俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
19話 第三の決戦。
指先がチリチリする。
喉が渇いて仕方ない。
全身の至る箇所が過敏になって、臓器の全部がしくしく痛む。
相変わらずのゲロ吐きそうな緊張感の中、
俺は、ロキに、
「ロキ……運命時計は?」
「残り1分でございます」
「すぅ……はぁ……」
何度となく深呼吸を繰り返す。
これからやってくる敵を思うと、マジでしっぽをまいて逃げ出したくなる。
けど……
「ふぅ……」
俺はまっすぐに奥の壁をにらみつける。
「2、1……0」
ロキのカウントダウンが終わったところで、
奥の壁……次元ゲートが光った。
それと同時、ここと玉座をつなぐ扉がスゥっと消えていく。
即座に俺は、田中玉の接続具合を確かめる。
ダンジョン拡張で世界中の田中と確実に接続できるはずだが……
なんかのミスがないとも限らない……
《現在接続可能な田中:128万6991名》
よし、間違いなく接続できている。
……今、考えることじゃないけど、ここ数日で、田中さん、数百人単位で減ってんな……
日本の人口減少やべぇな……
異世界人が何もしなくても、日本だけだったら、数年後には滅びてんじゃねぇか?
光っている次元ゲート……
その向こうから、
『イケメンの執事』みたいなのと、
『黒い火の玉』が出てきた。
「一人だけ……? 黒い火の玉の方も……生き物なのか?」
悩みつつも、俺はロキに、
「ロキ……どっちが53万?」
「確認します……黒い火の玉の方です。隣にいる人間のレベルは2万でございます」
「レベルが53万にもなると、人じゃなくなるのかね……まあ、なんでもいいや」
そこで、俺は、今度こそ先手必勝とばかりに、
「出てきてそうそう悪いが、死ねぇええ! 田中玉ぁああ!!」
128万人以上のエネルギーを込めた玉が、
黒い火の玉に向かって駆け抜けていく。
すさまじい速度。
53万でも反応できていない。
そのまま命中。
「よっしゃぁああ! 直撃だぁああ! いぃやっふぅうう! 勝ったぁあああ!」
つい、柄にもなく、テンション高く叫んでしまう。
張りつめていた緊張の糸がようやく緩む。
これで人類は守られた……と思ったのだが、
「なんという強大な一撃じゃ……幾億《いくおく》の戦を渡ってきたが、朕《ちん》の『スタードリームオーラ』を砕いた者は初めてじゃ」
黒い火の玉は、特に変わり映えもせず、ゆらゆらと揺らめいて、
「朕の『全生命力の半分以上の威力』でなければ破壊できぬのじゃが……ふぉっふぉ……まさか、これほどの攻撃を放てる者に出会えるとは……人生は面白いのう」
「えぇ……バリア……えぇ……うそぉん……」
「ふむ……スタードリームオーラが即時再生しないということは……何かしらの搦《から》め手でバリアを対処したのではなく、本当に、力技で破壊したようじゃの。……素晴らしい。本当にすばらしい、ふぉっふぉっふぉっふぉ」
「ムチャクチャだ……バリアはダメだろ……終わった……」
絶望感に浸っていると、
「手厚い歓迎、感謝するぞ、この世界の王よ。朕の名は『ゾーコ』。千の世界を束ねし、異世界皇帝。つまりは……全世界最強の王である」
「……」
放心状態で、黙っていると、
ロキが、また、
「旦那様……な、名乗りを」
「あ、ああ……」
俺は、くらくらする頭を抱えて、一度大きく息を吸ってから、
「この世界の王! 砦トウシ!」
王を名乗ってみたものの、
目の前にいる、あの黒い火の玉と俺で……なんと差があることか……
あいつ、俺の10万倍強いんだぜ……
なんだ、10万倍って……
ふざけやがって……
「トリデトウシ……破格の力を持つ王よ。どうじゃ、朕の配下にならぬか?」
「え、配下にしてもらえるんすか?!」
生き残れる芽が出てきた。
こいつがどんな性格かわからないから、この先、どんな圧政を強いられるか予想もできないが、生き残れるなら……ある程度は我慢できる。
消費税30パーセントとか言われても人類滅亡するよりはましだろ……
「う、そ、じゃ」