俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
3話 猛田は、眠れなくなって、嫌われやすくなりました。
玉座の間の隅に浮かぶ半透明のウィンドウを、俺は食い入るように見つめていた。
目の前に並ぶのは、『改造モンスター』のステータス。
「改造モンスターって、こんなに自由にカスタムできるんだな。ステータスはもちろん……誰を重点的に狙って、誰を狙ってはいけないかまで。……おまけにレベル200ぐらいまで強化できる……で、仮にやられても翌日には復活するんだっけ? つっよ」
「改造モンスターの創造など、旦那様の力のほんの一端でしかありません」
「あ、うん……ところで、猛田にかけた呪いは何になった? ランダムって言っていたけど」
「……今回の呪いは、『なかなか眠れなくなる』のと『嫌われやすくなる』というものですね」
「おお、えぐいね。寝つきが悪いのって、地味にしんどいよな」
派手さはないが、じわじわと日常を蝕《むしば》んでいくタイプの嫌がらせ。
……あと、嫌われるってのも、普通にえぐいな。
だって、あいつ、配信者なのに……それで、嫌われやすくなるって……え、シンプルに、やばくない?
これから先、炎上しやすくなって、ずっと眠れないとか……うわぁ……
ごめんなぁ……俺の手がすべったばっかりに……
いやぁ、申し訳ない(棒)
「まあ、今は猛田のことは、また後だ……」
俺は一つ息を吐いて、表情を引き締めた。
「ロキ、この世界は、『複数の異世界』から狙われている……って言っていたけど、そいつらの強さはどのぐらい? できれば、全部教えてもらいたい」
「もうしわけありません。10日後に侵略にくる異世界軍隊の程度しかわかりません。この愚かな私に罰をお与えください」
「……そういうのいいから。10日後にくる敵のレベルは?」
「総大将のレベルは5000を超えているものと思われます。そして、中将、少将にはレベル1000以上が5体以上……」
「……5000かぁ……」
「敵は強大です。しかし、我が陣営には旦那様がいます。赤子の手をひねるように撃退できるでしょう」
「田中玉が当たればなぁ……外れたら終わるんだよなぁ。……あれ、たぶん、一日に一発が限度だから……」
感覚的にわかる。
あれは、無限に撃てるようなものじゃない。
威力はマジでヤバいから、当てれば勝てるだろうけど……
「戦力強化が必須だな……ちなみに、異世界の侵略軍隊ってのは、どこからやってくるの?」
「案内いたします。どうぞこちらへ」
ロキに促されるまま、俺は玉座の間のさらに奥へと進んだ。
重厚な扉をくぐった先に広がっていたのは、恐ろしく広い空間だった。
「奥の壁が次元ゲートとなっておりまして、侵略者は、あそこからやってきます」
「つまり、ここが人類の最終防衛ラインってことか……負けたら一巻の終わり……」
「おっしゃる通りでございますが……敗北はありえないでしょう。こちらには世界最強の旦那様がいらっしゃいますので」
「……田中玉を撃ち終わったあとの俺は、名字が田中になっているだけのレベル5なんだけど」
ため息交じりにそうつぶやく。
「ダンジョンポイントを死ぬほど稼いで、戦力を強化する……そして、異世界からの侵略軍を撃退する。それ以外に生きる道はない……か」
覚悟を決めた俺は、拳を握りしめてロキに向き直った。
「とりあえず、戦力補強だ……NPCってのを召喚してみようか」
目の前に浮かぶボーナスリストの中から、『従順なNPCを創造する』の項目を選択する。
消費ポイントは、50億。
「たっけぇなぁ……」
小さく呟いて、ウィンドウを操作していく。
「……名前を決めないといけないのか。……えっと、そうだな……『田中ジャンヌダルク』にしよう」
俺のスキル的に、田中は一人でも多い方がいい。
「……職業、どうするか……ロキが後衛の魔法アタッカーで、俺が一発屋だから、流石にタンクが必須か……」
設定終了。
これで問題ないはず。
「これだけの額を投資するんだ……どうか、使えるコマであってくれよ……」
かなり入念に精査してから、俺は決定ボタンを押す。
すると、メッセージが表示された。
「……え、これ言わないといけないの? だる……」
俺は、ため息を一つ挟んでから、
「い、いでよ、田中ジャンヌダルク! そしてシモベになりたまえ」
召喚用のセリフを口にした瞬間、
足元に巨大な魔法陣が浮かび上がった。
そこに立っていたのは――