俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
サイド 綾大路視点1
私の名前は綾大路藤明《あやのおおじとうめい》。
ダンジョン対策協会日本支部の支部長である。
今、私は、世界中から重鎮が集まる『ダンジョン対策協会、世界会議』の司会役を任されて、つつがなく進行している。
今日出席していないのは、レオーネ様と、ミハルド様のみ。
みな、お忙しい方ばかりなので、この出席率の高さは異常。
司会の仕事は、もう少し若手がやるものなのだが、前の一件があってから、私の立場は弱くなっており、こうして、頻繁に雑用をやらされている。
「――ダンジョン配信での収益は、ここ一か月で、飛躍的な伸びを見せております。時空ヶ丘の面々が配信をはじめてからというもの、通常の動画配信サイト全盛期と比較しても、実に6020パーセント増です」
ずいぶんと景気のいい話をしている。
この協会は、本来、人類滅亡を回避するために設立された組織のはずだ。
だが、最近では、金の話ばかりをしている。
しかし、それも無理からぬ話ではある。
古文書には『ダンジョンを育てないと世界が終わる』とは書かれているものの、具体的に何がどうなって世界が終わるのかは、まったく記されていない。
――これでは、真剣に取り組むのも難しかろう。
「それで、ダンジョンの様子に変化は?」
「現状、とくにありませんね」
「地下二階には、いつ行けそうなのかね」
「ジュリアと猛田なら、ガーディアンを殺せるのでは?」
「というか、配信で一回、ジュリアが殺していただろう」
「今のところ、彼らは、一階を念入りに探索しているようで」
「そんな悠長なことをさせている場合かね」
「もっと、バンバン働かせないと」
「そうそう、馬車馬のようにね、くく」
――今、ジュリア様を馬扱いしたか? 許さんぞ……
などと、腹の底で怒りを燃やしていると、
会議室の扉が、突然、蹴破られるようにして開いた。
「――ッ!」
警備員が数人、すっ飛ばされて床を転がる。
なすすべもなかった。
協会に正式配属されている専属チーム『エンジェルライダーズ』が隣に待機していたので、すぐに出てもらったのだが、
「け、傾国部隊かよ……」
「剣聖勇者の猛田ですら手も足も出なかった相手……」
「勝てるかよ……」
先頭に立った女に一睨みされただけで、ぴたりと押し黙り、その場から動けなくなった。
――傾国部隊。
濃紺の髪をなびかせたリーダー格の女が、我が物顔で会議室に入ってくる。
その後ろには恐ろしいぐらいのイケメンが立っていた。
そのイケメンは、
「お初にお目にかかります。吾輩は傾国部隊のマネージャー、アシュラと申します。今日は、少々、皆様のお時間をいただきたく参上しました。できれば、抵抗はやめていただきたい。吾輩、人殺しを趣味にはしておりませぬゆえ」
そう言いながら、ギラっと覇気を放ってきた。
長い長髪をオールバックにして、バリっとしたスーツを着ている超イケメン。
世界中のホストが束になってもかなわなそうな、その男の覇気を受けて、私は漏らしそうになった。
……まずい。
まずいまずいまずい。
へたしたら、全員、殺されるかもしれん……
私は、震える手でスマホをつかみ、猛田に電話をかけた。
だが……なかなか出ない!
なにをやっているんだ、あのバカは!
「――た、猛田くん!」
ようやく出た!
遅い!
「出番だ! 傾国部隊が押しかけてきた!」
『……今、サウナ入ってんだよ』
「は?! そんなことをしている場合じゃ――」
『傾国部隊なら、犯罪者をボコるだけだろ……モンスターの襲撃ならともかく、緊急性はないだろ。今日の俺は、リフレッシュにきてんだ。じゃあな』
「ちょ……ちょっと?!」
ぷつり、と通話が切れる。
あのクソガキ……
いざという時に、まったく役に立たない……
わがままで、乱暴もので、口の減らないゴミカス豚野郎……