俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。   作:閃幽零

44 / 45
26話 宇宙よりも濃い深淵。

 

 26話 宇宙よりも濃い深淵。

 

 ――結果だけで言えば、

 

「えっと、詰みなんですけど……」

 

「……バカな……」

 

 なんだ、アカシアのやつ……

 むちゃくちゃ弱いぞ……

 

「ばかな……ばかなばかな……」

 

 いや、まあ、弱いっていうか、普通……

 普通に指してただけ。

 別に強くなかった……

 

 最初は、アカシアが手を抜いて遊んでいるのかと思ったけど……

 

「うそだ……ありえない……どういうことだ……なんなんだ、これは……幻覚の魔法か? なんだ? なんでだ……」

 

「いや、魔法とかじゃないすけど……」

 

「ありえない!! こんなわけがない! もう一度だ!! 貴様の望みのゲームで戦ってやっているのだから、一回の勝負で決まるわけなどないだろう!」

 

「……え、そうなんすか? えっと、はい……じゃあ、もう一回やりましょうか」

 

 そこで、アカシアは、また指をパチンと鳴らし、

 

「ブレイントレース!!」

 

 また変な魔法使いやがった……

 

「……えっと……なんか、名称的に、やばそうな魔法すね……」

 

「なに、大した魔法ではない。この世界に存在する、将棋の名人の脳を一時的に完全トレースしただけだ……」

 

「えぇ……チート……」

 

「この程度の魔法でごちゃごちゃ言われても困るな……さて、それでは始めよう」

 

「名人って……まともに人と指したこともない俺が勝てるわけねぇじゃねぇか……」

 

 ★

 

 ――結果だけで言えば、

 

「えっと、詰みなんですけど……」

 

「……どういう……ことだ……」

 

 こっちが聞きたい。

 確かに、さっきよりは多少強い気がするけど、

 別に劇的に強くなったってわけじゃない。

 てか、ほぼトントンだった。

 リズムがつかみにくい、という点においては、

 ブレイントレースをする前の方が上だったくらい。

 

「理解が……できないぃ……な、なにがぁ……これは夢か……?」

 

 ちなみに言っておくと、俺は、

 マジで、今まで一度も誰かと将棋をしたことがない。

 

 ルールは異世界に転移するちょっと前にゲームで覚えた。

 

 一応、ゲームでは、どのモードでも負けたことがないけど、

 そんなことは大した自慢にはならないだろう。

 

 なんか、『最新AIを使った最強名人』とか書いてあったけど、

 ……所詮、ゲームだからなぁ……

 

「私は……今……この星で一番将棋が強い脳を、そのままコピーしたんだぞ……なのに、なぜ、負ける? どういう……貴様は……なんなんだ……」

 

 嘘つけよ。

 将棋の名人だったら、さすがにもっと強いだろ。

 少なくとも、俺より弱いなんてことはないはず。

 いや、名人と戦ったことがないから、わからないけど……普通に考えたら、そりゃそうだろ。

 名人、ナメんなよ。

 

 俺は、頭をぼりぼりかきながら、アカシアに、

 

「たぶん、偶然というか……おそらく、何かの間違いだと思いますけど……一応、俺の勝ちは勝ち……なので……あの……お引き取り頂くということで……この場を収めていただけませんかね? ソレ以上の何かしらは要求しませんので……」

 

 と、おそるおそる伺うと、

 アカシアは、指をパチンと鳴らし、

 

「ブレイントレース」

 

 と、また同じ魔法を使った。

 今度は『竜王』か『棋聖』の脳でもトレースするのだろうか……

 

 などと思っていたら、

 

「うぷっ……うぅ……オロロロロロロ!!」

 

 と、急に吐き出した。

 きったね……

 

「え、なんすか?」

 

 俺は飛び跳ねながら距離をとる。

 

 すると、

 

「き、き、貴様の脳は……いったい……どうなって……」

 

「?」

 

「バカな……宇宙よりも濃い深淵……こんな狂気……ありえない……これほどの頭脳をもっていて、なぜ……そんな……アホみたいな顔ができる……」

 

 失礼な。

 凛々しいとは思わないけど、アホみたいではないだろ……

 アホみたいなのかなぁ……ヘコむなぁ……

 

 と、そこで、アカシアは、

 

「そ、そうか!」

 

 何かを悟ったような顔になった。

 

 ……勝手にどんどん話を進めないでほしい。

 こっちはまだ何も理解していない。

 

「……貴様は……自分の脳に……無意識のリミッターをかけているのか……人間性を失わないために……自身が……異常であると気づかないように……まともな人間のフリをするために!」

 

「?」

 

 なんだろう……この人は厨二病なのだろうか……

 

「これほどまで異常な超知的生命が王をしている世界があったとは……知性だけなら、『ゾーコ陛下』と同じか、ソレ以上……」

 

 そこで、アカシアはニタリと笑い、

 

「しかし、助かったぞ……貴様は、自分自身に、自分では外せない制限をかけている……その頭脳をフルで活用されたら、勝ち目などないが……今の状態なら勝てる……容易に……」

 

 そこで、置いていた矛を拾い上げると、

 アカシアは、一瞬、なにかを振り切るように目を細めてから、

 

 

 

「死ねぇええ!!」

 

 

 

 そう言いながら、俺に向かって、矛を薙いだ。

 ザクリと胸部が刻まれて、大量の血があふれる。

 

「が……はっ……」

 

 容赦ないにもほどがあるだろ……

 こんな……急に……

 

「くく……狂気の頭脳を持つ王よ。貴様は終わりだ。ここで死ぬ。私『ごとき』に殺されて……くくく」

 

「……や、やべぇ……この出血……」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。