俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
サイド 綾大路視点1
私の名前は綾大路藤明《あやのおおじとうめい》。
ダンジョン対策協会日本支部の支部長、
……という肩書きだけは、いまだに残っている。
本日は、協会の世界会議が行われる日だった。
今回は、珍しく全員出席。
名だたる実力者が、一堂に会している。
世界中の大金持ち、権力者、大統領を陰で操るフィクサー、そして、マフィア集団のトップ。
普段は決して顔を揃えることのない面々が、今日ばかりは、一つの円卓を囲んでいた。
こんな空気の会議、支部長になって以来、一度も経験したことがない。
胃がキリキリと痛む。
「これは……古文書に記された滅びの予言が、ついに始まったということでしょうか」
「傾国部隊の宣言によると、あのような戦いは、今後も定期的に行われるとのこと」
「異世界から侵略者とは……」
「女神アダムが味方で助かった……」
「傾国部隊の王とはアダムのことでは?」
「最初に実況をしている仮面の男が王を名乗っていたが? たしか、ミスターZだったか?」
「傀儡《くぐつ》ではないのか? 私はアダムが王だと思うが。あの強さで、誰かに従う理由があるか?」
「暁宮ジュリアがあの場にいるのは? どういう関係なんだ?」
議論は、一向にまとまる気配がない。
私は、恐る恐る、そこで口を挟んだ。
「話を聞きたいのですが……我々は暁宮ジュリア様から嫌われており、話し合いに応じるとは思えません」
言ってしまってから、内心、ひやりとした。
――『様』をつけてしまった。
この場は、あくまで公的な会議だ。
誰か気づいただろうか、と周囲をうかがうが、幸い、そこまで気にする者はいないようだった。
ほっと胸をなでおろす。
「そこで、砦トウシの召還を試みた。すでにこの場にきてもらっている」
「入ってもらいなさい」
その場に、砦が呼ばれた。
彼は、呼べばいつでも来てくれる。
ありがたい限りだ。
蛇尾様が代表して、砦に、
「人類最大の戦力、時空ヶ丘2年B組の頭脳としての意見を聞きたい」
もっともらしい言い方だが、私は、その本音を知っている。
協会は、砦のことを、そこまで評価していない。
ただの窓口、都合のいい情報源……そういう扱いだ。
……ジュリア様と近しいというだけで、こうも便利に使われるとは。
彼にとっても、いい迷惑だろうな、と、少しだけ同情する。
「あの場にジュリアがいた理由ですか? さあ、わかんないすね。ジュリアに聞いてください」
砦は、あっさりとした調子でそう答える。
……この飄々とした態度、いつ見ても慣れない。
猛田以上に、何を考えているのか分からない。
「暁宮ジュリアと我々は……ちょっとした行き違いで、現状は疎遠になっている。できれば、君に間をとりもってもらいたいのだが」
「了解です」
「本当か!」
「もちろん! どうするかはジュリア次第ですけどね。帰ったら言っておきますよ。協会の人たちが仲直りしたいみたいだよぉって」
「いや、それだけではなく、もっと――」
「ソレ以上を求められても、俺とジュリアの関係性的にムズいすねぇ。俺はジュリアと仲がいいってわけでもないんで。俺があまりにも使い物にならないから、優しいジュリアは守ってくれているだけ」
蛇尾様は、ため息交じりに、
「一つ、君に聞きたい」
「はい、なんすか」
「傾国部隊が言っていた、世界の王とは……暁宮ジュリアのことだと思うか? それともアダムだと思うか?」
「どっちも違うんじゃないすかね。てか、ミスターZが王を名乗ってましたけど」
「では、仮にミスターZが王だとして……あれの正体に心当たりは? スペック的にみて、可能性があるとしたら、君たち、時空ヶ丘のメンバーだけのように思う。近くで彼らを見てきた者として、実直な意見を聞かせてほしい」
「もしかしたら、俺がそうかもしれません。こんなアホのふりして、実は最強なのかも」