催眠おじさんのダンジョン無双~「俺は最強」と思い込んだら、本当に最強になってしまった~   作:ぽんたぬ

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第8話 ダンジョン装備の罠

 

「神代レイジの薬、本当に死者蘇生の秘薬かもしれないらしいぞ」

 

 俺の名前は吉岡直人。

 三十二歳、探索者歴八か月のEランクだ。

 

 今日も幼馴染の遠山と松木を連れ、大宮第一迷宮の浅い区画を探索していた。

 

 

「正式な鑑定結果は、まだ出ていないだろ」

 

 痩せた顔の遠山が先頭を歩き、その後ろでは大柄な松木が傷だらけの盾を構えている。

 

 俺たちは小学生の頃からの付き合いだった。

 三人とも仕事が長続きせず、探索者になる前の夜に「今度こそ一緒に成り上がろう」と約束した仲である。

 

「神級アイテムなら、国が何百億でも出すだろ。俺たちも一つくらい当たりを拾いたいよな」

「直人は先月結婚したばかりだしな。奥さんに楽をさせてやれ」

 

 松木に肩を叩かれ、俺は苦笑する。

 

 

「まずは、お前の盾を買い替える。次に遠山の正式鑑定器だ」

「自分の装備が一番ボロいだろ」

 

「俺は逃げ足で何とかする。残った金で、沙耶に指輪を買うよ。結婚指輪、安物で我慢させてるからな」

「また自分を後回しにするのか、お前は相変わらず良い奴だなー」

 

 遠山は呆れていたが、口元は少し笑っていた。

 俺たちが小型のジャンクゴーレムを倒すと、その背後に小さな宝箱が現れた。

 

 

「おい見ろ、武器が入ってるぞ!」

 

 中にあったのは、銀色に輝くナイフだった。

 刀身には錆も刃こぼれもなく、地上製の安物とは明らかに違う。

 

「もしかしてミスリル製じゃないか?」

「柄を見ろ。スロットが二つある」

 

 二つのはめ込み口には、赤と青の《効果石》が収まっていた。

 

 ダンジョン産の武器や防具には《スロット》を持つ物があり、効果石によって炎を出す、重さを変えるなどの特殊な力が加わる。

 

 俺は腰の簡易鑑定器を向けた。

 

【効果石:《必中》】

【効果石:《回帰》】

 

「やったぞ、二つとも当たりだ!」

 

 《必中》は放った攻撃を対象へ当て、《回帰》は使用した装備を持ち主のもとへ戻す。投げれば必ず命中し、その後は自動で戻ってくる。最高の投擲武器に思えた。

 

 

「これを売れば、三人分の装備を揃えられるぞ」

「その前に、ちょっと試してみようぜ! 初めての当たり武器だしさ!」

 

 興奮してそう言うと、遠山がナイフを持つ俺の腕をつかんだ。

 

「待てよ。簡易鑑定では、効果石同士の干渉までは分からないだろ」

「だけどさ、正式鑑定は高いじゃん。一回投げれてみれば済むだろ」

「沙耶さんが待ってるんだぞ。危険な真似はするな」

 

 言われなくても分かっている。

 

 それでも、傷だらけの盾を持つ松木と、安い簡易鑑定器を何度も修理している遠山を見たら、この機会を逃したくなかった。

 

 都合よく通路の奥から、ジャンクゴーレムが現れる。

 

 

「一回だけだ。危なければ、すぐやめる」

 

 俺は狙いもつけず、ナイフを投げた。

 銀色の刃は途中で軌道を変え、逃げようとしたゴブリンの額へ突き刺さる。

 

「見たか! 本当に《必中》だ!」

 

 ナイフがゴブリンの額から抜け、俺へ戻ってくる。

 

 笑いながら右手を伸ばした。

 

 だが、刃は手の横を通過し、俺の腹へ深く突き刺さった。

 

「……え?」

 

 《回帰》によって、次の到達先は持ち主である俺へ変わった。そこへ《必中》が働いたのだ。

 

 

「抜くな!」

 

 遠山が叫んだ時には、俺は恐怖に負けてナイフを引き抜き、遠くへ投げ捨てていた。

 

 刃が空中で向きを変える。

 

「直人、伏せろ!」

 

 松木が俺の前へ飛び出し、傷だらけの盾を構えた。

 

 だがナイフは盾を避けず、その中心を貫いた。

 銀色の刃は松木の胸へ突き刺さり、それでも止まらない。幼馴染の身体を押し込むように進み、背後にいた俺の腹へ再び届いた。

 

「松木……?」

「いてぇ……いてぇよぉ……」

 

 松木は血を吐きながら、地面をのたうち回った。

 

 

「大丈夫か二人とも!? 待ってろ、俺が今から助けを呼んでくる!!」

「行かないでくれ遠山! 松木がもう……!」

 

 倒れた俺の手の先で、松木の身体がどんどんと動かなくなっていく。

 

(ちくしょう、どうしてこんなことに……)

 

「ぎゃああっ!!」

「遠山!?」

 

 しまった。

 もしや一人でモンスターに遭遇しちまったのか!?

 

 

 だが失血した俺では助けに行くこともできない。

 遠山の叫びが小さくなっていくのを聞きながら、俺の意識は徐々に遠のいていった。

 

 

 ◆

 

「さぁて、初購入のオリパは何が入ってるかな~」

 

 俺は洞窟の床へ座り、《装備オリジナルパック》の段ボールを開けた。

 

 箱には《訳あり品・効果競合品》《返品不可》と書かれている。使い道のない装備を安く詰め合わせた、探索者向けの福袋らしい。

 

 

「おっ、これは高そうだぞ!」

 

 傷ついた胸当てや片方だけの手袋をどかすと、銀色のナイフが出てきた。

 

 澪が簡易鑑定器を向ける。

 

【効果石:《必中》】

【効果石:《回帰》】

【同種装備による死亡事故あり】

 

 澪は事故情報を読み、わずかに眉を寄せた。

 

「完全な外れだな」

「当たりじゃないか。投げても絶対に失くさないぞ」

「愚か者め。アマチュアならともかく、プロの探索者は無暗に手を出さず、効果石がどんな意味を持つか慎重に考えるもんだぞ」

 

 澪はこれまで新人が犯した事故事例をアレコレと語った。

 どうやら講習でキチンと説明があったそうだが、俺は半分くらい寝てたんだよな。

 

 そう返すと「そういう奴から死んでいくんだ。車の免許取ってすぐ事故る奴と同じだぞ」と怒られてしまった。

 

 

「……というかだな。深く考えずとも、これを投げたらお前へ刺さりに戻ってくると分かるだろうが」

「なら大丈夫だ。俺なら刺さっても死なないし」

 

 ナイフを持って立ち上がると、試し投げをするため洞窟の外へ向かった。

 

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