猛田ざまぁ』
『死んでねぇじゃん』
『猛田くん、がんばって!』
『傾国部隊、がんばれぇええ! ふれぇええ! ふれぇえええ! け・い・こ・く!』
多くの悪意にさらされて、俺は、
「くく……」
なぜだか笑えてきた。
バカが!
こいつら、なんもわかってねぇ。
俺は今回、卑怯な手をくらい、たまたま敗北に似た何かになったが、
真正面から戦えば俺が余裕で勝つ。
その前提も大事だが……
えげつないほど卑怯な手を使ったにせよ、
――あいつらはこの猛田カルマに勝った。
これがどれだけ偉大で、そして危険なことか理解してねぇ。
傾国部隊の連中はマジでえぐかった。
あの女どもはやべぇ。
俺以外なら勝てねぇだろう。
そんなやべぇ連中が暴れまわっている。
人類にとって、それは滅亡危機といってもいい本格的にやべぇことだ。
それに気づいていない滑稽さが笑える。
イスが苦しそうに、
「傾国部隊は……とてつもない強さですね。あなたですら……勝てない……とは……」
「勘違いすんな。俺は卑怯な手を使われただけだ。傾国部隊の連中は、とんでもない精度の『剣減領域』を使っていた。さすがの俺も、あれだけ徹底的にメタられちゃぁ、いくらなんでも厳しい」
「は……はぁ」
「剣減系の魔法使い……異世界じゃあまりいなかったんだが……こっちには、それなりにいるらしい。……魔法に対処できるようにならねぇとな……とはいえ、勝利の可能性はもうハッキリと見えているが」
「勝算があるというのですか? それは、いったいどんな?」
「俺は神に選ばれている。俺はこの物語の主役。最後には絶対に勝つようになっている。それを踏まえて考察するに……おそらく、俺の超スキルはまだ進化するんだろう。天才の俺は、誰よりも早く『超スキルⅡ』にたどりつく。そして、おそらく、俺の超スキルⅡは……デバフを受け付けない、必殺にして無敵の一撃」
根拠皆無だと笑うバカがいるだろう。
笑ってろ。
いずれ、俺の足元にひざまずくことになる。
わかっているんだ。
だって、俺は、この物語の主役だから。