俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
サイド 猛田視点。
アダムが10万の部隊を殲滅している映像がバズった翌日。
俺は超有名クラブに、超VIPとして招待されていた。
フロアの一番奥、ボトルとシャンパンタワーに囲まれた特等席。
周りには、俺を持ち上げる連中がずらりと並んでいる。
「猛田さん、マジ神っすわ」
「カルマさんの戦い、超見てます!」
「サインください!」
まあ、悪い気はしない。
これぐらいの扱い、当然だ。
主催者の男が、俺のグラスに酒を注ぎながら、話しかけてきた。
こういう業界にありがちな、金だけは無駄に持っている、育ちのいいボンボン。
「ところで猛田くん。あの動画に出てた仮面の男……傾国部隊の王って、もしかして君なのかい?」
「さあ、どうでしょうね」
「暁宮ジュリアもあの場にいたけど……もしかして、二人は付き合っていたり?」
「それも……どうでしょうね」
興味なさそうに、グラスを傾ける。
こんなくだらない質問、いちいち答える価値もない。
――と、そこに、水を差すように、ガラの悪い男が数人、絡んできた。
「お前が猛田カルマか」
「だったら?」
「ダンジョン配信者かなんかしらんけどよぉ、お前、いっつも負けた動画ばっかりバズってんじゃねぇか」
俺が負けている動画の方がバズるから、切り抜き師はこぞって、敗北映像ばっかり流している。
ちゃんと見れば、俺が最強だとわかるが……流し見してる連中には、そんなこと、伝わりゃしない。
「言っておくが、うちの組はでけぇぜ。なんせ、トップが、あのレオーネ一家だ。この世界の裏社会を牛耳るドン中のドン! いくらてめぇが、個として多少強かろうと、関係ねぇんだよ!」
拳銃を、俺の額に押しつけてくる。
「はぁ……」
思わず、ため息が漏れた。
「ビビってるくせに、カッコつけてんじゃねぇぞ、ごらぁ! たかが高校生風情がよぉ!」
「引けよ」
「あ? あんま調子にのってっと」
「うるせぇって」
そう言いながら、俺は、こいつらからしたら見えない速度で、相手の腕を折り、銃を奪い取った。
「ぎゃああ!!」
「うるせぇな、ちょっと折れたぐらいでびーびーと」
そう言いながら、奪った銃を、自分のこめかみに押し当てる。
「お、おい、猛田くん」
ボンボンが、慌てた声をあげる。
「うるせぇ」
俺は、自分自身に向けて、引き金を引いた。
バァンと、激しい音がする。
「……まあまあ痛ぇな。C級モンスターの攻撃と……まあ同じぐらいか」
周りが、ドン引きしているのが分かる。
「さて……じゃあ、次はそっちだな」
そう言いながら、ヤクザの額に、銃を押しつけた。
「いぃい! ……ばっ……や、やめ……」
「やめてって言われてやめたことあんのか?」
「あ、ある! だから――」
「優しいな。俺はゴミが相手の時は優しくしないと決めている」
「やめ!! ぁああ――」
このカス……撃たれる前に、ションベンを垂らして気絶しやがった。
俺は、銃を床に放り投げて、
「アホくさ。帰るわ」
そう言って、フロアを後にする。
絶望的につまんねぇ連中だった……
★
帰る途中で、コンビニ帰りっぽい砦を見つけた。
「よお、相変わらず、キモい顔してんな」
「それほどでも」
「ほめてねぇよ、ぼけ」
そう言って、軽く背中を蹴ってやる。
ありがたく思え。
砦は俺に蹴られてふらつきながら、
「猛田はさ」
「あん?」
「明日死ぬとしたらどうする?」
「お前を殺す」
「どっちみち死ぬのに?」
「どっちみち死ぬからこそだろ」
「……そうかぁ……終わってんねぇ」
「うっせぇ、ぼけぇ!」
そう言って、吹っ飛ぶぐらい殴ってやった。