「超かぐや姫!」 If 〜もしも彩葉に弟がいたら〜 作:剣が好きな人
皆様、お久しぶりです。
体調不良やケガが相次ぎ、更新が遅れてしまいました。楽しみにお待ちいただいていた皆様、大変申し訳ございません。
不定期の更新となると思いますが、今後とも宜しくお願いします。
それでは、短いお話ですがお楽しみください!
姉ちゃんが目を開けた。どうやら至福の時間を終えたらしい。
「お疲れ様、姉ちゃん。 ヤチヨさんとの握手はどうだった?」
「嬉し過ぎて逆に上手く喋れんかったわ…」
「そっか、本当によかったね」
京都にいたときのような喋り方になってる。それだけ嬉しかったんだな。
そんなしんみりとした空気を打ち破るのはいつだって
「'ライバー なり方' っと」
そういえばさっきログアウトするときにライバーになる準備するとか言ってたな。
「ってかかぐや、なんで金髪なの?」
確かに。もう何でもありすぎてツッコまなかった。
「えっ、ダメ? じゃあ…」
そう言いながらどこかのイカした陣取り合戦ゲームのように髪色と肌の色を変えていった。
この光景には流石に姉ちゃんも冷や汗が出る。
そんなコスチュームチェンジの末に…
「でもやっぱこれっしょ〜」
結局は金髪に逆戻り。まぁツクヨミのアバターと同じ色だからわかりやすい。
「理解の範疇超えし宇宙人… まぁもう何でもいいか、ハハ…」
姉ちゃんは疲れ切った顔でこういった。あーあ、ついに姉ちゃんまでも思考放棄しちゃったよ。
「ライバーって、何すればいいのかなぁ? ん〜やっぱさっきの戦うやつとかやるのかなぁ… ねぇ彩葉、教えてよ〜 戦うやつ〜」
「かぐやちゃん、姉ちゃんは今疲れてるんだ。今日は少しそっとしてあげたほうがいいと思うよ。」
ーーとは言ったが、これで良かったよね? あと、余韻にも浸りたいっしょ?
「ありがとうございました〜」 私はそう言って、バイト先である
そう、BAMBOO cafeのピークタイムは正に戦場の如く忙しい場所なのだ。
一方その頃、俺はというと…
「もしもし、爺ちゃん。 朔久です。 今月も仕送りおおきに。」
「何言うとるんや、あれや足りひんやろ?」
祖父と電話越しに話している。そう、実は俺たちは父方の祖父母から毎月仕送りを受けているんだ。姉ちゃんは一切手をつけていないんだけどね。
…俺はどうかって? 俺は有り難く使わせてもらってる。俺は姉ちゃんと違ってバイトしてなくて、その代わりにKASSENで小遣い稼ぎしてるけど、それだけでは学費まで考慮すると流石に生活は成り立たない。なので使わせてもらっている。一応食費は姉ちゃんほどではないが少なめにしているが。
「いや、貰えるだけホンマありがたい限りですわ。使わせてもろてます。」
「そうか、彩葉は元気にしとるか?」
その声には心配の色が滲み出ていた。
「えぇ、かなり無理してますがね。 無論危なくなる前には止めますよ」
「うむ、よろしくな。 他には何かあるか?」
少し考える。そういえばいつかの日、
「…いや、特にはないです。 婆ちゃんにもよろしゅう伝えといて、ほな。」
そう言って電話を切った。
「よし!」 そう言う声と共に姉ちゃんはこの夏休みの予定表を壁に貼り付けた。こりゃあ… 強烈極まりないな。
「な、なにこれ〜〜……」 流石のかぐやちゃんもコレには怯むか。
「何って、夏休みの予定だけど?」
「え〜やだ〜、かぐやと遊んでぇ〜…」
まぁこの子の性格上そう来るわな。
「一日たりとて無駄にできないから邪魔禁止ね」
うわぁ容赦ゼロ。
返事として金髪の美少女は「え〜〜〜!! ヤダッピー!!」と言って身体をジタバタした。
その様子を見た姉ちゃんが「追い出すよ? あと、あれらは?」 と部屋の一角に置いてあるぬいぐるみやらよくわからないおもちゃやらの方を向きながら鬼のような眼光を浮かべて言った。
その圧力に対しても、悪気など一切ない、いつも通りの様子でかぐやちゃんは「配信用の道具! 全部百均だから安心!」と答えた。
昨夜の時点で察してはいたが…
「かぐやちゃん、マジでライバーになるのかい?」
「もっちろん! もう配信も始めたんだ〜、どう?」
そう言って自信満々に見せられたパソコンには園児の落書きのようなイラストが不安になる不協和音を背景に手を振っていた。
『かぐやっほー! 月からやってきた、かぐやだよ〜。 今日はやること思いつかないから、これで終わり! じゃあねー…… ん? これで切れてるのか?』
ってオイオイ、最後インカメになってんじゃねぇかよ。初手で顔バレってマ?なんでもありすぎるだろこの子は本当に。
ちなみに、先ほどの不協和音の正体はかぐやちゃん曰く、ジングル… らしい。
「となると、どうやって曲を作ったんだい?」
そう俺が問うた瞬間、俺の目にはその答えが映った。
なるほど、姉ちゃんのキーボードか。こりゃまた懐かしいものを。
「ちょっと、私のキーボード! 勝手に出さないでよ〜」
「お、その感じ。彩葉もしや弾けるね〜? 全然上手く行かなくてさ、いっちょお願いしますよ、先生!」
「はぁ〜、わかったよ。 まずね、そもそもコード ってのが…」
… 頭が痛い。胸が締め付けられそうな感覚がする。 これは…まさか…
「あって…」
刹那、俺の脳裏に苦い過去がよぎる。
『彩葉、音楽は自由に楽しむんやで』ーーそれは俺と姉ちゃんが齢六つの頃にこの世を去った俺たちの父親、酒寄 朝久《さかより ともひさ》が生前残した言葉だ。
…そうだ、あの頃はよかったな。姉ちゃんも兄貴も母さんも、みんな笑ってたから。そうだ。母さんが笑わなくなったのは、
母さんが笑わなくなってからは、それはもう俺たちには厳しい言葉を投げかけていた。最初は兄貴が父さんの代わりとして振る舞ってた。でも、その兄貴はいつしか東京に独り立ちした… そんな環境下にいても俺たち、いや、少なくとも俺は、あの人を嫌いになることはできなかったみたいだ。
ーーピアノの音? それで、それだけでハッとした。姉ちゃんは今、'自身の過去' という名の心の鎖から解放されたのか。淀みのない手つきを見て俺はそう思った。
しかし、やはりこの人のピアノ、好きだわぁ… 心を揺さぶるように美しい音色、繊細で無駄がない手の動き… その全てが見ていて惹かれるモノがある…
そうして即興の演奏は幕を閉じた。二人の聴衆に見守られて。
どうやらかぐやちゃんにも好評だったようで、姉ちゃんへの賞賛もさることながら、その目を爛々と輝かせていた。そんな彼女が姉ちゃんに言ったことは…
「もっかい、エンドレスで!」
なんとも彼女らしい。だが俺も心のどこかではそう思っているのかもしれないな。
それからどれほど時が経っただろうか。
「あ、そうだ! 彩葉の曲を私が歌えば大バズ確定じゃん! …だから彩葉、一緒にヤチヨカップ優勝しよ? このボロアパートから伝説が始まる!」
「ボロアパート言うな、無理です。」
「えぇ〜、絶対楽しいのにぃ〜!!」
「
「んがぁ〜! …ねぇ、彩葉?」
あ、おねだりモードに入った。
「このまま終わりたくない… ハッピーエンドにしたいな?」
「姉ちゃん、俺からもお願いだ。勿論無理にとは言わないけど、俺はこの子ならきっと、凄いライバーになれると思うんだ。だから、協力してほしい」
姉ちゃんの返答は了承だった。
「それ、ズルくない?」と言う小言を添えて。
今、この瞬間が、
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
次回の更新は11月の下旬〜12月の上旬を目安に行います。