俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
5話 エグゾギア。
25億ぐらい残っていて、
傾国部隊チャンネルが7億ぐらい……
そして、アダムのもろもろが30億ぐらい……
合計で……
「……62億、か」
玉座の間で、俺は宙に浮かぶウィンドウの数字を睨みつけた。
「ロキたちのレベルをあげるか……それとも……」
めっちゃくちゃ悩む。
俺は、マジで、今までにないぐらい必死に考えた。
「……10日後にくる敵は、ぶっちゃけ、アダム単騎でいけんだよなぁ……」
敵のレベルは10000。
アダムの『閃化』時のマックスが12000。
単純な数字比較でいえば、そこまで絶望的じゃない。
「問題は、12日後にくる方……レベル53万なんだよなぁ……」
いくらなんでも、インフレしすぎだろ。
ふざけやがって……
俺の人生、なんで、こんなずっとナイトメアハードコアなんだ……
ロキ、ジャンヌダルク、ゲムゥシャの三人をカンストさせても、合計せいぜい9000ちょい。
アダムを足しても2万台。
「ロキたちのレベルをカンストさせたところで……正直、話にならねぇんだよなぁ……となると……やっぱり、ガチャか」
俺はウィンドウを操作し、『ダンジョンガチャを回す』の項目にカーソルを合わせた。
消費50億。
50億……
これで、外れを引いたら目もあてられねぇ……
……頼むから、当たってくれ……
「頼むぅう! 超激レア、こいぃいい!」
自分でも情けなくなるぐらい、切実な声が出た。
まるで、ソシャゲの天井ガチャに人生かけてる金欠の小学生みたいだな、俺。
目の前で、光の粒子がぐるぐると渦を巻き、やがて一点に収束していく。
出てきたのは、
……一つの指輪だった。
恐ろしく精巧な造りの……
指に嵌めた瞬間、頭の中に、大量の情報が一気に流れ込んでくる。
名前も、使い方も……
「……エグゾギアの指輪……?」
名前からしてなんかヤバそうな響き。
「エグゾギア……起動」
口にした瞬間、全身が、見たこともない凶悪な意匠の兵装に包まれていく。
全長3メートルぐらい。
手甲、肩当て、兜、翼。
イメージ的には生きている機械。
ドクドクと脈打つ装甲。
……まるで、SFアニメに出てくる最終兵器みたいな見た目。
「ぉおおお……マジでか」
思わず声が漏れた。
これは、いい。
かなりアガる。
配信で見せたら、絶対にバズる系のビジュアル。
――と、思ったのも、束の間。
「おわっ」
装甲が、たった数秒で、溶けるようにボロボロと崩れ落ちて、雪のようにとけていく。
「……は?」
あっという間に、いつもの冴えない姿に逆戻り。
頭の中にインストールされた知識のおかげで、理由はすぐにわかった。
「俺のMPがゴミすぎて……使えないのか……」
俺のステータスは、いまだにレベル5相当。
どれだけ豪華なガン〇ムを纏ったところで、燃料タンクが空じゃ、話にならない。
「……ちょっ、上級配下、全員集合!」
呼びかけて、ロキ、ジャンヌダルク、ゲムゥシャを集めると、
俺はそのまま玉座の間の奥、決戦の場へと向かった。
色々と試したいから、玉座の間より、決戦場の方がいい。
「悪いけど、レベル借りるから」
了承を待たず、田中の王様を発動。
3人からレベルを借り受け、一時的に俺のステータスを底上げする。
「田中の王様の稼働時間も、ついでに調べておこうか……」
こういう地味な検証作業が、いつか命を救うことになるかもしれない。
「レベル……6002、と」
体の芯から、力が沸き立ってくる感覚。
その状態のまま、俺は、もう一度、指輪に呼びかける。
「エグゾギア、起動」
再び、凶悪な兵装が全身を包み込む。
今度は、装甲が崩れる気配がない。
「……出力が2000ほどあがっている……」
ウィンドウに表示されたステータスを見て、俺は小さく唸った。
「合計8002、か」
悪くない数字ではある。
……あるんだけど。
「このMPの減り方だと……使えるのは5分が限界ってところか」
残量の減少速度をざっと計算する。
なかなかにシビアな燃費。
「レベル5の時の俺だと……1秒が限界」
話にならない……が、
「んー……まあ、1秒は起動できるから……もしもの時の一瞬の切り札には……なるか?」
普段のレベル5の状態でも、これを使えば、一瞬だけ、レベル2005の怪物になれる。
1秒あれば、いっかい殴るぐらいはできると思う……
そう考えると……悪くない。
というか、だいぶアタリなんじゃないかと思う。
――ただ……
「53万をどうにかできるわけじゃないんだよなぁ……」
俺の最大値であるレベル8002になったところで、
レベル53万の相手には、
蚊が刺した程度のダメージにもならないだろう。
「またガチャ引くためには……38億ぐらい稼がないといけないんだよなぁ……」
現在の残りポイントを確認する。
ガチャに50億使った時点で、残りは12億ちょっと。
次にガチャを回すには、もう一度、ゴリゴリに稼がなければいけない。
俺は、ウィンドウの数字を見つめたまま、しばらく固まった。
「……あれ、これ、もしかして詰んでる?」