ロングアーチからの通信を受けた隊員たちは続々と機動六課の隊舎に帰還していた。ジープで遠出をしているシャマルは未だに到着していないがフォワード陣が集まったことを確認し、病院から連絡を受けたことを伝えた
「なんで待機なんだよ!」
下された命令にヴィータは、怒り形相を露わにして食って掛かるが行動を予測していたザフィーラたち取り押さえられたが、激昂は収まらずデバイスを起動して爆発寸前になっている
「愚か者、それが原因だ」
「っんだとシグナム!優等生ぶってんじゃねぇ!」
「お前みたいな奴が向かったら1番の迷惑になる。今はテスタロッサだけに任せればいい」
平静を装っているつもりだがシグナムも担ぎ込まれた病院へ行きたかった。しかし捜索前にしていた孤児院での会話が脳内で何度もリフレインし、はやてに何を語り掛ければ良いのか分からないのだ
「クロノ、主を運んだ者の素性は?」
「民間人でゲイリー・ビアッジという身分証を提示していたみたいだ」
発見者が管理局員という1番最悪な事態だけは避けることができた。相手が民間人なら謝礼を多く包んで今回のことを穏便に終わらせる算段を頭の中で考えたクロノは自身の普通口座に記載されている金額と睨めっこをしていた
「君のこと、フェイトちゃんに教えてもらったの」
「どこまで?」
病院内に併設されているカフェテリアで口火を切ったのは美由希の方だった。彼女はミドラの家族構成や経歴を述べるとロストロギアの密売で生計を立てていることについて言及した
「管理外世界の日本という国ってのは、他人の私生活を覗き込むが当たり前なのですか?」
「…ごめん、そうじゃなくて」
「知ってみてどう思いました?」
恥ずかし人生を送ってきたわけではないので過去や私生活を覗かれても問題は無いが、痛くない腹を遠慮無しに探られるのは気分が悪い
「戻ろうとはしなかったの?君は私の妹より年下なのに」
「そこにいるのが当たり前になって、日常的に染み付いてしまった習慣を手放すことはできなかった」
傭兵団でもミドラを堅気の世界へ戻そうと意見を述べた仲間がいたが彼は飲み込むことかできなかった。アウトローで非合法な世界に身を置いて自由気ままに生きるといえば自堕落な無法者だと思われるが常に自己責任のリスクが伴う。少なくとも10代の少年が行き着くには早熟すぎる生き方だ
「あなたも八神はやてのようなことを口にしますか?」
「はやてちゃんは何て言ったの?」
神妙な顔で尋ねてきた彼女に喫茶店で顔を合わせた三者面談の内容を話すとテーブルの上に置かれていた手が段々と赤くなって握り拳が作られた
「真っ当な手段って、出世を目指す自分にとって都合の良い世界を願う妄想に付き合うつもりはありません」
「…妄想か、少なくともはやてちゃんが言っちゃいけないことだね」
「10年間何もしなかった。報道が起きなければ被害者たちの存在を忘れ幸せな家族ごっこでサクセスストーリーを歩んでいたと思いますがお天道様はちゃんと見ていたようですね」
「恨んでいるの?」
その問い掛けに首を振ったミドラは同じ言葉を返すと
「俺はあなたの妹を再起不能にさせました。今ここで殴られる覚悟もあります」
「私の住んでいる国に『敵討ち』という言葉があるの。私にはその権利があるけど君を罵ったり殴ったりすることはしない」
拳を解いて紙コップを口元に引き寄せる。なのはを傷つけた悪党が目の前にいるのに震えず怯えることはなく半分ぐらい余らせてテーブルの上に置いた
「職務で負傷した身内のために加害者を襲うのは道理に反します。レイジングハートの映像を見て背もらったけど君は妹の攻撃を受けきっただけで加虐的なことをしていなかった」
「もちろん、その手段を選べましたが」
「敵として不十分だったんですね」
本調子ではないことは対峙してみて何となく分かった。向こうも犯罪者を野放しに出来ないため攻撃を仕掛けるのは当然のことだが自身の健康管理が出来ていないのは指揮官として落第である
「どうしてなのはを―――」
「理由なんてありません、ただの意味の無い気まぐれで助けただけです」
「そう…その気まぐれに感謝しないと」
動機の言語化は難しい、ミドラの場合は今の感情を最優先しているので落下していく高町なのはを見捨てる世界線もあった。なお砲撃魔法を仕掛けて自滅した相手を助けたのは今回が初めてである
「今の生き方を続けていくんだね?」
「前にも言いましたが根無し草の流れ雲なので、日銭を稼いで飯を食って朽ちて死んでいくだけです」
「夢や追いかけたいものは無いの」
「何も起きなければあったと思います。家族と過ごして学校に行って温かい布団の中で目覚める一般的な生活を送っていたら見つけていたと―――」
その道は10年前の事件が原因で閉ざされてしまった。だからこそ彼にとっての普通は一般的な常人にとっての非日常となった。しかしミドラは悲観的にはならない全てを運命として受け入れ目の前の道を歩き続けているだけにすぎない
「今からでも―――」
「手遅れです!これは俺の人生ですから」
そう言い切ってしまい美由希は言葉を紡ぐことができなかった。別段ミドラのことを説得するつもりはなかったが知らず知らずのうちに意志が傾いてしまったことを反省する
「1つ頼みがあるんだけど」
「聞くだけなら、その先は内容によりけりで」
彼女の口から発せられたことに大笑いをした彼は即答で頷いて了承した。しかも依頼料0円という破格の待遇で請け負うことになった。2人は立ち上がりカフェテリアの席から去った
「ありがとうございます。出来れば内密にしていただけると」
「情報統制は可能ですが我々以外にも人の目は存在します。出入りの激しいここでは効果を発揮しないと思われます」
病院に到着したフェイトは八神はやてが眠る個室へ案内された。背後にいる看護師に今回のことを外に漏らさないようにと頼んだが曖昧な返事で安心が出来ない
「あの…はやてを連れてきた人は?」
「ビアッジさんですね。まだ院内にいると思いますが放送で呼びかけますか?」
「ここで待たせてもらいます」
ナースコール使用時における注意や避難経路などの簡単な説明を受けたフェイトは部屋に備え付けられた椅子に座って深く疲れたように溜息を吐いた。土台が腐り機動六課崩壊の足音が段々と耳に聞こえるようになり不安な日々を仕事で紛らわせていたが全く拭うことができない
「(私も酷い顔だな)」
鏡に写る顔は隈ことないが疲れているのが見て取れる。エリオたちが心配するのも頷けてしまった。六課へ配属されたときは2人で大きな寝具を購入してお揃いのマグカップなどを買いに行ったが同部屋の友達は病院のベッドで寝起きしている
「(なのはもここに)」
勤務時間の都合でお見舞いに行くことが難しく片手で数える程度しか顔を合わせていない、立ち上がって彼女のいる病室へ向かおうとドアに手を掛けたが開けることが出来なかった
「(今は待とう、その後で逢いに行けば)」
再び椅子に座ったフェイトは時間を潰すために情報端末を取り出して看護師の口にした男性が訪れるのを待ったが、ポケットに入れていた自身の相棒であるバルディッシュにSOSコールが入電された。その内容はレイジングハートからであり全てを聞き出す前に彼女は駆け出してしまった。
手を合わせている犯罪者の姿だった
管理局の構造ってやっぱ歪なんですよね。実力=戦闘力の風潮で10代の頃から現場に駆り出されるって労基はどんな仕事をしているのか?
闇の書事件以降に八神はやてを戦力として取り込みたいがために事実を隠すのは……
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録ありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
高町美由希の戦闘力は?
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ナンバーズに勝てる
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ギリギリ善戦出来る