俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
22話 人類の命がかかった戦いが、明日はじまる。
「……なんかよくわからんけど……まあ、なんか、強そうだからいいか……」
俺が新しく取得した必殺技『閃拳』。
必殺技の名前を叫ばないといけないのがダルいけど……威力3倍の効果はなかなかのもの。
「異世界軍隊相手に俺が使うことはないだろうけど……日常生活とかで、なんか使えそうだ……今度、猛田をぶん殴るときは、これを使うことにするよ。ちなみに、これ……みんなもやった方がいいんじゃない?」
「我々はみな会得しております」
「あ……そうなんだ」
「ええ、なんせ、『閃拳』と口にするだけなので」
「……だよねぇ……」
じゃあ、なんで、さっき『さすが』って言った?
みんなが当たり前にできるなら、さすがの要素はないよね?!
……と、そこで、俺はふと、気になったことを聞いてみた。
「もしかして、これも、アリア・ギアス?」
「さすがでございます。まさしくその通り。このダンジョンに所属する者が、正式な必殺技の名前を口にして正式な型で拳を突き出す。その時にのみ、拳に神が宿る……これは、そういうアリア・ギアスでございます」
「ってことは、口を封じられたり、正式な形で正拳突きができなかったら、この威力にはならないのか……なるほど。覚えておくよ……って、こんなことを言うと、なんかフラグみたいだな。どこかで、口ふさがれそう……」
★
夜、鍛錬を終えたところで、最後、明日の作戦を発表する。
円形の闘技場の中央に、みんなを集めた。
さっきまでの、汗と熱気が漂う空気が、少しずつ、静かな緊張に変わっていく。
みんなを前に、俺は淡々と、
「とりあえず、敵の大将は俺が殺す。ロキたちは、中将や少将を全力で殺してくれ」
「吾輩《わがはい》や傾国部隊も決戦に参加できればよかったのですが……」
アシュラが、少し残念そうに、そうこぼした。
「気にするな、ルールだから仕方ない」
ロキが、心配そうな顔で、
「やはり、猛田のレベルをあげて肉壁として起用すべきでは?」
「敵は今回だけじゃなく、今後もくるんだよな? だったら、『人気配信者』を殺すわけにはいかない。あいつは生かさず殺さずで、今後も数字を稼いでもらう」
「……承知しました」
俺は頷きを確認したあと、続けて、ゲムゥシャに向き直った。
「そして、ゲムゥシャ!」
「はっ」
「お前にはできれば、トドメを任せたい! 流れとしては、俺が初手で相手の大将を田中玉で瞬殺し、相手が混乱している間に、ロキ、ジャンヌダルク、ジュリアに擬態しているゲムゥシャの三人で敵をボッコボコ。そして、最後の最後に残った敵を、ゲムゥシャが撃破。フィニッシュとして、俺のスマホに向かって、『我こそは人類の守護者、暁宮ジュリアなり!』とカチドキをあげる。これでオールオッケーだ」
ちなみに今回用に、新しいスマホを購入し、新しいチャンネルを開設してある。
俺のチャンネルでなんかやらないよ、バカじゃないんだから。
あと、宝物庫に眠っていた『ペルソナⅩ(雰囲気や声が変わる仮面)』も使う。
体のラインを隠すコートも着る。
これで、俺の正体はバレない。
あとは、『田中玉を撃ち終わったあと』から配信を開始すればいい。
できれば、『ジュリアが大将を殺すところ』を撮影したいんだけど、ゲムゥシャじゃレベル5000は倒せないからね。
一通りの説明を終えて、俺は、みんなを見回した。
誰もが、静かに、こちらを見つめ返してくる。
「……全人類の命がかかった戦いが、明日はじまる……緊張するなっていう方が無理があるが……どうにか踏ん張って、明日は頑張るよ。絶対に田中玉をあてる。ジュリアと……お前らを守る」
「ぉお……尊き王よ、私たちなど、捨て駒になさってください。大事なのはあなた様の命と勝利でございます」
ロキが、そう声をあげる。
周囲の面々も、こくこくと頷いた。
その光景を見て、少しだけ、胸の奥があたたかくなる。
「……そんなことを言ってくれるのは、俺のことを誤解しているお前らだけだよ。でも、まあ……普通にうれしいよ、そこまで想ってくれて」