俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。   作:閃幽零

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27話 王。

 

 27話 王。

 

 俺は腰に下げている『魔法の収納袋』に手をのばす……が、

 

「回復アイテムなど使わせるわけないだろう」

 

 アカシアにあっさりと奪われた。

 

 俺はバタリと倒れる。

 流れていく血が、異常なほど赤くて、きれいだと思った。

 

「……やばい……マジで……死ぬ……」

 

「死ね。おそらく、それがこの世界のためでもある。その頭脳が『リミッターなし』で暴れたら……おそらく、世界は終わる」

 

「なに……いってんだ……ずっと……俺は……ただの……どこにでも……」

 

 意識が遠のく。

 

 やばい。

 気絶したら、何もできない……

 

 どうにかしないと……

 

 このままだと、ジュリアが殺される……

 

 ジュリアだけじゃない……ロキも……ジャンヌダルクも……ゲムゥシャも……アシュラ……傾国部隊……みんな……

 

 考えろ……

 どうしたら……

 

 何ができる……

 この状態で……

 俺に……

 

 何が……

 

 

 

 

 ありあ

 

 ぎあす

 

 

 

 

 ……

 

 そうだ……

 

 どうせ死ぬなら……

 

「俺の……全部を……ささげる……」

 

「ん?」

 

「だから……数秒でいいから……俺に……大事なものを……守る……力を……」

 

「まさか、『絶死《ぜっし》のアリア・ギアス』を刻もうとしているのか? 命を捨てることによって得られる数秒間だけの限界突破。……ふふ……無駄だ、貴様のリミッターは、絶死ごときでは――」

 

 その時、俺の『奥』から、

 声がきこえた

 

 ――地獄に落ちてもかまわない?――

 

 せかいのこえ?

 ちがうかも……

 わからない……

 脳がまわらない

 

 

 ――無間《むげん》の地獄に落ちて、永遠の痛みを受けてもかまわない?――

 

 

 いいわけねぇ……

 ねぇ……けど……

 

 

 ――言葉にもできない絶望の底で、永遠にもがき苦しみながら、それでも――

 

 

 

 ……それでもいい……

 

 

 ――誰にも理解されず、命の業《ごう》を背負い、王としての苦悩と苦痛だけを未来永劫、終わることなく――

 

 

 ……それでもいいっていっている……

 

 よくねぇけど……

 

 でも……

 

 うけいれるから……

 だから……

 

 

 

 だいじなものを……

 ……まもれるちからを!!

 

 

 

 

 ――最高にカッケェぜ、トウシ。やはり、お前こそ王にふさわしい――

 

 

 

 

 あたまのなかで、

 なにかがはじけた

 

 せかいのこえがきこえる。

 

 

《――王の覚悟を示したことで、田中スキルⅢ『田中の王様』が解放されました》

 

 効果「近くにいる田中から一時的に元気(レベル)を分けてもらえる」

 

 

 

 よくわからんけど……

 

 たなかのおうさま……

 きどうする……

 

 

 みんな……

 

 おれに……

 

 げんき(れべる)をわけて……

 

 

 

「「「果てなく尊き王よ……もちろん、喜んでわれらのレベルをささげます」」」

 

 

 

 『レベル5』

 

        →

 

          『レベル6002』

 

 グワリと、

 俺の全部が沸き立った。

 

 ぐつぐつと命が鳴動する。

 

「……治癒ランク65」

 

 唱《とな》えた瞬間、胸の傷から淡い翡翠《ひすい》の光があふれ、

 裂けた肉が、みるみる塞《ふさ》がっていく。

 

 理解できる。

 わかる。

 レベルが爆裂に底上げされたことで、

 いくつかの魔法を取得することができた。

 

 これが一時的なものであることも、

 何もかも、はっきりと理解できる。

 

 頭が……妙にすっきりしている。

 すごい速さで回転する……

 

 なんだろう……

 全部が……軽く遅く感じる……

 

「ぷはぁ……」

 

 息を吸ってみる。

 傷はすでに回復している。

 

 アカシアが、俺を見て、

 

「な……なにを……何をしたぁああ!」

 

「何を? いや、別に大したことじゃない。今たまたま覚醒したスキルⅢを使って、配下からレベルを1999ずつ貸してもらった。一時的に俺のレベルは1999×3+5になっている。それだけの話だよ。何も難しいことはない」

 

「レベル……6002……だと……」

 

「そういうこと。お前は運が悪く、俺はついていた。結局のところは、それだけの話だ……が……しかし、結果として俺は……」

 

 そこで、俺は、アカシアに近づき、

 

「――お前を殺せる」

 

 ぶん殴ってみた。

 ガツンと深く、相手の腹部に俺のこぶしがめり込む。

 

 これが高レベルの世界……

 なんか、全部が軽く感じる……

 なのに、拳だけはやけに重く感じる。

 

「ぐっ……うぉおおおおお! ナメるなよぉお! 特殊なスキルで一時的にレベルを底上げしただけならばぁあ! 力の使い方はわからないだろう!!」

 

 そう叫びながら、俊敏な……獣のような動きで、俺との距離をつめ、

 

「うらぁああ!!」

 

 鋭利な角度のこぶしを、俺の左腹部にぶちこんできた。

 俺の体が横に少し吹っ飛ぶ。

 

「貴様は戦闘訓練をしたことがないだろう!! 体と動きを見ればわかる! レベル1000程度の差など、実践経験値の差でどうとでも――」

 

「閃拳」

 

「ぶはぁあああああああああ!!!」

 

 俺の閃拳が、アカシアの腹部を貫いた。

 レベル6002の3倍の火力が、その一撃に乗っていた。

 

「な、なぜだ……なぜ……まともに鍛錬もしてない……その貧弱なこぶしに……神が宿る?!」

 

「もう、全然わかんないっすねぇ……その辺のあれこれは。……この技に関しては、なんか、うちのダンジョンの伝統というか、秘伝というか……そんな感じのやつらしいすけど」

 

「……なんで……こんな……異常だ……こんな、ふざけた……」

 

「チートで勝って申し訳ないけど……侵略者に容赦はしないんで」

 

 そう言ってから、俺は、

 

 

「――ぁ――」

 

 

 ……アカシアの頭をグシャリと踏み潰した。

 足裏に『命の終わり』を確かに感じた。

 

 そっと足をあげてみる。

 アカシアの頭部はつぶれ、完全に息絶えていた。

 

 死体をじっくり見てみたけど……

 ……なんだろう……

 何も感じない。

 大型の生き物を殺したのは初めてだから、もっと心が動くかと思ったけど……

 田中の王様を使っている間は……なんか……全部が俯瞰《ふかん》に見えるな……

 

 酒とか飲んだ時って、もしかしたら、こんな感じなのかな……知らんけど……

 

「っと、そうだ……これで終わりじゃないんだ」

 

 俺はそこで、周囲を見渡す。

 この世界を侵略にきた3000の兵士たちがいた。

 容赦する気は一切なかった。

 だって、こいつら侵略者だからね。

 勝手にやってきて、俺らを皆殺しにしようとした連中。

 

 いや、違うか……女は性奴隷だっけ?

 

 なんにしろ、ナメやがって……

 ……マジで、許す理由が一個もねぇ。

 

 まあ、でも……一応……

 

「お前らの王は死んだ。このまま逃げるなら追わないけど……どうする?」

 

 そう尋ねると、『アカシアの配下』たちが、

 一斉にオーラを全身から噴出させ、俺をにらんだ。

 そして、戦闘態勢に入る。

 

 ぽつぽつと聞こえてくる声。

 『王の仇《かたき》……』

 『ゆるさぬ……』

 

 あ、そう……

 言っておくけど、この戦争を始めたのはそっちだ。

 勝手に侵略にきて、撃退されたら許さない?

 ……ふざけんな。

 

 俺は『王』として、やつらの運命を決断する。

 

 全員をロックして、

 

 

 

「――ソードスコールノヴァ――」

 

 

 

 範囲魔法を使ってみた。

 

 大量に出現する魔法の剣が、

 侵略者たちを一瞬のうちに切り刻んでいく。

 

「ぐぎゃがあ!!」

「がばぁ!!!」

「ざばば!!!!!」

 

 

 だいたい8秒ぐらいで……

 

「全員死んだかな……」

 

 庭の草むしりが終わった時のような感覚。

 晴れ晴れとして、すがすがしい。

 

 そんな俺の背後には、

 3人の配下たち。

 片膝をつく平伏の姿勢で、

 ロキ、ジャンヌダルク、ゲムゥシャが、順番に、

 

「深淵の王よ。この銀河で最も偉大な神よ」

「あらためて、我々の絶対なる忠誠をささげます」

「砦トウシ陛下、万歳。あなた様こそ、この世界の全てを包み込む光」

 

 その過剰な崇拝姿勢に対し、俺はため息交じりに、

 

「大げさな……俺はただの凡人だよ。どこにでもいる普通の、何もできないただのガキだ。今回だって、たまたま、女神からもらったチートスキルがすごかっただけ……俺は何もしてないよ」

 

 と、そこで、俺はハっとする。

 

「あ……しまった」

 

「旦那様、どうなさいました?」

 

「配信すればよかった……絶対にバズったのに……」

 

「……」

 

「もったいねぇ……絶対に100億再生は行ったぞ……」

 

 

 などと思っていると、

 また、世界の声が聞こえた。

 

 

《――Congratulations。異世界侵略軍を撃退したことで、砦トウシのダンジョン魔王としての格が『一つ星魔王』へと昇格しました》

 

《格が上がったことで、上級配下のレベル上限が3000、ダンジョン配信者のレベル上限が2000に上昇しました》

 

《ダンジョンポイントで購入できる項目が追加されました》

 

 

《格が上がったことで、高級商品が少し安くなりました》

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・改造モンスターを創造する。

 《1000万ポイント》

 

・好きなダンジョン配信者を強化する。

 《1億ポイント》

 

・好きなダンジョン配信者に呪いを与える。

 《1億ポイント》

 

・下級配下のレベルを底上げする。

 《1億ポイント》

 

・配下のレベルをあげる。

 《5億ポイント》

 

・従順なNPCを創造する。

 《50億ポイント》

 

・改造モンスターの格を上げる。

 《50億ポイント》

 

・神器を創造する。

 《100億ポイント》

 

・ダンジョンを拡張する。

 《100億ポイント》

 

・ダンジョンガチャを回す。

 《50億ポイント》

 

・好きな配下にランダムなスキルを与える。

 《50億ポイント》

 

・固有スキル『名字を田中にする』を強化する。

 《700億ポイント》

 

・固有スキル『名字を田中にする』の真の力を解放する。

 《999兆ポイント》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

《さらに、殲滅ボーナスとして、最上級配下『咲き誇る絢爛《けんらん》アダム』が玉座の間に配属されます》

 

 

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