俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
13話 エロ本を探すのが趣味です。
決戦前日の夜。
俺が寮に帰ると、ラウンジには、まだクラスメイトのほとんどが残っていた。
「あれ、なにやってんの?」
俺が声をかけると、真っ先に、坂田が振り返って、
「昨日の、傾国部隊の王って、お前なの?」
「……はぁ?」
思わず、間の抜けた声が出た。
いやいや、直球すぎるだろ。
「砦さ……ダンジョン配信が終わると、いつもすぐに消えるけど……何やってんだ? もしかして、世界を守るために、何か準備とかしていたんじゃ……」
坂田が、そう言いながら、こちらの反応をうかがってくる。
「スゴイ妄想力だね。ラノベ作家になるといいよ」
俺は、努めて呆れた顔をつくって、そう返す。
「じゃあ、いっつも何してんだ?」
「最近のマイブームはエロ本を探すことかな。河川敷とかに落ちているのを歩き回って探すんだ。たまにお宝に出会えるよ。坂田も今度一緒に探す?」
「……」
坂田が、何か言いたげに俺をにらんでいる。
そこで、ジュリアが、
「トウシ」
静かに、俺の名を呼ぶ。
「なに?」
「まさか、本当に、トウシが何か関係しているのか?」
「なんで、その結論にまっしぐら? 俺、言っているよね。エロ本《ほん》行脚《あんぎゃ》にいっているって」
「明らかに、強引なごまかし方をしているじゃないか……関係ないなら、そこまで変なごまかし方はしないはず」
……この子、鋭すぎるな。
毎回、毎回。
なに、もしかして、俺のこと好きなの?
……なんてね。
そんなことあるわけないよね。
「トウシ、答えてくれ」
だいぶ強めに責められている。
並みの変態じゃあ、この追及に耐えられないだろうね。
けど、俺は、本格派の変態なのさ。
こういう時のために、ちゃんと準備はしてある。
俺は、カバンの中から、あらかじめ用意しておいた極上の一冊を取り出した。
「今日はこれを見つけた。なかなかだろう? 俺は金髪と巨乳に目がないんだ」
「……」
ジュリアが、無言のまま、じっとその表紙を見つめている。
何かを言おうとして、結局、何も言わずに黙り込んだ。
周囲の男子が、俺にアホを見る目を向けてくる。
女子連中は、普通に引いていた。
その冷たい視線……悪くないね。
ゾクゾクするじゃないか。
「じゃ、そういうわけで、俺は部屋で自分を慰めてきます」
そう言い残して、俺はエレベーターに乗り込む。
扉が閉まる直前、ちらりと見えたジュリアの顔は、
疑いというより、なんだか、ただ、少し寂しそうだった。
……気のせいだよな。
うん、そうだよな。
エレベーターの中で、俺は、手にしたエロ本の表紙を見ながら、
「河川敷で拾ったって設定なら、さすがにもっと汚れていないと変かな……」
なんて、真剣な顔で、つぶやいていた。