俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
サイド 綾大路視点2
「我々は偉大なる王の命令でここにきた!」
絶望する私に構うことなく、クレオパトラと名乗るリーダー格の女は、円卓の真ん中まで悠然と歩いてくると、こちらを見下ろして言った。
「とりあえず、まずは金をよこせ」
「え……か……かつあげ……?」
「ナメたことぬかすな。正当な報酬をもらいにきただけだ」
「おたくら、儂《わし》らを広告塔にして、死ぬほど稼いだようじゃないの、このゲロ虫ども」
「ヒック……よこせ。酒代にする」
「…………断ってくれていい。罰として八つ裂きにする」
「だめよ、ダッキったらぁ。殺しはNGって、王にいわれているでしょぉ」
「いや、広告塔には……べつに……た、たしかに、君たちが関わっている動画では収益をあげているが――」
「さえずんな、カス。誰か喋っていいっていったか、あぁん?!」
その一言だけで、抗弁の気力が根こそぎ削がれる。
「広告収益は、クリエイターが55パーセントってのが通例らしいな」
「儂らで稼いだ分が使えるクレジットカードをよこしなさい、このゴキブリのなりそこないども」
「あと、酒、あるだけもってこい、ヒック」
「…………誰か逆らえ。おとなしくすんな。暴れたい」
「あぁ、あと、秘密の会員権もよこしてねぇん」
こんなもの……当然、私の一存で決められる金額ではない。
私は、振り返って、今回の議長である蛇尾正義《へびおまさよし》様に視線を向ける。
「ど、どうしましょうか……蛇尾様」
蛇尾様はしばらく黙ったあとで、
「……了解した」
と、あっさり傾国部隊の要求をのんだ。
意外……でもないな。
この状況で傾国部隊に逆らっても意味がない。
それに、彼女たちは、
『自分たちで稼いだ金をよこせ』と言っている……
彼女たち自身が配信しているわけじゃないから、
その理屈が通るかというと微妙なところだが……
筋がまったく通ってないわけでもない。
すぐさま用意されたのは、900億円ほど使えるクレジットカード。
そして、以前、砦がへし折ったのと同じランクの最高位会員権。
私は、それを差し出しながら、
「あの……差し支えなければ、その会員権を、どうするおつもりで?」
恐る恐る尋ねると、クレオパトラは、にやりと笑って、
「やばそうな店は、片っ端からぶっ潰していくんだよ」
「…………で、それを配信する」
「バズるぜぇ、ヒック」
何がやりたいかは分かった。
あの会員権は店がフリーパスになるだけではなく、刻まれた専用コードを使えば、普通には決してたどり着けない裏サイトにアクセスでき、世界中の『秘密の店』の場所を一括で調べ上げられる。
それはそうと……一つ、気になることがあった。
「配信……ですか」
「ああ、そうだ。余らもチャンネルをつくった。名前はそのまま傾国部隊チャンネルだ」
「儂らはだいぶ過激なことをしていくけれど、BANはしないでねぇ」
「酒、いつもってくんだ、ごらぁあああ! 殺すぞぉお!」
「…………カグヤ、殺すの? 妾《わらわ》も手伝う」
「カグヤと、ダッキ……ちょっと静かにぃ……」
そこで、フジコが、私に、
「あ、一つだけ言っておくけどぉ、何があろうと、私たちのチャンネルをBANしたらダメよぉ。私たちの苦労を水の泡なんかにしたら……許さないからねぇ。わかったかしらぁん」
「あ……はい……了解しました」
――私は、これから世界中で何が起きるのかを、うっすらと悟った。
いくつかの悪徳経営者が、首をくくることになるだろうな……
まあ、その辺は自業自得だ。
正直、上級店の中には、目を覆いたくなるようなものもいくつかある。
アイドルが働いている風俗店も、本人が納得して働いているものもあるのだが、
中には、枕営業の延長で無理やり働かされているものもある。
そういうものを、彼女たちがぶっ潰してくれるというのであれば……
それは、確かに、一視聴者としてぜひ見たいと思った。