俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
17話 ジュリアではないという証明はできない。
寮のエントランスに、時空ヶ丘のメンバーが集まっていた。
誰からともなく話題にあげたのは、決戦配信の映像について
テレビでもSNSでもどこでも何度も繰り返し流れる、
あの女神と、その隣で拳を握り締めた姫騎士の姿。
「ジュリア、あれ、どういうこと? やっぱり、あなたが傾国部隊の王なの?」
対見が、単刀直入に切り出す。
「わからない……あれは私ではない」
ジュリアは、いつもの淡々とした調子で、そう答えた。
「……え、どういう嘘? そっくりとかじゃなかったよ。完全にジュリアだった。目の下のホクロとか、完璧に一緒だったじゃない」
対見は、納得のいかない様子で、なおも食い下がる。
その空気を、俺は、そっと横から掬い上げる。
「ジュリアが違うっていうんじゃ……何かの擬態とかじゃない?」
「擬態?」
「ジュリアは強いから、その力をコピーする能力……とかじゃないかな」
「ああ、なるほど……その可能性もあるのか……」
対見が、少しだけ、腑に落ちた顔をする。
「まあ、もちろん、ジュリアが実は真の力を隠している英雄で、普通にあの場にいたって可能性もゼロじゃないけどね」
「おい、トウシ、私は……」
ジュリアが、めずらしく、慌てたような声を出す。
「わかっているよ。ジュリアがそれだけ否定するってことは、たぶん、あれはジュリアじゃないんだろう。けど、証明のしようがない。ちなみに、あの日、あの時間はどこにいたの?」
「自室のトレーニングルームで、例の動画をみながら運動をしていた」
「誰か証明できる人は?」
そこで、ジュリアの親友である九条が、すっと手を挙げた。
「私、見に行ったよ。確かにいたし、喋った。一緒に、動画をみて……これ、ジュリアじゃないって話もしたよ」
「なるほど、じゃあ、可能性としては、ジュリアが分身を使えるって可能性も出てきたわけだ」
「は?」
九条が、素っ頓狂な声をあげる。
「ほら、アダムが分身の魔法を使って敵を倒していただろ? 本体を家に残して、分身を出動させていた……という可能性も出てきたって話。絶対にそうだって言っているわけじゃないよ」
「つまり、トウシが言いたいのは……何をどう言おうと、完全な証明はできない、ということだな」
「そういうこと。否定したい気持ちはわかるよ。関係ないならね……けど、意味がないと思う。放っておくのが一番いいと思うよ。あのジュリアに見える誰かさんが、何か悪いことをしたときは必死に弁明すべきだけど……今のところ実害はないしね」
俺は、あくまで平静な顔で、そう締めくくった。
誰も、それ以上、深くは追及してこない。
まあ、これでいい。
ちらりと、ジュリアの横顔をうかがう。
彼女は、まだ、何か言いたそうな顔のまま、黙り込んでいた。