俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。   作:閃幽零

38 / 39
20話 5人ともエロすぎ。

 

 20話 5人ともエロすぎ。

 

「てめぇ、一回ぐらいちゃんと歌え、ぼけぇ」

「バカには聞こえない声でちゃんと歌っていたよ」

「ぶち殺すぞ」

 

 次の順番でも、猛田がつっかかってきた。

 うるせぇよ、『さくら〇ぼ』なんか歌えるわけねぇだろ。

 Aメロで喉つぶれるわ。

 

 女子連中もさぁ……

 俺と一緒に歌っているっていう前提はもちろんわかっているよね?

 なのに、なんで、バキバキ女子の歌ばっか入れんの?

 いやがらせが高度すぎるんだよ、くそったれ。

 俺が嫌いなら、こんな遠回しな方法じゃなく、面と向かって言えよ。

 

 女子ってほんと陰湿だわぁ……

 

 などと心の中で文句を垂れつつ、

 ある程度のところで同接を確認する。

 800万か……もちろん、えぐいんだけど……ちょっと弱いな……

 

 仕方ない。

 ――切り札を投入するか。

 

 俺は、こっそり合図を出し、彼女たちをカラオケルームに呼び入れた。

 

 傾国部隊の5人。

 

 異常に美人な彼女たちの登場で、場が一気に華やかになる。

 華やかというか……なんか、遊郭《ゆうかく》みたいになったな……

 

 もちろん、最初は絶叫が起こった。

 すぐさま戦闘態勢に入る猛田。

 他のメンツもスキルの準備を始めた。

 みんな、目がギラついている。

 そりゃそうだ。

 

 ――が、傾国部隊のリーダー、田中クレオパトラが、優雅に手を振りながら、

 

「今日は戦う気なんてないから安心しなさい。我々も息抜きにきただけだ。ついでだから、有名人であるあなたたちと一緒にさせてもらおうと思っただけ」

 

 だいぶ無理がある……というか、意味不明だが、別に、理由なんかなんだっていい。

 

 傾国部隊の5人が、ウチのクラスメイトたちと一緒にカラオケをする……

 そうすれば、確実にバズる。

 

 それだけの話。

 

『傾国部隊きたぁ!』

『なんで? どういう状況?』

『もしかして、時空ヶ丘とはグル?』

『誰か説明kwsk』

 

 コメント欄も荒れに荒れた。

 

 とはいえ、それも最初だけ。

 傾国部隊の5人がきゃっきゃしながら歌を選び出し、普通に歌いだしたものだから、徐々に、警戒レベルも下がっていく。

 

 人間、なんにでも慣れるもの。

 

 傾国部隊の5人がマジでただ参加しているだけという様子を前に、だんだんと緊張もほぐれてきた。

 

 しだいに男子どもは、彼女たちの色香にゴリゴリに惑わされていく。

 女子連中は、特殊な嫉妬心的な殺気みたいなものを向ける者もいるが、傾国部隊の面々が歌いだすと、その殺気もゆるやかにしぼんでいく。

 

 うちの5人娘は、歌がうますぎた。

 猛田みたいに、100点をとれる歌ではないが……心の芯に響くうた。

 他者の心を震わせる技能の全てを会得しているみたいな、脳に直接触れてくるみたいな魂のボイス。

 

 時折、俺に『これでよろしいですか?』みたいな視線を送ってくるのだけはやめてもろて。

 

『えぐすぎて草』

『人類史上、一番うまいんじゃない?』

『5人ともエロすぎ』

『これ、ただで見ていいんですか?』

『傾国部隊、マジ神』

『きゅんです』

『推しが更新されますた』

 

 ★

 

 結局、最終的な同接は3800万まで伸びた。

 

 笑いが止まらないねぇ。

 あとは、拡散しまくってもらえば……

 まあ、最終的に十数億再生ぐらいはなるかな……

 

「砦、てめぇ、結局、最後の最後まで歌わなかったな」

 

 帰り際、猛田がそう絡んできた。

 

「猛田だけに、俺の秘密をそっと教えよう。俺はカラオケで50点台しか出ないんだ」

 

「今日の機種はジョイ〇ウンドの精密採点AIだから、どんだけ下手にうたっても75以下にはならねぇぞ」

 

「じゃあ、75をとる。それが俺クオリティ」

 

「……」

 

 猛田は一瞬、俺の顔をじっと見つめたあと、ふと真顔になって、

 

「ところで、砦……あいつら、本当のところは、何しに来たんだと思う?」

 

「傾国部隊のこと?」

 

「それ以外に何があるんだ!」

 

 と叫びながら、ぶん殴ってくる。

 それ、やめろって、うざいなぁ……

 こいつの情緒、ほんとバグってる。

 

「猛田とジュリアを偵察にきたんじゃない? 二人が人類の最高峰だから」

 

「つまり、あいつらは俺を警戒している……なるほど……やはり、剣減系の魔法を使っていやがったな……そうじゃなきゃ、ここまでの全てに説明がつかねぇ。……となれば、殺せる……超スキルⅡさえ覚醒すれば……確実に……」

 

 ぶつぶつとそんなことを言いながら、猛田は一足先に寮へと帰っていった。

 

 その背中に、両手で中指を立てたあと、俺は空を見上げる。

 すっかり暗くなって、星空でいっぱいだった。

 

「あと2日……か」

 

 思わず、そうつぶやいてしまった。

 

「なにがだ?」

 

 ジュリアが、隣に並んで声をかけてきた。

 

「あと2日で世界が終わるんだよ」

 

「そうか。大変だな」

 

「信用してないね」

 

「いや、私はトウシの言うことは基本信じている」

 

「……じゃあ、もっとやばいね。何を落ち着いてんの。泣きわめかなきゃ。2日後、世界終わるんだよ」

 

「トウシがいるからな……何とかなるだろうと、思ってしまう」

 

「……イカれてるねぇ」

 

 そう言いながら、俺は、心の中で決意する。

 

 絶対に生き残る……

 敵の大将を、必ず、田中玉で仕留めてやる。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。