Fate/BlackRod   作:雑草弁士

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第10話 凛、とうとう見せ場

 霊体に関する感知能力が高いと見られる元代行者、言峰綺礼が逮捕されて失脚したため、士郎は安心して浮遊霊を使役したり量産した人造霊(オートマトン)を街に放って、慎二と英雄王ギルガメッシュの動向を調査し始めた。結果、あっさりと相手の姿が掴める。奴らは冬木市新都の歓楽街で、勝利の前祝いをブチ上げて遊んでいたのだ。

 

 

「なに、こいつら」

「なんなのです、こいつら」

「なに、こいつら」

「なんだ、こいつら」

「なんなの、こいつら」

「■■■、■■■■」

「なんなのです、こいつら」

「なに、こいつら」

 

 

 異口同音。人造霊(オートマトン)の報告映像を目の当たりにした、一同の言葉は皆一緒だった。

 

 

「というか間桐慎二、酒飲むな。未成年が」

「まだ高2よね」

「ダメダメだ」

「ダメダメです」

「ああ、でも英雄王は流石に自分の神代の酒(ネクタル)は飲ませてませんね」

「流石に慎二にはもったいないと思ったか」

 

 

 そんな中、アーチャーがふと英雄王の表情に気付く。

 

 

「……そろそろ英雄王も、慎二に呆れている、か? いや違う。呆れたのではなく、飽きた、だな」

「なるほど、今までは奴の遊びだったって事だな」

「そうだ。だが飽きたとなれば、惰性でそのまま付き合うか、それとも始末して言峰を救出に回るか、それとも言峰も放置してどこかへ行くか。あるいは慎二をも放置して、か?」

「こちらを叩きに来る可能性も無くは無い、な」

 

 

 その時、映像に付随した音声が聞こえる。英雄王ギルガメッシュと慎二の声だ。

 

 

『……って事は、衛宮の仲間だったあのガキ、それがアインツベルンのホムンクルスだってことか』

『そうだ。そしてアレ自体が此度の聖杯そのものである可能性が高い。前回の第四次聖杯戦争に於いても、アインツベルンはセイバーの代理マスターとしてホムンクルスの女を宛がい、そしてその女の体内に聖杯を収めていた。

 おそらくは此度は更に魔導技術を進歩させ、ホムンクルスそのものか、その心臓あたりの主要臓器が聖杯となる様に仕組んでいるのではないか? 他の陣営に聖杯が奪われぬ様に、な』

『ちっ、小ずるい奴らめ』

 

 

 映像を視聴している全員の気持ちが一つになった。『お前が言うな』と。

 そして英雄王は訊ねる。

 

 

『それで、どうするのだ。おそらくは郊外のアインツベルン所有の城に、あのホムンクルスどもは陣取っているだろうて』

『よし、それなら明日の夜にでも攻め込むとするか。お前は最強なんだろ? なら真正面から、叩き潰してやるってもんさ!』

『ククク、なら今晩はどうすると言うのだ』

『ここで英気を養う!』

 

 

 一瞬だけ英雄王は軽蔑の視線を送るが、表情だけは笑顔で……。それも嘲笑の顔であるが、慎二は気づかないでいる。まあ表情だけは笑顔で、慎二に語る。

 

 

『……よかろう。どんどん飲むがいい。バーサーカーを潰して、あのホムンクルスを解体、聖杯であるらしき臓器を入手する。どうせ生かしたまま捕らえても、言う事は聞くまいて』

『なるほど。たぶん心臓なんだろ? それをどう使う?』

『適当な輩に殖えつけ、使える様にすれば良い』

『……ならば、遠坂だな。あいつめ、お高くとまって、事もあろうに僕の誘いや告白を断りやがって』

 

 

 映像を視聴しているほぼ全員の気持ちが一つになった。『お高くとまっているのは貴様だ』と。ただ、唯一気持ちが一つになっていない士郎に、イリヤが笑顔を浮かべて言う。

 

 

「……シロウ、怒ってくれてありがと」

「ん」

 

 

 まあ、士郎は英雄王が『ホムンクルスを解体』とか言い出したところで、その表情が氷のごとき無表情に変わっていたのだ。ついでに視線は絶対零度。まあ、うん、まあ。激怒していたのである。

 アーチャー、エミヤが苦笑しつつ言葉を(つむ)ぐ。

 

 

「ふふ、それでどうする。この映像は昨夜の物なのだろう」

「今夜に奴らは、アインツベルン城にやって来る。人造霊(オートマトン)を追跡させたままだから、位置は丸見えだ。……なら迎え撃つさ」

「了解。しかしわたしにイリヤの心臓を移植する気? ヤバい奴らね」

 

 

 そして彼らは動き出す……。

 

 

 

*

 

 

 

 深夜のアインツベルン城。イリヤとリズ、セラ、そしてバーサーカーはその城門前で英雄王を待ち構えていた。慎二、眼中に無し。

 やって来た英雄王が、口を開く。

 

 

「ふん、出迎えご苦労」

「来なくていいわよ」

「……僕を無視するな!」

「……どこかで会ったかしら?」

「き、貴様! 僕は間桐の、間桐のマスターだ!」

「え。冗談でしょう? 御三家の1つ、間桐……マキリのマスターが、そんな貧相なわけ無いじゃない」

「ま、前に会っただろう!?」

「覚えてないわ。その程度の格だって事よ」

 

 

 思う存分イジられて、慎二はご満悦の様だ。顔を真っ赤にして喜んでいる。……嘘です。怒っている。

 そしてイリヤはバーサーカーに命令を下す。

 

 

「やっちゃえ、バーサーカー! 覚悟しなさい! バーサーカーは最強なんだから!」

「■■■■■■■■■■ーーー!!」

 

 

 咆哮し、突進するバーサーカー。慎二は腰が引ける。

 

 

「ひっ! あ、アーチャー!」

「ふん、怯えるでないわ」

 

 

 そして英雄王は、背後の空間から多数の宝具を連射する。バーサーカーは一瞬にして穴だらけになり、消滅した。イリヤの悲痛な声が響く。

 

 

「そんな! バーサーカー! う、ううっ」

「お嬢様!」

「イリヤ!」

 

 

 セラとリズの悲鳴が聞こえる。しかしおそらくは『敗退』したバーサーカーを取り込んでしまったためか、イリヤの身体には負担が掛かっている模様だ。これはイリヤが小聖杯である以上、どうしようもない事だ。

 そして英雄王ギルガメッシュは、更に宝具の雨を放つ。それはセラとリズを葬り去り、そして内1本だけがイリヤの腹を貫く。

 

 

「ぎゃあっ!!」

「ふん、その様な叫び、淑女らしからぬ。ホムンクルス故、仕方のない事か」

 

 

 英雄王はそのまま前に進み、イリヤを貫いた宝剣を掴んでそのまま上方向へと斬り上げた。

 

 

「あ……」

「……やはり『核』は心の臓だった様だな。バーサーカーやこれまでに没したサーヴァントどもの魂を吸収して、脈打っておるわ」

「や、やったなアーチャー!」

 

 

 喜ぶ慎二にこっそり蔑視の視線を送ったギルガメッシュは、一瞬だけイリヤの心臓から眼を放した。その瞬間、イリヤの心臓はその姿をポテトスマッシャー型手榴弾に変える。

 

 

「え」

「なに!?」

 

 

 爆発し、魔力の波動を撒き散らす手榴弾。威力のほどは神秘としてはさほどでは無かったらしく、高位のサーヴァントである英雄王は多少の火傷で済んだ。それでもイリヤの心臓だと思わされていた手榴弾を握っていた右手は、火ぶくれが出来てとても痛々しい。

 偶然ギルガメッシュの身体で隠されていたために、爆風でひっくり返っただけで済んだ慎二は慌てる。

 

 

「な、何が」

「うろたえるな! ……出て来るがいい」

「おう」

 

 

 そこに出て来た一同を見て、英雄王ギルガメッシュは目を見張る。眼を見開く。そこに居たのは、傷ひとつ無いイリヤ、リズ、セラ、バーサーカー。そして凛とセイバー。最後に、黒杖特捜官(ブラックロッド)の恰好をした、士郎であった。

 

 

「な、遠坂! そのホムンクルス、え、バーサーカーはさっき」

「あんた馬鹿でしょう慎二。来るのが判ってるんだから、幻影(イリュージョン)による罠くらい、張れるなら張るわよ。衛宮君が」

「リン、自分は張れないんだから威張らないでよ」

「遠坂の魔術は宝石魔術! 幻影(イリュージョン)は向かないのよ!」

 

 

 だが慎二は、必死に虚勢を張る。

 

 

「ふ、ふん! だけど僕のアーチャーは最強なんだ! 見ろ、さっきの罠だってかすり傷だ!」

「重ねて言うけど、あんた馬鹿でしょう慎二。さっきの爆弾はね。そいつの本当のマスターが、令呪で転移させて逃がすのを封じるための物よ。綺礼が何を令呪で願ったって、少なくとも空間転移の類なら発動しないわ。あと3時間は、ね」

「!! ち、ちがう! こいつの、このアーチャーのマスターは、僕だ! アーチャー、こいつら皆、皆殺しだ! やっちゃえよ!」

 

 

 必死に英雄王にすがる慎二。そしてそれに対する答えは。

 

 

ば、きっ。

 

 

 英雄王の裏拳が、手榴弾でずたずたにされた右拳が、慎二に炸裂した。まるで小うるさいハエを払うかの様に。……一瞬で、慎二の頭部どころか胸から上は消滅した。ぼたぼたと、地面に落ちる慎二の両腕。そして崩れ落ちる、慎二の腹から下の部分。

 英雄王ギルガメッシュの眼には、ソレ以外何も映っていない。黒い制帽。黒い革ジャンと革ズボン。黒い革手袋と黒い革ブーツ。黒い革コート。そして長大な、機械を束ねたかの様な魔道具の杖。黒杖特捜官(ブラックロッド)、それは10年前にギルガメッシュにこの上ない屈辱を与え、勝ち逃げした赦し難い怨敵であった。

 

 

「お・の・れえええぇぇぇ! キャスタあああぁぁぁ!! 起きろおおおぉぉぉ、エアあああぁぁぁ!」

 

 

 血しぶきが飛ぶ。ズタズタになった右手で、ギルガメッシュは乖離剣を抜く。そして振り抜いた。

 

 

「くらえ、 『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』いいいぃぃぃ!!」

「……」

 

 

 黒杖特捜官(ブラックロッド)、士郎はあらかじめ呪文編纂機(スペルコンパイラ)編纂(コンパイル)させておいた呪文(スペル)呼び出し(コール)圧唱(クライ)する。呪力増幅杖(ブースターロッド)が唸った。

 

 

キュキュキュキュンキュン!

 

 

 乖離剣エアから、次元断裂が放たれる。その裂け目は、真っ直ぐに士郎たち、いや士郎を狙って伸びる。だがしかし、次元断裂は中途で止まった。小さいが、別の次元の裂け目が士郎の眼前に出現したからだ。

 何が起きたかと言うと、ガラスのヒビ割れをイメージすれば良いだろう。ガラスにヒビが入るとき、もしもガラスにあらかじめヒビが入っていたなら、そこでヒビ割れは止まり、そこより先には伝播しない。そういう理屈だ。士郎はあらかじめ次元のヒビを作る事で、そこで乖離剣による次元断裂が自分たちに伝播するのを防いだのだ。

 

 かつて10年前には、キャスター黒杖特捜官(ブラックロッド)は左掌に埋め込まれた自在護符(ヴァリアブル・タリスマン)の設定を幸運(ラック)に変更し、可能な限りの魔力を注ぎ込む事で激烈な豪運で『運良く』乖離剣の攻撃を避けた。だがアレはあまりにも多大な魔力を消耗するため、士郎は英雄王ギルガメッシュが存在したままでいる事を知った日から、乖離剣の対策を別に考えていたのである。

 そして士郎は駆けた。身体施術(フィジカル・エンチャント)でその速度はあまりに速い。一気に英雄王の目の前に迫ったその右手には、フルサイズの呪力増幅杖(ブースターロッド)が握られている。

 

 しかし、英雄王の顔がにやりと嘲笑に歪んだ。

 

 

「……天の鎖(とも)よ!!」

「!!」

 

 

 士郎は強靭な長大な鎖に縛られ、絡め捕られる。これぞ『天の鎖(エルキドゥ)』、ギルガメッシュの唯一の友人の名を冠した対神兵装であり、その神性が高いほどに身動きが取れなくなって絞め殺されかねないという恐るべき鎖だ。

 

 

「貴様ごときに我が友の鎖を使うなど、あまりにも腹立たしいが……。かつて(オレ)の顔を踏みつけにしたその度胸に免じて、使ってやろうではないか。縛られて何もできぬまま、あの世に行け!」

「……」

 

 

 そして英雄王の後ろに、無数の宝具が浮かぶ。宝剣、宝槍、宝斧、宝鎚……無数の、無数の武器だ。それらが超高速で発射される、その瞬間である。

 ……世界が、変わった。

 

 

「……Yet,those hands will never hold anything.(故に、生涯に意味はなく)

 So as I pray,unlimited blade works.(その体はきっと剣で出来ていた)」

 

 

 天には無数の錆び付いた歯車が浮かび、大地は荒れ果てた荒野。そしてその荒野には、無数の剣が突き立っている。その荒野の真ん中に、白髪長身の、黒い肌の男が立ち尽くしており、その姿は服装はともかくとして、顔形は士郎にそっくりであった。……英霊エミヤ、第五次聖杯戦争にて遠坂凛に召喚された、アーチャーである。

 彼がギルガメッシュを睨むと、無数の剣が舞い上がった。ギルガメッシュは一瞬唖然としたが、叫ぶ。

 

 

「おのれ、贋作者(フェイカー)か! 贋作者(フェイカー)ごとき……」

「贋作が、真作に勝てぬなどと、誰が決めたのかね」

 

 ギルガメッシュは必死に、無数の剣を射出する。士郎を消し去らんとする。しかし英霊エミヤがそれを許さない。エミヤの操る剣は、英雄王の射出する宝具を次々に打ち落とす。更には1本の小剣が英雄王の足元に転がり……。爆発する。

 ……『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』、英霊たちが持つ『ノウブル・ファンタズム』と呼ばれる唯一無二の武装を、あえて自壊させてその内包する魔力、内包する神秘を爆発力として行使する、一種の禁じ手である。なぜならば、その武装が失われてしまうのだから。唯一無二の宝具が。

 

 しかし、英霊エミヤの場合は、話が違う。彼の扱う武装は全てが複製品。エミヤの魔力が尽きない限りいくらでも複製は利く。故に使い捨てにすることに、躊躇は無い。そして英霊の武装を使い捨てにする事はないとの先入観から、それを思考の外に置いていたギルガメッシュは、爆発で吹き飛ばされる。

 

 

「な! お、おのれ!」

 

 

 その一瞬……。一瞬だけ、英雄王は士郎から意識を離してしまった。気づいた時には、もう遅い。天の鎖(エルキドゥ)に縛られる瞬間に全身の筋肉をパンプアップさせて全力で余裕を作っていた士郎は、一気に力を抜く事で鎖との間に隙間を作り、一瞬で脱出。そしてハック(切断)の呪文を圧唱(クライ)した。

 

 

キュン!

 

 

 10年前、キャスターであった頃の黒杖特捜官(ブラックロッド)が行使した切断(ハック)の呪文は、あくまで通常の物であった。呪文自体も、そして威力も鋭さも。そして今回発動した切断(ハック)の呪文もまた、呪文自体はあくまで通常の物である。

 一瞬遅れて士郎に気づいた英雄王は、必死で(かわ)す。そして嘲笑う。

 

 

「ククク、残念だったな! いい連携ではあったが!」

「……気づいてないの?」

「なに?」

 

 

 バーサーカーに護られたイリヤの台詞に、怪訝そうな顔になる英雄王。だが彼は、右肩が妙に軽い事に気付く。

 

 

「……な!」

「士郎の呪文で、右腕が肩口から飛ばされてるのよ。よっぽど鋭い刃なのね、気づけないなんて」

 

 

 士郎の高速詠唱(クイッククライ)した呪文は、ただの切断(ハック)だ。だが、『何故か』『彼が士郎になってから』、切断(ハック)呪剣(ソード)など、切断系の呪文(スペル)の威力と精度が圧倒的に増していたのだ。まあその理由は、英霊エミヤシロウと語らって判明するのだが。

 キャスター黒杖特捜官(ブラックロッド)の霊魂を魂の材料として()ぎ足された少年である士郎は、魔術師としての才能が眠っていた。そしてその起源は『剣』である。……彼の治療のために、衛宮切嗣が聖剣の鞘(アヴァロン)を彼に埋め込んだ事が原因なのか、そうでなく最初からなのかは不明であるが。

 

 そしてこの時、切断(ハック)は『ぶった切る』様な強烈な切断ではなく、バターの塊にホットナイフを刺し入れるかの様な凄まじい切れ味と、長大な大剣にも勝る刃渡りとを兼ね備えたものになっていたのだ。それがギルガメッシュの肩口を、乖離剣(エア)ごと斬り飛ばしていた事に、ギルガメッシュはこの瞬間まで気づけなかったのだ。

 

 

「覚悟! 英雄王!」

「……!! 騎士王!!」

 

 

 そして英雄王の左腕を、セイバーが斬り飛ばす。その早業は、目にも止まらない。同時に英霊エミヤが弓より射た螺旋状の矢……偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)が、英雄王の両脚を抉り斬る。

 そして十年物の宝石の魔力を代償に、天から凛が降って来る。

 

 

「だああぁぁ……。覇ァ!!」

「ぐぼぉ!」

 

 

 凛の拳に握られた、別の宝石が砕け散り、英雄王のみぞおちに激烈な威力が突き刺さった。その勢いのまま凛は、またも大粒の宝石から魔力を引き出して、カードに注ぐ。

 

 

ザクッ!

 

 

 もろに、刺さった。英雄王の胸元に。受肉しているためか、英雄王の身体から何らかのオーラみたいな物が引きはがされて、カードに吸収されて行く。

 

 

「き、きさま、は」

「遠坂時臣の娘、凛」

「と、時臣の、む、すめ、だと」

「アンタ、綺礼とツルんでたからには、父さまの死に何らかの責任はありそうよね。元、父さまのサーヴァントだったんだもの。まあ、父さまもアンタを犠牲に『根源』に行こうとしてたし? だから殺し殺されは、文句言う事じゃないわね。でも」

「……」

「あんたらのおかげで! わたしが苦労した分は! 思い知りなさいな!」

 

 

 凛の言葉に、一瞬唖然とした英雄王ギルガメッシュだったが、突然笑いだす。

 

 

「く、はははははははは!! 時臣の娘が、これほどまでに愉快だとは! 知らなんだわ! 惜しい、あまりにも惜しい事をした! 綺礼ではなく、貴様をマスターとでもしておけば良かったやもしれ」

 

 

 そこでギルガメッシュの台詞は途切れる。後に残されたのは、残骸となった肉塊。入っていたギルガメッシュの魂、霊体を失った、肉の塊が転がっていた。凛は『弓騎士(アーチャー)、ギルガメッシュ』と書かれ、英雄王の似姿が描かれたカードに向かい、呟く。

 

 

「ごめんなさい。あなた、趣味じゃないの」

「英雄王を振る女か。まあ、うん、まあ」

「何がいいたいの、士郎」

「凄いなって」

 

 

 ごすうっ、と殴打する音が聞こえたが、直後凛は右手を押さえてうずくまった。いや、黒杖特捜官(ブラックロッド)の制服の防御力を、舐めてはいけないのだ。うん。クスクスと笑うイリヤの声を背景に、一同は肩の荷を下ろすのだった。




ま、この後自業自得とは言えタヒんでしまった慎二の遺体を肉片かき集めて棺に詰め込み、英雄王の抜け殻の肉塊は焼却処分と、八面六臂の忙しさなんですけどね。と言うか慎二がタヒぬとは思ってなかったんで、捕まえて精神操作、場合によっては社会奉仕に対する脅迫観念を殖えつけて『菩薩(ボサツ)』にするか、『三重絶対精神拘束(アジモフ・ゲアス)』仕込んで生きたままロボットにするか、士郎君すっごく悩んでたんですけどね。タヒんじゃったんで、別な意味で始末に悪くなりました。
間桐鶴野はアレは、間桐臓硯の遺産一部渡して放逐しちゃいましたけど、慎二の葬式もやらせないといけないですし、面倒だから洗脳するかなあ、でもなあ、とか色々。鶴野は勇気が無かったのと抵抗しても無駄だったので、臓硯に逆らわなかったわけですが、それでも桜の件では全くの無罪とも言えませんし。でも無罪じゃないってだけで、そこまで罪が重いかってぇと。だもんで、士郎君悩みます。
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