俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。   作:閃幽零

39 / 82
21話 決戦前夜。

 

 21話 決戦前夜。

 

 ついに残り1日。

 つぅか、明日が決戦!

 

 ゲロ吐きそうなぐらい緊張しているけど、こういうときこそ丁寧かつ慎重に数字を見ておかないとな。

 

 昨日のカラオケで、なんだかんだダンジョンポイントを10億ほど稼いだ。

 これで、残りは25億……

 

 仮に今日、何かしらでちょこっと5億や10億バズっても、NPCを作成することもできねぇ。

 中途半端に稼いでも中途半端に終わる。

 なら、今日は別のことに時間を使った方がいい。

 

 猛田のレベルを上げて参加させるかどうか、ちょっと悩んだが、

 1000だとなぁ……ここで死ぬ可能性も高い。

 あいつは高い視聴率をもっているから、今後のことも考えると、ここで肉壁使用するのははばかられる。

 

 というわけで、俺は今日、地下迷宮センエース第18階の鍛錬世界で戦闘訓練を積むことにした。

 

 俺は異世界でも、一度もまともに戦っていないから、戦闘能力が皆無に等しい。

 

 別に俺は田中玉を撃つだけの一発屋固定砲台だから、

 戦闘技術を鍛える必要はないんだけど……

 まあ、一応、やれることは全部やっておこうと思ってね。

 

 役目が一発屋だから、別に体を休める必要すらないし。

 

 第18階は、天井が異様に高い、円形の闘技場のような空間。

 床は磨き上げられた黒石で、蹴り込むたびに、乾いた音が反響する。

 空気自体が、いつもの迷宮とは違って、ピリピリと張り詰めていた。

 

 というわけで、現在、ここには、ロキ、ジャンヌダルク、ゲムゥシャ、傾国部隊の5人、アシュラ、がそろっている。

 

 みんながいつもやっている組手とか、鍛錬とかもろもろ見せてもらったが、えぐいね。

 

 拳が空気を裂く音、地面が抉れる音、そのたびに、俺の心臓が変な感じにきゅっとなる。

 

 すごい、すごい。

 みんな、一流アスリートが泡吹いて倒れるレベルの動きをしている。

 

 これは、俺がなんかする必要はマジでないな……

 と心の底から思ったものの、一応、体を動かしておく。

 

「旦那様……腰をこう回す感じでございまして」

 

 ロキが、律儀に手本を見せながら、そう教えてくれる。

 流れるような、無駄のない動き。

 同じことをやっているはずなのに、俺がやると、なぜか、おじいちゃんの体操になる。

 

「こうっすかね……」

 

 言われた通り、見様見真似で真似てみる。

 

「すばらしい。さすが、旦那様」

 

 生暖かい目で拍手を送ってきやがる……

 3歳児をあやすみたいに言われてもうれしくないよ?

 なんせ、俺、高校2年生だからさぁ……

 

 今日一日ずっと、正拳突きのやりかたを教えてもらっているのだが、まあ、うまくいかないね。

 俺は、運動神経がぴったし60点なんだ。

 俺にできることは、テストの点で普通に間違わないことだけ。

 

 それ以外は何もできないポンコツ。

 

 俺が、もう一度、しっかりと正拳突きをすると、

 周囲にいた傾国部隊が、

 5人そろって、盛大な拍手をしながら、

 

「「「「「すばらしい!!!」」」」」

 

 とあおってきやがった。

 許されざる挑発。

 てめぇらの血は何色だ……

 

 あろうことか、アシュラまで、

 

「さすがは王……これほどまで見事な拳は見た事ありません」

 

「なるほど……今まで、拳ってのを見たことなかったんだな。ずいぶん特殊な人生だったな……」

 

 ジャンヌダルクとゲムゥシャも、同じようにほめてきやがった。

 全員正座させて、一発ずつ殴ってやろうかな。

 お前らがアホみたいにほめてきた正拳突きでよぉ……

 

 しばらくそんな調子で稽古を続けたあと、ロキが、思い出したように口を開いた。

 

「最後に、この地下迷宮センエースに伝わる伝説の必殺技を伝授いたします」

 

「……そんなのあるんだ」

 

「やり方はいたってシンプル。先ほど教えさせていただいた正拳突きをしながら、『閃拳《せんけん》』と叫ぶだけでございます」

 

「……これ以上、必殺技の名前を叫ぶのやだなぁ……まあ、名称的に、田中玉よりはましだけど……改めて考えると、田中玉ってほんとひどいな……」

 

 俺はブツブツと文句を垂れつつ、一応、言われた通り、腰を回して、拳を突き出しながら、

 

「閃拳」

 

 と口に出してみた。

 

 すると、先ほどまでのヒョロイ拳ではなく、ビュッっと、空気を切り裂くことができた。

 突き出した拳の周りだけ、一瞬、空気がゆらりと歪んで見えた。

 

 必殺技の名前を口に出しただけなのに、明らかに精度が上がっている。

 それも、なんか……体感、『威力3倍』ぐらいに強くなってないか?

 

「ぇ……なんで?」

 

「お見事でございます。さすが、旦那様」

 

「さすがもクソも……俺、閃拳って言っただけなんだけど……」

 

「それこそが、このダンジョンに伝わる必殺技……閃拳でございます」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。