孤独とグルメ   作:大気圏突破

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断食

 魔法少女と呼ばれたあの時と同じように白い天井を見つめることしか出来ない、戦闘で魔導士として致命的なダメージを負った高町なのはを待ち受けていたのは残酷な現実であり早期に復帰することは叶わぬ願いであった

 

「(みんなどうしているのかな?)」

 

 

 ここ最近は誰も見舞いに来ない、患者が来院を催促するのはマナー違反であり中卒の彼女でも十分に承知しているがいかんせん暇である。本格的なリハビリを行うのは先のことで今は唯一動く右手の人差し指と中指を使って、目の前に投映されるモニターで読書するのが日常となっていた

 

「これは星1評価にしておこう」

 

 10代前半の頃から任務に明け暮れ学業を疎かにしていた彼女にとって感情の存在しないワンパターンで作られた文字だけの物語は退屈でしかない、同じ文字の羅列でも教え子たちから提出されるレポートの方が何百倍も面白い

 

 

「ティアナたち頑張っているかな?」

 

 何より情報が入ってこない、実はクロノが自身の後釜としてスターズの隊長に就任した際に新人たちの戦闘レポートの講評を行うと志願したが却下されてしまった。表向きは治療に専念するための措置だが、美由希から関わらせるなと言われたのが主な理由である

 

「(それにしてもどこに行ったんだろう)」

 

 病室から出て行ったきり帰ってこない、誰かと立ち話をしているのかと考えたが、ミッドチルダにいる親しい友人は限られているうえに顔を合わせれば少なからず自分のいる病室まで案内してくるはず。しばらく扉をじっと見つめていると擦りガラスに薄い影が浮かび上がり求めていた人物のシルエットが近付いてくる。文句の1つでも口にしようと思った矢先

 

 

 

 

「………っ!」

 

 口が動かず言おうとしたことを飲み込んでしまった。帰ってきたのは姉の美由希だが彼女の後ろには―――

 

 

「飾ってくれていたんだな」

 

 彼は自分ではなく奥に飾られていた胡蝶蘭に目を向けていた。それは入院後に届けられた大きな鉢植えの花で差出人の名前は知らない人物だった

 

「病人に根付いた花を贈るのはご法度なことだから」

 

「ふ~ん、住む世界が違えばマナーも違うのか」

 

 若干のカルチャーショックを受けながらミドラは椅子に座ることなく見回した。自身の存在を無視するような立ち振る舞いに彼女は怒りを覚えるが大声を出すことができなった

 

 

「お姉ちゃん…どうして、なんで?」

 

「ミドラ君のこと?」

 

 頭の中で阿波踊りとリオのサンバと安木節のドジョウ掬いが始まった。何で姉が自分を傷つけた犯罪者と親しげに話しながら部屋に入ってきたのか分からない、レイジングハートに記録された映像を見ているはずなのに

 

 

「そういえば話してなかったね。少し前に中心部で爆破テロがあったでしょ―――」

 

 ポカンと口を開けたまま微動だにしない妹を見つめながら当時のことを伝える。スカリエッティのアジトから送り届けたことやヴィータが襲撃したことも包み隠さず全てを晒した

 

 

「う…そ、ヴィータちゃんが、そんな」

 

「フェイトちゃんやシグナムさんに聞いてみたら?それとも私が嘘をつくような薄情で卑しい姉に見える?」

 

 首を小さく横に振ることしか出来なかった。物心ついた頃から今に至るまで変わらず大好きな存在で、頼もしくて大切で自慢の姉を疑う余地は微塵も無い

 

 

「それで例のブツはどこにありますか?」

 

「ちょっと待って」

 

 

 枕元の近くに置かれていた待機状態のレイジングハートを取り上げると美由希はミドラに手渡す

 

 

「ごめんね。何もあげられなくて」

 

「さっきも言いましたが金銭は求めません。変じゃないですか飯を提供してくれた人が金を払うって」

 

「返して!お姉ちゃん、なんで?どうして?返して私の…私のレイジングハートをなんで‼お姉ちゃんどうしてなの目を覚まして―――」

 

 

 きっと洗脳されているに違いない、力を振り絞って腹の底から声を出すが体はベッド上で小刻みに揺れるだけである。長年にわたり連れ添ってきた最高のパートナーが敵の手に渡ってしまった。助けられるのは自分しかいない

 

「…っあがぁぁうぅぅ!」

 

 指先に魔力を溜めて攻撃しようとするがリンカーコアが砕けているせいで魔力が集まらず痛みになって全身を駆け巡った

 

 

「魔導士を辞めるんだからレイジングハートは要らないでしょ」

 

「勝手に決めないで!―――私はもう1度」

 

「もう1度って何をするつもりなの?」

 

 何を言っても今の状況を覆すことが出来ない、視線の先ではミドラは手を合わせて『いただきます』と口にしていた。出会ってから酸いも甘いも一緒に経験した相棒が自分の目の前で

 

 

 

 

 

「なのはっ!」

 

 

 光のような速さで飛び込んできた彼女は手に持っていた得物で寸分の狂いなく脳天に叩きつけた。一般人なら即入院コースだがミドラに対してそれは無駄な攻撃だった

 

 目を閉じて少しだけ溜息を吐きだしたミドラは未だに頭部から離れないバルディッシュを片手で掴み口元に近付ける。そして先端の部分に歯を立てると簡単に噛み砕いてしまった

 

「ひぃっ!」

 

 

 昔のことを思い出し恐怖したフェイトは、すぐに渾身の力を込めて引き寄せるが逆に引っ張られてしまいバランスを崩し床に転げ落ちてしまうが受け身をとって体勢を立て直して自身のデバイスを待機状態にさせて手元に戻す

 

 

 

「フェイトちゃん!」

 

 味方が訪れたことに歓喜するが状況は芳しくない、未だにレイジングハートは彼の手元に握られたままで攻撃も通用していないのであれば手の打ちようがない

 

 

「どうして貴方がここに?」

 

「お前が来たのか?てっきり守護騎士の奴等がやって来ると思ったんだが」

 

「やって来る…、まさか?」

 

 

 薄々だが勘づいていた。切り離すことが出来ない因縁のように自分たちと彼が引き合う運命が仕組まれていたような気がする。これがドラマや恋愛小説ならロマンティックと称される関係だがハサミで今すぐに断ち切りたい縁である

 

 

「なのはのデバイスをどうするつもりですか」

 

「彼女から頼まれて食べるんだよ、こうやって!」

 

「待っ―――」

 

 

 包み紙から飴玉を放り込むように口の中に入れた。反応の遅れたフェイトはすぐに飛びかかってレイジングハートを取り出そうとするが、ミドラは奥歯で強く音を立てながら噛み砕き味わいながら咀嚼すると口内を全員に見せつけた

 

 

「イヤァァァァアアアァァァァァ!」

 

 

 持ち主だった人物の叫び声が室内に響き渡る。美由希は大声を聞きつけて訪れると思われる看護師の対応をするために廊下へ出て行った

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 手を合わせて礼の言葉を述べる。ベッドから乾いた笑い声が聞こえるが視線を向けることなく部屋を立ち去ろうするが踵を返してフェイトの前に立つ

 

 

「早めに支払ってくれよ!立て替えた代金」

 

 

 そう言い放って部屋から出て行き病院から去っていくのであった




競輪を見ていたら執筆が遅れました。活動報告に今後のことを記載しました

感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます

明日はオールカマー、ラストシーズン頑張れレガレイラ

高町美由希の戦闘力は?

  • ナンバーズに勝てる
  • ギリギリ善戦出来る
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