俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
サイド 猛田視点。
俺の名前は猛田カルマ。
――この世界の、主人公だ。
最近、俺を好きな奴と、嫌いな奴の差が、どんどんえげつなくなっている。
この前のミニスカ浴衣邪神の一件で、俺の人気はいったん、地に落ちた。
『猛田がツボを蹴ったせいで人が死んだ』
その雑なあらすじが、世界中に広まったせい。
バカどもは、シンプルなゴシップにすぐ食らいつく。
……だが、その直後に、超スキルⅡに覚醒して、あの浴衣邪神を倒した結果、熱心なファンは、また俺を推してくれている。
俺のことが嫌いなやつは、とことん嫌い。
好きなやつは、まだ踏ん張ってくれている。
――そんな感じ。
「……なんか……もう、ダルくなってきたな……」
スマホの画面を見つめながら、俺はぼそりと呟いた。
今のところ、まだ、配信中は、礼儀として、愛想よくふるまっている。
だが、それも、そろそろ潮時かもしれない……
「……やめるか……てか、なんで、この俺様が、ゴミどもに愛想をふりまかないといけないんだ……媚び売るべきなのは、向こうの方だろ……」
俺は、そんなことをつぶやきながら、エゴサをする。
相変わらず、悪口の多いこと、多いこと……
なんか、マジで……『砦が転移のワナにかかった時』ぐらいから、急激に増えたんだよなぁ……
まさか、あいつ、どっか行っている間に、俺へ『嫌われやすくなる呪い』でもかけたんじゃねぇだろうなぁ……
はっ……まさかな。
あんなゴミが、そんな器用な真似できるわけがねぇ。
考えるだけ時間の無駄だ。
エゴサを続けていると、
『強い自分を貫くカルマは嫌いじゃない!』
というコメントを見つけた。
わかるやつにはわかるんだよ。
こうやってな。
そうだよ。
俺は俺の強さを貫いている。
俺を嫌っている奴は、頭おかしいか、嫉妬で狂っているだけ。
こいつは、少なくとも、まともな目を持っている方だ。
「一応……まだ、配信中ぐらいは、最低限、愛想よくしておくか……」
そこで、俺は、ダンジョンに向かった。
愚民どもに超スキルⅡを魅せつけて、再生数を稼ぎつつ、
あの浴衣邪神の件について、一応、説明しておくとするか。
変な勘違いしている奴が多いからな。
★
「どうも! 猛田カルマです! この前は、色々と心配かけちゃってごめんね。なんとか、事件を片付けることには成功して、ホっとしてます! 俺じゃなきゃ、あの邪神は倒せなかったんじゃないかなって、ちょっと自画自賛しちゃおうかな。みんなには今日、特別に見せてあげよう、これが俺の超スキルⅡ『爆王剣』だ!」
振り抜いた一撃で、たまたま近くにいたC級モンスターが、一瞬で粉みじんになった。
やっぱり、俺はすげぇ。
どう考えても最強。
絶対に無敵。
『お前のせいで人死んだんだが』
クソコメが目に入った。
お前を、この手で殺してやろうか。
「あちゃー、手痛いコメントがきてるなぁ。でも、俺じゃなくない? 確かに、ツボを蹴っちゃったのは俺だけど、人を殺したのは、邪神! そこは間違えないでよ! あと、死んでねぇから! あの事件に死者も負傷者もいないから! それに、あの事件があったから、俺もまた覚醒できて、ついに超スキルⅡを獲得できたよ! これも、みんなの応援のおかげだぜ! 際限なく強くなる俺を、今後もぜひ応援してくれよな! あ、ちなみに、今の俺なら傾国部隊も倒せると思うぜ。勇気があるならかかってこいよ、傾国部隊! どうせ見てんだろ!」
『カルマ! 大好き!』
『猛田くん、抱いてぇ!』
よし……いい感じのコメントも流れている。
お前らみたいなゴミ、抱くつもりねぇけどな。
どうせ、コメント打ってんのはB級以下の女だろ。
お前らは養分……
俺の地位と預金残高を増やすための奴隷……
それ以上でも、それ以下でもねぇ。
『今日も悪口が多いけど、強い自分を貫くカルマは嫌いじゃない! スパチャどぞ!』
さっきエゴサで見たハンドルネームのやつが、また同じコメントを打っていた。
お前の俺をほめる語彙は一個だけか。
頭わりぃんだろうなぁ……小学生か?
……はぁ……
「ラッコちゃん! スパチャ120円、サンキュ! ただ、できれば、1000円ぐらいはほしいかなぁ!」
120円て……
さすがに、そりゃねぇだろ、はっ。
イラつきが、顔に出てしまった。
ほとんど無意識のうちに、普通に、
……舌打ちしていた。
これは、マジで、無自覚だった。
――数分後には、悪意のある切り抜き師によって、
盛大に火がつき、爆発的に炎上した。
『こいつはこういうやつ』
『猛田は本物のカスだよ』
『いい加減、気づけよ、頭のおかしいファンども』
『こいつは、ずっとこうだったじゃん! やばいんだって!』
『性格の悪さが顔に出てる』
『終わったねぇ、猛田くん。やっと終わったねぇ』
『お前が、なんか人気あるの、ずっとストレスだった』
……今までで一番再生数をとれたよ。
……はっ、死ね、ゴミども。