俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
サイド 田中アシュラ視点2
「傾国部隊? なんだ、それ」
「なんで知らねぇんだよ。なんかあれだよ。犯罪者相手に暴れて配信している迷惑系だよ」
「へっ、なんだかしらないが、こんな上玉、犯さない手はねぇだろ」
「ああ、この前のくそ女みたいに、泣かしてやろうぜ」
「あいつはいい声で泣いたよなぁ」
彼らのことは、王の資料に詳細があったので理解している。
ヤクザをバックに好き放題やっている、この辺で一番タチの悪い暴走族集団。
違法薬物を学生に無理やり売りつけ、逆らった者にはリンチを加える。
身寄りのない家出少女など、立場の弱い女性を何人もかどわかし、違法な店に売り飛ばす。
……などなど、あまりにもひどすぎる集団で、警察も手に負えないとのこと。
罪が表に出そうになったら、若い新入りを生贄にして、上の連中は逃げおおせる。
……そんなことを繰り返し、毎日のように泣き寝入りの被害者を量産している愚物ども。
「あいつ、結局どうなったんだっけ?」
「ヤクザに処理してもらったよ」
「もったいねぇな。まだ楽しめ――」
「――実に楽しい話してんじゃねぇか、大いに結構。ただ口くせぇから、ソレ以上しゃべんなや」
クレオパトラの声が、地を這うように低くなった。
それだけで、場の空気が一変する。
さっきまでへらへらと笑っていた男たちの顔から、潮が引くように余裕が消えていった。
「てめぇ、調子にの――」
そのまま、クレオパトラはその男の顔面を思いっきり殴り飛ばした。
フジコが、
「クレオパトラ……殺してないでしょうねぇ」
「あったりめぇだろ。王の命令にだけは逆らわねぇよ。……ただ、不殺の命令がなかったら、こいつら全員、10回は死んでたぜ」
クレオパトラが、今日買ったばかりのドレスの裾を、ひらりと払う。
豪奢な宝石が、暴走族たちのヘッドライトを反射して、まばゆく光った。
「――さあ、いい声で泣いてくれよ、カスども!!」
その一言を合図に、傾国部隊が動いた。
男たちが慌てて武器代わりのバットやチェーンを構えるが、間に合わない。
クレオパトラたちは、その手前まで一瞬で距離を詰めると、バイクごと男たちをつかみ上げ、振り回し、投げ飛ばしていく。
他の面々も、圧倒的な武力で、誰一人逃がさず、徹底的にボコボコにする。
悲鳴と怒号が入り混じり、あっという間に、その場にいた全員が瓦礫のように積み重なっていった。
誰一人、傾国部隊に指一本触れることすらできなかった。
「ヒック……もう終わりかよ、つまんね……アシュラ、酒きれたぁ!」
カグヤが、積み上がった男たちを見下ろしながら、退屈そうにあくびをする。
吾輩は、カグヤに酒の缶を投げ渡しながら、
バカどもが倒れている様子を眺めていた。
――今日一日で、ずいぶんと再生数を稼がせてもらった。
この成果を王は、喜んで頂けるだろうか……
王のためになるのなら、この程度の荷物持ちなど、なんということもない。
まあ、正直なところ、配置替えを願いたいところではあるが……
★
配信の締めくくりに、吾輩は、スマホに向かって一礼した。
「これからも、傾国部隊は、皆様の治安を守るために働いてまいります。よろしければ、チャンネル登録とグッドボタン、ハイプで応援よろしくお願いいたします」
コメント欄に、次々と文字が流れていく。
『アシュラ様、かっこいぃ……』
『荷物持ちやらされているの、かわいそう』
『超イケメンすぎるんですけど』
悪くない反応だ。
傾国部隊の五人にいいように使われる日々ではあるが……こうして、少しでも吾輩自身を見てもらえるのは、素直に嬉しい。
「アシュラ、なんか今日いい顔してんじゃん」
カグヤに冷やかされ、吾輩は無言で荷物を持ち直した。
……明日は、少し肩が痛むかもしれない。