俺の終わってるハズレスキル『名字が田中になる』が、ダンジョン配信で不本意にバズってる。 作:閃幽零
20話 全部間違った。
「う、そ、じゃ」
「……えぇ」
「どうやら、ぬしはまだ子供のようじゃのう……十代中盤といったところか? その若さで、それだけの力を得ておるとは、なんと末恐ろしい。もしかしたら、将来的に、朕《ちん》を殺せる男に成長するやもしれん。ああ、こわや、こわや」
「……ぜ、絶対の忠誠を――」
俺は、藁にもすがる思いで、そう口にしかけた。
けれど、
「信じぬよ。朕は愚者ではない。将来的な不安分子をわざわざ生かしておく道理はない。ここで確実に殺す。それ以外の道はありえぬ」
迷いも容赦もない、あまりにも淡々とした死刑宣告。
「……筋が通ってるぜぇ……なんの文句も言えねぇ……」
俺は、乾いた笑いをこぼすしかなかった。
こうなってくると、もはや、初手で田中玉を撃ったのが、最大の悪手ともいえる。
もし、俺が最初から、へこへこと媚びへつらって、雑魚のフリをしていたら……ゾーコも俺を配下……は難しいかもしれないが、『奴隷ぐらい』にと考えたかもしれない。
最悪すぎる……
全部、間違った……
「朕の提案を即座に受け入れたことから……ぬしの力は、すでに限界に達しているという予測がつく。あれだけの力じゃ。一発が限度と考えるのが自然。しかし、油断は禁物。二発撃てる可能性を考慮し、配下の提案をさせてもらったが……実に見事に引っ掛かってくれたのう」
「マジで、今回の俺は全部間違ったな……そんだけ強いのに、賢くて慎重って……無敵かよ……」
「そうでもなければ、1000を超える世界を束ねることなどできまいて。朕は事実として、多くの世界を支配下に置きし絶対の君主。全世界を見渡しても、朕以上の存在はどこにもおらぬ」
「でしょうね……会って数分ですけど……俺も、そんな気がします」
もはや、強がる気力すら、湧いてこない。
「愛《う》い奴じゃ。できれば、配下にしたいところじゃが……先ほどの力は危険すぎる。アレはさすがに看過できん」
「はぁ……」
俺は思わず天を仰いでため息をつく。
これ、マジで、田中玉使わなければ、配下ルートあったんじゃねぇか?
もう……
もぉおお……
「さて、それでは、そろそろ征服を開始しようか。一瞬で終わらせるのはさすがに酷じゃな……ボンド、少し遊んであげなさい」
ゾーコの言葉に、あの、隣に控えていた執事然とした男が、深々と一礼した。
「承知いたしました。この世で最も麗しき、ゾーコ陛下の勅命を賜りましたこと、心より光栄にございます」
火の玉に麗しさもくそもないような……
などと、つい、現実逃避から、どうでもいいことを考えてしまう。
こんな状況で、そんなことを考えている場合じゃないのは、分かっているんだけど。
命令を受けたボンドは、袖口を整えるような、
やけに丁寧な仕草をしてから、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
黒い燕尾服に、艶やかな革靴。
物腰だけは、どこまでも紳士的だった。
レベル2万か……
まあ、こっちにいるメンツの実力は、アダムの7000が一番上に見えるから、
あいつだけでも勝てるとふんだんだろうなぁ……
俺は、深呼吸を一つしてから、アダムに視線を向けた。
「昨日の作戦とは異なるが……あいつをぶっとばしてきてくれ。ただし殺すな。殺したら交渉できない」
「……承知しました」
アダムは、迷いのない返事とともに、静かに一歩前へ出る。
俺の命令を聞いていたボンドが、鼻で笑い、
「殺すな? たかがレベル7000程度のゴミに、この私が殺されるわけがなかろう」
正直、こんな金魚のフンはどうだっていいんだ……
問題なのはゾーコの方……
俺は死んでいい……
ゾーコにとって、危険なのは俺だけだ。
アダムたちは有能な人材とみなされる可能性が高い。
アダムたちの有能性を示し、俺が首をさしだせば……世界自体は救えるかもしれない……
脳裏に、そんな計算が、勝手に組み上がっていく。