催眠おじさんのダンジョン無双~「俺は最強」と思い込んだら、本当に最強になってしまった~   作:ぽんたぬ

16 / 16
第16話 六発だけは、絶対に間違えない

 

 空だったはずのリボルバーから、確かに装填音がした。

 

 澪が回転式弾倉を確認する。

 

「……弾がある」

 

 六つの穴には、金属ではなく淡く光る何かが収まっていた。

 

 

「本当にできたのかよ」

「お前が催眠をかけたんだろうが」

 

「いや、まさか本当に弾が出てくるとは」

「殴るぞ」

 

 催眠って便利だな。

 俺自身、どこまでできるのか全然分かってないけど。

 

 

 女王が吠え、太い腕を振り上げた。狙われたのは俺たちではなく、床に倒れている男だ。

 

「澪!」

「分かっている!」

 

 澪が女王へ銃口を向け、迷わず引き金を引いた。

 

 乾いた銃声。

 光の弾丸が飛び出す。

 

 なぜか俺に向かって。

 

「俺ぇ!?」

 

 慌てて頭を下げた瞬間、弾丸が目の前で軌道を変えた。

 

 男にも俺にも触れず、女王の腕だけを撃ち抜く。

 

 緑色の血が飛び散った。

 澪の手元に淡い文字が浮かぶ。

 

《念銃》

 

「新しいスキル……?」

 

「俺を撃つスキルじゃなくて安心した」

 

「私もだ」

 

 そこは自信持ってほしかった。

 だが、今ので性質はなんとなく分かった。

 

 澪が守ろうとした男には当たらなかった。

 邪魔した俺にも当たらず、襲おうとした女王だけを撃った。

 

 

「もう一発!」

 

 二発目。

 

 男たちを押さえていた触手が弾ける。

 三発目は女王の胸に並ぶ穴の一つを撃ち抜いた。

 

 甘い匂いが目に見えて薄くなる。

 洗脳されていた男たちが頭を押さえ、その場へ崩れた。

 

 

「あと三発だ!」

「数えるな、分かっている!」

 

 女王が怒り狂い、近くにいた男を掴んで胸元へ抱え込んだ。

 

 人間の盾。

 

 

「撃てるか?」

「……無理だ。まだこの能力を完全には信用できない」

「なら俺が剥がす」

 

 俺は身体を崩した。

 両脚を青い液体へ変え、床を滑るように女王の横へ回り込む。

 

 右手を背中へ回し、ナイフを抜いて投げる。

 

 《必中》。

 

 女王の肩へ刺さる。

 

 続けて二本、三本。

 

 怒った女王が俺へ腕を振るうが、今さら多少穴が増えたところで大差ない。

 

 

「返ってこい!」

 

 《回帰》。

 

 刺さったナイフが一斉に抜け、俺へ戻ってくる。その途中でもう一度、女王の身体を通るように俺が位置を変えた。

 

 肉が次々に裂ける。

 

 

「行きと帰りで二回刺せる。お得だな」

「お前にも二本刺さっているぞ!」

「俺は数に入れなくていい!」

 

 戻ってきた一本が脇腹へ刺さっていた。

 やっぱりこの武器、設計した奴は馬鹿だと思う。

 

 女王が苦し紛れに男を投げ捨て、全身を丸めた。傷ついた腹の表面が硬く盛り上がり、厚い殻へ変わっていく。

 

「澪!」

 

 四発目が殻へ命中。

 大きな亀裂が走る。

 

 五発目。

 殻が砕け、その奥に赤黒く脈打つ肉の塊が見えた。

 

 女王が慌てて腕で隠す。

 

 

「そこか!」

 

 俺は女王へ飛びついた。

 

 身体を液状化させ、何本もの腕ごと包み込んで動きを止める。

 

「司、離れろ!」

「無理! 離したら隠される!」

 

「なら撃てない!」

「お前の弾、さっき俺を避けただろ!」

 

「絶対とは限らない!」

「俺は最強だから当たっても死なない!」

 

「そういう問題じゃない!」

 

 澪が一瞬だけ迷い、それから大きく息を吐いた。

 

 

「……死んだら殺すぞ」

「死んでるのに!?」

 

 六発目。

 

 銃声が響いた。

 

 光の弾丸が、真正面から俺の胸へ飛んでくる。

 

 俺の身体へ触れる寸前。

 弾丸はわずかに曲がった。

 

 液状化した身体の隙間を抜け、その奥にある赤黒い核だけを貫く。

 

 

 女王の身体が大きく震えた。

 やがて何本もの腕が力を失い、巨大な身体が床へ崩れ落ちる。

 

 繁殖室を満たしていた甘い匂いも、急速に消えていった。

 

 

「……終わったか」

 

 俺が女王から身体を剥がすと、澪が駆け寄ってくる。

 

「怪我は?」

「いっぱいしてる」

 

「元気そうだな」

「もう少し心配してくれてもよくない?」

 

 そのときだった。

 倒れた女王の腹の奥から、小さな音がした。

 

 

「……IkaGうsEm」

 

 俺と澪は、同時に女王の死体を見る。

 

「今の……聞こえたよな?」

「ああ」

 

 膨れた腹の内側で、何かが動いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。