俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
24話 3。
「……3?」
どういうことだ?
世界に田中は128万人以上いるはず……
仮に、事故や寿命で何人か亡くなっていたとしても、3ってことは……
と、そこで俺はハっとして、ロキたちの顔を見る。
田中ロキ、田中ジャンヌダルク、田中ゲムゥシャ……3人……
「まさか……この決戦場は……地球から隔離されている異空間なんじゃ……」
そして、この場にいる田中だけがカウントされているとすると、合点がいく。
……そして、やべぇ!!
「どうなさいましたか、旦那様」
「最悪の誤算だ……ここでは……最大火力の田中玉が使えない……」
「ぇ」
「世界中の田中とリンクできない……」
「……」
事前に調べておくべきだった……
まさか、こんなことになるとは……
俺は本当に大馬鹿野郎だな……
何が叡智の神だ……
こんなポンコツ……
最悪だ……
最悪……
最大火力の田中玉で敵大将を殺すことだけが、唯一の勝ち筋だったのに……
え、どうすんだ、これ……
どうやったら勝てる?
え、いや、無理じゃね……
と、思っていると、
レベル5000の金鎧が前に出て、
「我が名はアカシア!! 運命線上を駆《か》ける賢龍《けんりゅう》!! 異世界よりこの地を支配するためにはるばる参った王である!! この世界の王よ!! 名乗りをあげい!!」
その豪快な名乗りを受けて、
俺はただただ戸惑うしかない。
こっちは呑気《のんき》に名乗っている場合じゃねぇんだよ。
普通にパニック!
どうするんだよ、これ……
と困惑していると、
ロキが、
「旦那様……名乗りを。礼儀でございます」
「ぇ……あ……えと」
頭が回らない。
やばい、詰んでる。
勝てねぇよ。
相手の『レベル1000~2000ぐらいの中将と少将』が、思ったより多いし……
なんか、全部で20人ぐらいいる……
前にロキは、中将・少将の数は5人以上と説明してくれた。
だから、多くても7人ぐらいだと勝手に思っていた……
この数の差だと……仮に、俺が田中玉で大将を殺していたとしても、数の暴力で負けているんじゃないのか?
と、俺がぶるぶる震えていると、
「名乗りをあげぬとはどういうことだ! まさか、この世界の王は逃げたのか!」
アカシアがでかい声でせかしてくる。
俺は仕方なく、いったん、前に出て、
「お、俺の名前は……砦……トウシ……この世界の……王……っていうか、なんていうか……」
「まったく聞こえん! バカにしているのか!!」
うぜぇなぁ……もう……
俺は仕方なく息を吸って、
「砦トウシ! この世界の王!」
別に王のつもりはないが……
こうなった以上、名乗るしかない。
「ふはははははは! 貴様が王?! 貧弱で、頭の悪そうなツラをしている! 『アホの擬態をしている』ということでなければ納得がいかぬな!! ふはぁぁははははは!!」
なんの反論もできねぇ。
おっしゃる通りだぜ……
「トリデトウシよ!! 貴様に提案だ!」
そこで、アカシアは、自身が所持している矛《ほこ》の切っ先をこちらに向けて、
「なんじに一騎打ちを申しこぉおおおむ!!」
「……ぇえ」
「言っておくが、兵の損失がどうこうなどという下らないことは考えておらん! 私は自分の絶対的な力を魅せつけたいだけだ! 我が栄光の力を知り、絶望するがいい!!」
「……残念だったな……こっちはすでに、限界以上に絶望している……これ以上は絶望する余地がない……」
俺は、みっともないことをボソっとつぶやく。
いろいろと考えてみたが……無理だ。
どう考えて戦力的に無理……
ポーカーで言えば、こっちはクイーンのスリーカードで、
向こうはロイヤルストレートフラッシュ。
勝負になっていない……
「答えを!! 一騎打ちを受けるのか! それとも臆病風に吹かれて逃げるのか! 逃亡は敗北とみなす! 言っておくが、私は敗者に容赦をしない! 女はすべて、我が軍の性奴隷にする! 男は皆殺し! 子供は洗脳教育を施し、最前線の兵士として使う! この世界の資源はすべて奪う! それでもよいというのであれば、そのままシッポをまいて逃げるがいい! 戦争をナメるなよ、華奢《きゃしゃ》な王よ!」
「……」
俺は考えた。
必死に考えて、考えて、考えて……
そして、
「……ごめん、終わったわ、この世界、全部。……カスみたいな王で、本当に申し訳ない」
俺は、ロキたちにそう言い残してから、アカシアの方へ歩いていく。
その途中でロキが、
「だ、旦那様! どうなさるおつもりで?!」
「最後にあがいてくる。……意味ないかもしれないけど」