俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
14話 ミスターZ。
決戦当日。
俺は、玉座の間で、鏡越しに自分の姿を確認していた。
黒を基調にした、簡素だが妙に威圧感のある仮面。
配下たちに用意させたものだが、なかなかどうして、それらしい仕上がりになっている。
「……よし、おっけぇ」
今日も普通に緊張していた。
今回はアダムがいるから、前と比べたらマシだけど。
……今日から、俺は、『人類を導く謎の王』として、正式に表舞台に立つことになる。
「それじゃあ……配信を開始しようか」
スマホを構えて、配信開始。
同接は、始まった瞬間から、すでに1000万を超えている。
傾国部隊の宣言以来、世界中が、この瞬間を待ちわびていた様子。
無限に沸くコメントをチラ見しつつ、
「全人類に告ぐ。傾国部隊の宣言ですでに理解していると思うが、俺たちは……まあ、地球防衛軍みたいなものだ。今から、俺たちは、この世界をかけた戦いに挑む。俺らが負ければこの世界は終わる。冗談だと思いたいやつは、そう思っておけばいい」
声色に、少しだけ変声の魔法を混ぜてある。
万が一にも、素性がバレるわけにはいかない。
『うあ、マジではじまった』
『え、マジで、これで世界の命運がきまるの?』
『さすがに嘘だろ』
『ジュリア様いるんだけど』
『ジュリア様が王ってこと?』
コメント欄が、瞬く間に大混乱に陥る。
――と、そこで、俺は、あらかじめ用意しておいた台詞を続ける。
「傾国部隊が言っていた王ってのは……ジュリアじゃない。一応、俺のことだ。名前は……なんでもいいが、『ミスターZ』とでもしておこうか」
俺自身の実力はZEROなんでね。
「ウチの最大戦力は、姫騎士ジュリアと女神アダム……そして、こっちの2人、魔法アタッカーのロキ、タンク聖騎士のジャンヌダルク。スパリゾートの回で見た事ある人もいるんじゃねぇか? 俺はただのまとめ役で、大した力はないが……アダムたちは、一流の実力者だ。彼女たちが、異世界からの侵略者どもを……必ず叩き潰す。大船に乗ったつもりで見ていればいい」
――ジュリアを王ってことにしようかとも思ったけど、
その設定にすると、余計な荷物まで背負わせかねない。
英雄の地位はともかく……
『責任者』の責務は、俺が担うよ。
――コメント欄を見ると、
俺の話を、バカにする人。
まっすぐに信じる人。
その反応は、様々だった。
『茶番くさい』
『でも、傾国部隊も認めてたよな……』
『ミスターZ、ダサすぎん?』
『ジュリア様が最強って言われてるの、なんか誇らしい』
まあ、こんなもんだろう。
誰も彼もが即座に信じるようなら、それはそれで気持ち悪い。
俺は、内心で、そっと今日の作戦を確認する。
(――今日は、ゲムゥシャに、トドメを譲らせる)
ジュリアそっくりに擬態したゲムゥシャが、最後の一撃を決めれば、ジュリアの評価は、さらに一段階、跳ね上がるはずだ。
今日で彼女は名実ともに、世界の女王になる。
誰もかれもが、彼女に傅く。
それでいい。
それだけの価値が、彼女にはあるのだから。
などと、心の中で思っていると、
……次元ゲートの奥から、地響きとともに、異形の軍勢がなだれ込んでくる。
金属質の鎧、禍々しい紋様の旗。
数にして、およそ10万。
一体一体のレベルはそれほど高くはないが……この物量は、さすがに常軌を逸している。
「――出やがったな。さあ、行ってくれ!! ジュリア、アダム、ロキ、ジャンヌダルク!」
その号令とともに、四人が、同時に地を蹴った。