俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
サイド 坂田視点。
俺の名前は坂田ダイゴ。
時空ヶ丘2年B組の一人。
決戦前日の夜。
寮のエントランスラウンジに、クラスメイトのほとんどが集まっていた。
傾国部隊が協会に乗り込んだ配信、あれについて話し合おうという流れになったのだ。
みんな、それぞれソファやカウンターに腰かけて、思い思いに口を開いている。
「偉大なる王……俺たちはすでに知っている……あれって、もしかしてさ……」
俺は、シャンデリアの下、みんなの顔をぐるりと見回してから、そっと切り出した。
「……砦のことじゃね?」
その瞬間、ラウンジの空気が、一瞬、ぴたりと止まった。
「なにバカなこと言ってんだ」
真っ先に否定したのは、猛田だった。
「いや、だって、ほかに可能性のあるやつって……」
「いるだろ、ここに」
そう言って、猛田は、親指で自分を指す。
「あ……うん」
思わず、微妙な顔になってしまった。
悪気はないんだけど……つい……
「なんだ、その生暖かい目は。殺されたいのか」
こういうところ、猛田は、いつも変わらない。
「ジュリア……じゃないよね? 人類を守っている謎の王様の正体」
俺が尋ねると、ジュリアは、微塵の迷いもなく、
「ああ、違う。私は人類に興味がないから」
あっさりと、そう答えた。
――ジュリアの場合、砦以外の全員がいなくなって、ジュリアと砦の二人だけで生きるってのが……もしかしたら理想なのかもな。
そう考えると、だいぶ怖いな。
それは愛なのか?
ちょっと違う気がするなぁ……
誰にも聞かれないように、内心だけで、そっとその考えを打ち切る。
「……何がどうなって、そうなっているのか知らないけどさ……もしかして、砦は、俺たちの知らない間に、ダンジョンの秘密を解き明かしたんじゃねぇかな? そして、あの傾国部隊を味方に引き込んだ……そう考えると、つじつまがあわない?」
「あわねぇよ。完全に根拠薄弱な妄想じゃねぇか、ばかばかしい」
猛田が、鼻で笑って切り捨てる。
「みんなはどうおもう?」
俺が周囲に尋ねると、意見はバラバラだった。
「そうかもしれない」と考える者。
「さすがに飛躍しすぎでは」と考える者。
その温度差の中、猛田だけが、一人、明らかに苛立った様子で声を張り上げた。
「前から言おうと思っていたが、お前ら、あいつを買いかぶりすぎなんだよ。あいつは俺の下位互換なの! なんで、それがわからない! あいつが俺以上に役に立ったことが今まで一度でもあったか? ねぇだろ!」
猛田は、そこで机を蹴り飛ばしながら、
「ああ、イライラする! もう俺は帰るぞ! こんなところにいられるか!」
そう言い残して、大股でラウンジを出ていく。
その背中を見送りながら、俺は、思わずつぶやいた。
「これがミステリーだったら、このあと、猛田、死んでるな」
「こんなところにいられるか、俺は帰るぞ……あ、ほんとだ、完全に死亡フラグだ」
誰かの相槌に、その場に、小さな笑いが起こる。
こんな時でも、こういう空気になれるのが、ウチのクラスの良いところだと思う。
対見が、ソファの背もたれに寄りかかりながら、ジュリアに、
「ジュリアはどうおもう?」
「わからない」
ジュリアは、静かに、窓の外を見つめながら、そう答えた。
「だが……もし、仮に、トウシが、この世界を守るために頑張っているのだとしたら……私は手伝いたい」
その一言だけ、いつもの淡々とした口調とは、少し違う響きがあった。
俺は、そのジュリアの横顔を見ながら、なんとなく、確信めいたものを感じていた。
――やっぱり、ジュリアだけは、何か気づいているのかもしれない。