俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
23話 決戦の日。
次元ゲートをにらみながら、俺は、隣にいるロキに、
「ロキ……『運命時計(敵の正確な襲来時刻がわかる)』は、いま何分?」
「残り2分でございます」
「おぉ……なんか……肺の奥が痛いねぇ……呼吸がうまくできねぇ」
人生最大の緊張が体を襲う。
俺がミスれば全人類が死ぬ。
なんでこんな目にあってんだ、俺は……
「すぅ……はぁ……」
深呼吸して、どうにか焦点をあわせる。
気を抜けば視界がぐわんぐわんしそうだった。
ちなみに、今、俺は仮面をつけている。
体のラインを隠すコートも。
念のため、ロキとジャンヌダルクにも同じものを装着させている。
今、この場で顔をさらしているのは田中ゲムゥシャだけ。
とはいえ、彼女も、ジュリアに擬態しているので……
ある意味で、全員が素顔を隠しているともいえる。
「旦那様……あと10秒でございます」
「よっしゃ」
気合を入れなおす。
心臓が口から飛び出しそう、という慣用句があるけど……
今、結構、ガチでその感覚を味わっている……
きついな、これ……
「2、1……0」
ロキのカウントダウンが終わったところで、
奥の壁……次元ゲートが光った。
それと同時、ここと玉座をつなぐ扉がスゥっと消えていく。
「ロキ……どうなっている?」
「戦争が始まれば逃げられません。敵軍はゲートの向こうに逃亡できますが、我々は、やつらを撃退しないと、玉座の間へ帰れません」
「……なるほど……」
「一応申しておきますと、玉座の間への扉が開くもう一つの条件は……我々が全滅することです」
「そうだろうね……それはわかっていたよ。俺らが負けたら、あいつらは、玉座の間を踏み荒らし、そのまま地上に雪崩《なだれ》出る……ってことだよな……」
うなずいていると、
光っている次元ゲート……
その向こうから、
ぞろぞろと……
ぞろぞろと……
鎧を着た大群が現れた。
「……うわぁ……マジで来たぁ……」
大半は雑兵。
大した強さは感じない。
ただ、ぽつぽつと、明らかにでかいオーラを放っている奴らがいる。
「あの……あの妙に強そうなやつらが中将とか少将?」
「はい。その通りでございます」
「勝てそう?」
「勝てとご命令ください」
「……勝ってくれなきゃ困るんだよなぁ……マジで……」
合計で3000ぐらいの兵隊が出てきたところで、
ヌっと……ただ一人、異質なリズムでゲートを超えてきた金の鎧。
確認しなくても一発で分かった。
普通に、一人だけ、文字通り、レベルが違う。
オーラの大きさが桁違い。
「あれが……敵の大将か……」
「そのようでございますね」
「間違いない?」
ロキが、静かに頷いて、
「――確認しました。レベル5000。敵の大将です」
確認が済んだなら、もうあとは撃つだけだ。
先手必勝!
相手はなんか隊列を組み直しているけど、知ったことかぁ!
「田中玉ぁ!!」
もうとにかく、さっさとあの大将だけ殺してしまおう……
そう思って……
田中玉を使おうとしたのだ……が……
「え……」
《現在接続可能な田中:3名》