俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
4話 目覚めろ、超スキルⅡ!!
「くそがぁあああ! 死ねよ、いい加減! 畜生ぉおお!」
猛田の全部が沸騰する。
バキバキに血走った眼で暴れ猛る。
――その結果、あの野郎、また……
「目覚めろ、超スキルⅡ!!! 爆王剣《ばくおうけん》!!!」
猛田の全身から、これまでとは桁違いの魔力が噴き上がった。
――猛田の強烈な一撃で、アダムは吹っ飛ぶ。
演技じゃなく、マジで、ちょっと吹っ飛んだっぽい。
さすがにダメージは受けていないが……
「きたきたきたぁあああ! よっしゃぁあ! 望み通りの超スキルⅡだぁあ!」
覚醒までしろとは言ってねぇんだけどなぁ……
あいつ、マジで、どんだけ才能あるんだよ……
一人だけ、先々、覚醒しまくるんじゃないよ……
お前以外のクラスメイトは、みんな、スキルⅢが限度なんだぞ……
「火力大幅上昇!! さらに、剣スキル低下系の効果も受けづらくなってやがるぅううう! やっぱ、俺は神に選ばれていたぁあああああああ!!」
マジで、なんで、お前はそんなに優遇されてんだ。
「死ねやぁ! 爆王剣!!」
超火力の攻撃を連打していく猛田。
途中で、アダムが、チラと俺の方を確認してきた。
『これ、どうしますか?』の目線。
猛田が超スキルⅡに覚醒してしまった以上、アダムがやられないと……動画の構成的に問題が生じてしまう。
仕方ない……猛田には、もう少し、アンチ視聴者様のストレス解消役を担ってほしかったが……
「ジュリア!! 猛田が覚醒した今がチャンスだ!! 猛田の超スキルⅡで吹っ飛んだスキをついて、あの邪神を倒せぇええ!!」
俺の叫びを聞いて、ジュリアより先に猛田が、
「どいてろ、バカどもぉおお! 今は俺のオンステージなんだよぉお! フィニッシュは俺が決めるんだぁあああ! 絶対に邪魔すんじゃねぇえ!」
お前がトドメをさしたら、視聴者様のストレスがたまるんだよ。
そのぐらい理解しろ、バカが。
子供の遊びやってんじゃねぇんだぞ。
こちとら、世界の命運がかかっとるんじゃい。
「死ねぇ、爆王剣!!」
その一撃が、アダムの体勢に、大きな隙を作った……ように見える。
全部、アダムの調整。
正直、猛田のレベルじゃ、超スキルⅡがどれだけ高性能でも、アダムを倒すことなど不可能。
レベル差はやっぱり、大きい。
猛田の攻撃でグラついたように見えるアダム。
その隙を突いて、ジュリアが踏み込む。
「やめろ、ジュリアぁああ! 俺の獲物を!! 横取りすんな、ごらぁああああ!!」
そんな猛田の叫びを無視して、
ジュリアは、渾身の一撃をアダムに叩き込む。
その結果、
「――ッ!」
アダムの体が、大きく吹き飛んだ。
――と、同時に、その首元にかかっていたネックレスが、粉々に砕け散る!!
砕かれたネックレスは、ものすごい風圧を出して、近くの猛田とジュリアを吹っ飛ばした。
猛田は、地面に転がりながら、すぐに体勢をたてなおし、キっとアダムをにらみつけ、
「な、なんだ! 何が起きた?!」
そう叫んだ直後のこと、
アダムは、静かに頭を下げる。
「ありがとう。勇者たち。おかげで、呪いから解放されました」
そのセリフに、猛田が眉間にしわをよせ、
「あ?」
「私の正式な名は烈血の女神アダム。……とある邪悪な存在によって、まがまがしい呪いをかけられていたのですが、あなた方の攻撃で、呪いのネックレスが砕かれました。おかげで自由になることができたのです。ありがとう」
「訳の分からん戯言をほざきやがって……そんな嘘で俺が止まるとでも? てめぇ、一体何人殺したと――」
「呪われていたせいとはいえ、すべては私の責任……私の命を削って、亡くなった方々は蘇生させていただきます」
そう言いながら、虹貌刃を天高く掲げる。
あれが、回収した魂を解放する方法。
……ようするに、命を削ってどうたら、というのは完全な嘘。
ただ、視聴者にそれを判断するすべはない。
目の前で起こったことだけが現実。
この……『亡くなったと思われていた人たち』が『ケガ一つなくかえってきた』という事実だけが、全人類にとっての全て。
よみがえった……ように見える人たちを見て、
コメント欄が盛大にわいた。
『蘇生させた?』
『呪われてたとか、かわいそう』
『うそくさくね?』
『どこがだよ』
『命をかけて、人々を助けてくれたんだぞ!』
疑っている人ももちろんいる。
しかし、それは、なんだってそう。
だから、問題ない。
今回の演出は、少々強引なところがあるので、色々と疑問を抱く視聴者もいるだろう。
でも、この演出の方が絶対に受けがいいし、何より、『アダムに対する人類のヘイト』も薄まる。
そこで、俺は台本通りに、アダムに、
「あ、あの……あなたは……人を……生き返らせることができるのですか?」
アダムは二コリと微笑み、
「この手で殺めてしまった命だけですが……」
「す、すごい……」
「それでは失礼します。勇敢な勇者たちよ」
そう言い残して、アダムは、その場から静かに姿を消した。
……ここで、エンディング。
主演『アダム』、演出・脚本・監督『俺』、友情出演『猛田』。
――この動画は、瞬く間に世界中へ拡散されていった。
結果、再生数30億ほどを稼ぐことができた。
★
玉座の間で、俺は、アダムに、
「汚れ役を押し付けてごめんね。最後の『命を賭して蘇生させた』っていう演出(嘘)で、ヘイトは薄まったと思うけど……というか、むしろ反転したとは思うけど……それでも――」
「主上様。お気になさらず。実に楽しい仕事でした。特に、主上様を傷つけた、あの愚者をボコボコにできて爽快でした。それに、地上の人間《ゴミ》どもにどう思われようと、私はどうでもいいので」
「あ……そうなんだ……」