俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
3話 もういい猛田! 戻れ!
……この一連の光景を、俺は、スマホでしっかりと撮影しながら、
「くそぉ! 猛田のせいで! あいつが余計なことをしなければ!! おい、邪神! 貴様ぁ! よくも、たくさんの人を殺してくれたな! 絶対に許さないぞ!」
台本通りに俺は叫ぶ。
とりあえず、『今、何が起こっているか』は、
随時、具体的に視聴者様に伝えた方がいい。
難しいストーリーラインは万人受けしない。
あらすじはシンプルなのがいい。
アホの猛田がツボを割った。
そのせいで、邪神が出てきた。
で、いっぱい人が死にました。
……これでオールオッケー。
完璧なシナリオ。
アダムは、俺のスマホに向かって、
「私は人を滅ぼす邪神……人類よ。貴様らは間もなく死に絶える。私の手によって」
アダムは、涼しい顔でそう宣言すると、いったん転移の魔法でその場を立ち去った。
よし……ここまでは問題なく台本通り。
★
このことは、あっという間に大ニュースになった。
1時間もたたないうちに、日本中……いや、世界中を駆け巡った。
――『猛田カルマくんが不用意にツボを蹴飛ばしたせいで、殺人邪神が現れ、何人もが被害にあった』
シンプルなあらすじなので、
誰でも状況を理解できた。
ゆえに、怒りも盛り上がりやすい。
『猛田ぁああああ!』
『お前のせいで、人類がピンチなんだがぁあ!』
『責任とれぇえええ!!』
その大炎上を受けて、
猛田は、自身のチャンネルで、
「俺が必ず、あの悪魔を殺す! みんな、心配しないでくれ!」
と高らかに宣言するが、
『人が死んでいるんだぞ!』
『お前、マジでさぁ!』
と、コメント欄は爆裂炎上中。
さすがの猛田も、
今は自重しておいた方がいいと理解したのか、
変に視聴者をあおるようなことはせず、
「とにかく……俺がどうにかする! 死んでもあいつを殺す!!」
そのまま、猛田は、クラスメイトたちの制止も聞かず、とくに何の準備もせず、感情がおもむくまま、単騎でアダムを討伐しに行った。
あいつ、賢いはずなのに、マジでアホだな……
ちなみにアダムがどこにいるかは一応、わかっている。
アダムにはスマホを持たせて、『時折、呑気に配信して』と命令してあるから。
色々と抜かりはない。
今回の目的は効率よくバズることだから、
余計な演出は省いて、視聴者様には、最短距離で物語を消化してもらう。
コメント欄は大盛り上がり。
主に猛田へのメッセージが集中している。
『余計なことしやがって、クソバカ』
『人類が滅んだら、てめぇのせいだぞ』
『責任とれよ!』
『人殺し!』
さすがにこの状況では、猛田ファンも沈黙を貫いている。
今回ばかりは擁護のしようがない感じ。
猛田が飛び出したあと、
クラスメイトたちと数分だけ話し合い、
猛田のあとを追うことが決定した。
俺はジュリアに、『視聴者のみんなを安心させてほしい』とお願いし、
スマホの前で、とある台本を読んでもらうことにした。
「安心してください。……あの邪神は必ず私が倒します。今回、猛田は、愚かなことをしましたが……できれば、過剰に攻撃しないであげてください。責任はとらせますし、クラスメイトとして、私たちも精いっぱい、この問題と向き合っていきますので」
そう言って頭を下げるジュリアに、
視聴者たちの期待が集まっていく。
『猛田、ジュリア様に謝らせてんじゃねぇぞ、ごらぁ!』
『連帯責任なんか感じなくていい』
『あいつはもう死刑』
『ジュリア様、天使すぎる』
『猛田ファン、みてるかぁ! ジュリア様になんか言ったらどうだ!』
よしよし、すべて計画通り。
同接は余裕で1億を超えている。
さあ、それじゃあフィナーレといこうか。
★
そして始まった。
――アダムVS時空ヶ丘2年B組の決戦。
場所は沿岸沿いにあるでっかい公園。
猛田は、ボロボロになりながらも、何度も何度もアダムに挑んでいる。
猛田がヘタレそうになるたび、俺は、
「もういい猛田! 戻れ!」
そう声をかけた。
すると、もちろん、猛田は、
「うるせぇえええ! てめぇごときが、誰に指図してんだぁああ!」
こうして燃え上がるのだ。
さすがに、もう長いこと一緒にいるので、猛田の扱い方が、多少は理解できている。
とはいえ、完全に理解できているわけじゃないけどね。
あいつは時折、まったく予想不能のことをしでかす。
ボコボコにされながらも、
それでも立ち向かい続ける猛田。
『猛田くん、がんばって!』
『頑張るの当たり前』
『ぜんぶ、お前のせい。ちゃんと責任取れ』
『猛田くん、がんばってんじゃん、うるさい』
ガチで頑張っている姿を見せることで、
徐々にだが、ファンも声をあげだした。
……よし、同接が5億をこえた……
できたら、もっと伸びて……最終の総再生数50億ぐらい行ってほしいんだが……
「猛田! もういい! 死ぬぞ!」
ちょいちょいはさんでいく『俺の心配』という劇薬。
「うるせぇ! このままだと、俺の評判がやべぇんだよ!」
叫びながら、なおも攻撃を続ける猛田。