催眠おじさんのダンジョン無双~「俺は最強」と思い込んだら、本当に最強になってしまった~   作:ぽんたぬ

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第11話 えっちな同人誌とは違うのだよ

 

 俺は暴れる男を粘体の腕で包み、俺の拠点である横穴洞窟まで運んだ。

 

「離せ! 俺には帰る場所があるんだ!」

「アンタの帰る場所は、ゴブリンの巣じゃないだろ」

「彼女たちは家族だ!」

 

 男は俺の腕へ何度も噛みついてくる。

 だが歯形がついても、すぐに青い粘体が穴を塞いだ。

 

 

「元気じゃないか。本当に救助が必要なのか?」

「両脚を折られている人間を元気と判断するな」

 

 澪が洞窟の中を見回し、すぐに眉をひそめた。

 簡易マットと毛布は一人分。床には漫画、不良装備、空になった保存食の袋が広がっている。

 

「寝かせる場所がないぞ」

「俺のマットを貸そう」

 

「お前はどうする」

「澪と一緒に寝る」

 

「私は寝袋がある。お前は床で独りで寝ろ」

 

 即答された。

 俺が渋々漫画を端へ寄せると、澪は予備の布を敷き、男を横たえた。

 

 

「うわっ!? なんだよ、この傷跡……」

「あのゴブリンたち、中々にえぐいことをやっていたようだな」

 

 男の包帯を外すと、両脚には折れては治った跡が何本も残っていた。

 

 腕には拘束具の傷。

 乳首には何度も噛まれた痕がある。

 そしてその痕は股間のナニにまで……

 

(いったいどんなプレイをさせられてたんだ……)

 

 あの醜悪なゴブリンと……いや、催眠で美女に見えてたんだっけか。

 

 

 澪が傷を調べる間も、男は幸せそうに語り続けた。

 

「彼女は毎日、俺の身体を洗ってくれた。食事も口まで運んでくれた。たくさん子供を産むからねって、たくさん愛し合ったりもしたんだ」

 

「でもその足を折ったのも、その彼女だろ」

 

「ずっと一緒に居るためには、こうするしかないって言ってたんだ!」

 

 殺されかけても愛情だと思い込む。

 

 ゴブリンの放つフェロモン、催眠作用のある甘い香りはここまで漂ってきていない。だが脳が洗脳されきってしまったのか、記憶までは元に戻らないらしい。

 

 

 澪が端末に表示された失踪者の情報を確認する。

 

「行方不明者は、今のところ全員が成人男性だ。女性探索者は連れ去られていない」

 

「男を捕まえて何に使うんだ?」

 

「本人が子供と言っていただろう」

 

 俺は男の傷と、さっき見た腹の膨れたゴブリンを思い出した。

 

「うへぇ、種馬かよぉ」

 

 だが言われてみればなるほどな、と納得がいった。

 

 引きこもり時代によく読んでいたエロ漫画では、オスのゴブリンが人間の女性を苗床にしていたが、あれは効率が悪い。

 

 だって正常妊娠なら普通、十カ月近く出産を待たなきゃいけないし、そう多くは産めない。あれはフィクションだから成り立つ表現なのだ。

 

 

「種としては多産なゴブリンが母体側で、人間は種馬にしたほうが、より多く子供を増やせるってことか」

 

「おそらくな。そして誘い込む個体、世話をする個体、それぞれ役割が違う可能性がある」

 

「さっき世話をしていたゴブリンか。女王蟻や働き蟻のシステムまであるのかよ……」

 

 要するに、人間の男を長く生かして、何度も使うために治療してるのか。

 

 そんな会話をしていると、男は俺たちを睨みつけた。

 

 

「彼女たちを虫けらみたいに言うな!」

「虫けら扱いされてるのはアンタの方だぞ。いいから今は休んでおけ」

 

 しばらくすると、男は疲れたのか目を閉じた。

 澪も壁にもたれて休んでいる。膝を立てた長い脚のそばへ座ると、すぐに肩を押し返された。

 

「なぜ寄ってくる」

「眠ってる間に俺が誘拐されないよう、身体を密着させて見張ってもらおうかと」

「背中にナイフを刺したまま近づくな」

 

 そのまま目を閉じたのは、ほんの短い間だった。

 

 

(……ん?)

 

 甘い匂いが鼻を刺激し、俺は目を開く。

 布の上にいた男が消えていた。

 

「澪、起きろ」

「なんだ、夜這いなら殺すぞ」

「違う、アイツが居ないんだ!」

「なんだって!?」

 

 床には、引きずった脚の跡が残っている。

 

「まずいぞ……」

 

 俺たちはすぐに追いかけた。

 幸いにも(?)折れた足が完全にはくっついていないようで、そう遠くにへ行ってはいなかった。

 

 男は脚を引きずりながら、壁の亀裂へ入り込んでいく。痛みに顔を歪めているのに、その口元は笑っていた。

 

 

「待っててくれ。今、帰るから……」

 

 亀裂の先には、広い空間があった。

 何人もの男が壁際へ寝かされ、緑色の《世話焼きゴブリン》たちが食事や薬を与えている。

 

「こんなところに巣があったのか……」

 

 逃げようとしたらしい男の脚を一匹が石で折り、その直後、別の個体が丁寧に添え木を当てた。

 

 俺の目には、それが心配そうに恋人を介抱する美女に見えてしまう。

 

(アイツらの呼び名をDVゴブリンに変えた方が良いんじゃないか?)

 

 さてどうしようかと澪と目配せをしていると突然、寝かされていた男たちが一斉に起き上がった。

 

 

「侵入者だ!」

「しまった、《察知》スキル持ちの探索者が居たみたいだ」

「お、おい待て! 俺は人間だ、仲間だぞ!!」

 

「彼女たちに触るな!」

「俺たちの家から出ていけ!」

「ダメだ、聞く耳を持たねぇコイツら!!」

 

 刃物や食器を手に、こちらへ襲いかかってくる。

 

 俺は背中のナイフを投げた。

 《必中》の刃が男たちの手から武器だけを弾き、拘束具の留め金を切断する。

 

「助けてるんだから、大人しくしろ!」

「余計なことをするな!」

 

 男たちの叫びに反応し、巣の奥で何かが動いた。

 薄い岩壁が開き、強い甘い香りが流れ込んでくる。

 

 その向こうには、腹を異様なほど膨らませたゴブリンが何十体も並んでいた。

 

 

 半透明の腹の中では、小さな影が無数に動いている。

 俺と澪が足を踏み入れた瞬間、すべての動きが止まった。

 

(おい、やべぇぞこりゃあ……)

 

 腹の内側に浮かんだ目が、一斉にこちらを見た。

 

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