俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
19話 猛田の歌とかいらんわ、ジュリア様を見せろ。
近くのカラオケボックスに着くと、一番でかい部屋に通された。
幸い、店内はガラガラで、貸し切りみたいなものだった。
「誰が一番手いく?」
誰かがそう言うと、すぐに声があがった。
「猛田でいいだろ」
「そうだな。ウチのクラスの特攻隊長は猛田しかいない」
「お前ら、俺のこと大好きか。しゃーねぇなぁ」
満更でもなさそうな顔で、マイクの電源を入れながら、
「じゃあ、バック〇ンバーの好きなの入れろよ」
その力強い言葉に、田中ユウトくんが感心したように、
「おお、さすが猛田……なんかもう、選曲から何から、すべてにおいてスキがないね……」
「砦さえ絡まなきゃなぁ……マジで完璧超人なんだけど……」
「あと美女もな」
「あと体調不良な」
「難しい男だぜ」
「総括《そうかつ》すると、ただのメンヘラじゃねぇか」
「坂田、『青い春』を入れて」
「お、ムズいの選ぶねぇ。砦、意地悪だねぇ」
ちなみに、現在、俺が撮影係を担っている。
こういう雑用は俺の仕事だと、半年前から決まっている。
もちろん、個々で勝手に配信している人もいる。
コメントもだいぶ盛り上がっている。
「みなさん、どうも。時空ヶ丘2年B組の砦です。今日は、クラスのみんなでカラオケにきました。そろそろ一曲目……猛田の歌がはじまります。よければ聞いてあげてください」
『おお、マジ?』
『やっば……お宝映像』
『こういうのも、たまにはいいよな』
『猛田の歌とかいらんわ、ジュリア様を見せろ』
もちろん、喜ぶ人もいれば、嫌がる人もいる。
なんだってそう。
そんなこんなで猛田が歌いだす。
若干のクセはあるものの、普通にうまかった。
くそが。
『猛田くん、歌うますぎ』
『音程あってるだけ』
『うますぎて濡れる』
『調子のんな』
『カルマァァ、好きぃ! きゅんです!!』
信者とアンチのミルフィーユになっているな……
そのままきっちりとほぼ完璧に歌いきって、点数が発表される。
――100点。
うわぁ……普通に100点とりやがった……
カラオケって100点でるんだ……
それも、あんなアホみたいにむずい曲で……
「ふん」
どうだ、みたいな顔で俺を見てきた。
うざぁ……
調子のんな。
音程あってるだけだろ。
……おっと、つい、心の中でクソコメしてしまった……
いかん、いかん。
「トウシ、私は歌が苦手だ。一緒に歌ってくれ」
ジュリアの番が回ってきたところで、そんなことを言われた。
「俺も歌は苦手の方向性によっていなくもないというか――」
言葉を濁していると、対見が、ひょいと割り込んできた。
「じゃあ、私とも一緒に歌ってよ。複数で歌えば、個々のうまい下手とかまぎれるじゃん」
かぶせるように、琥珀も、
「わたくしも、ぜひ、その作戦に合流させてくださいませ。歌は苦手でして……」
歌が苦手なやつ多いな……
てか、じゃあ、なんでカラオケ大会に参加した?
と思っている間に、ジュリアが選曲を終える。
流れだしたイントロは、キャンユ〇セレブレイトだった。
いや、ゴリゴリ女子の歌……そんな高いの歌えるわけねぇだろ……
ナメやがって……
こうなったら、伝家の宝刀、KUTIPAKUでいくしかないか……
スマホを田中ユウトくんに預け、
俺は――『音声のない熱唱』をぶちかました。
すると、猛田が、目ざとくそれに気づいて、
「てめぇ、歌ってねぇじゃねぇか、ぼけぇ!」
うるさい。
ソレ以上わめくようなら、全力の田中玉をくらわせるぞ。
前のは、かなり出力を抑えたから耐えられただけで、本気で撃ったら、お前なんか影も残らないぞ。
レベル1000以下の雑魚が、この俺様にナメた口きくんじゃねぇ。
我、ダンジョン魔王ぞ。
『砦、マジで口パクなんだけど』
『せめて、歌えよw』
『ジュリア様、歌うまっ』
『対見様もプロ並みなんだが』
『琥珀たんも発声えぐ』
嘘をつきやがったな、女子ども……
この俺に……嘘を……っ
お前ら、めちゃくちゃ上手いじゃねぇか……
猛田を筆頭に、どいつもこいつも、俺をハメようとしやがって……
俺がいったい何をしたってんだ……
……異世界で、ずっと足手まといをやっていたな……
だからか……
じゃあ、しゃーない……
甘んじて、この辱めを受け入れよう。