後世の歴史家いわく、俺は面従腹背の成り上がり復讐者らしい 作:トマトルテ
『アーサーは二人の功績を称え、クラウス・ミュラー軍医、及び、エリザ・ミュラー小隊長を大隊長へと昇進させる』
出典:“ラインの歴史~ウッドベン家貯蔵~”より
さて、読者の皆様はお気づきだろうか?
この一文において、クラウスの
何より、エリザの苗字と同じになっていることに。
クラウス・ミュラー。クラウス・ミュラーだ。大切な一文なので、二回書かせてもらった。歴史上に残る、確固とした資料の中で、クラウス・ミュラーである。この発見が、いかに大きな衝撃となって、私達の脳を大きく揺さぶったことか。それをここで書くには、余白が少なすぎるために語らないが、分かって欲しいことは一つだ。クラウスとエリザが、同じ苗字をこの時点で名乗っていたという、確定的で明らかな歴史的事実だ。
さて、前述したようにこの記録は、見つかった当初から現在まで、様々な議論を呼んでいる。
大まかに意見を分けると、三つの派閥が生まれる。
一つ目は私も属する、この時点でクラウスとエリザは婚姻を結んでいた派。
二つ目は、クラウスは純粋に自分の身分をごまかすために、偽の
そして、三つ目は内縁の妻状態ではあったが、まだ婚姻までは結んでいなかった派だ。
一つ目の根拠は実に単純だ。
同じ姓を名乗るのは、古来より婚姻した者同士での習わしだ。
家に入る。そして、家とは姓そのものである。
男女が同じ姓を名乗っているのならば、それはもう結婚しているだろう。
二つ目の根拠はもはや願望に近い。
クラウスが身分をごまかす必要があったのは、確かに事実だ。
彼は公式的には、死人のはずなのだ。
目立つ苗字をいつまでも使っているわけにはいかない。
しかしだ。私が願望に近いと言っているのには理由がある。
偽名を使うにしても、わざわざエリザと同じ姓にしている点を説明できていないのだ。
クラウスにはイーダ・グナウゼンという、第二の母とも呼べる人物がいる。
クラウス・グナウゼンを名乗ってもよかったのだ。
だが、クラウスは敢えてエリザと同じミュラーを名乗った。
これはもう、そういうことだろう。
クラウスからエリザへ、何らかの矢印が向いていないと言うのは、もはや無理がある。
最後に三つ目だが、実はこの派閥は私達の分派である。
クラウスとエリザが特別な関係だったという意見は一致しているのだが、細部が違う。
二人はくっつくか、くっつかないかの、絶妙な状態だったと言って譲らないのだ。
私としては、そこにこだわる理由がさっぱり分からないが、彼らの言い分としては、『この時期には子供がいないので、完全な婚姻状態ではない』と言うのだ。
この意見は昔ながらの『結婚=家を継ぐ子を作る』の価値観に沿ったものである。
エリザが不妊であったのならば、この意見も出なかっただろうが、前回までの章で説明してある通りに、二人の子孫はしっかりと現代まで残っている。
不妊だったという説はあり得ない。
そのため、この派閥は婚姻はまだだったと主張しているのだ。
しかし、これもまた見落としのある意見だと言わざるを得ない。
戦乙女のエリザ。エリザ・ミュラー小隊長。
この肩書を見れば分かるだろう。
彼女は軍人だ。
しかも、後述するライン会戦での活躍もある。
子供を作っている暇などないのだ。
妊娠をしながら戦う女傑も、歴史上には確かにいるが、いかなる時代でも妊婦を戦場に送り出すことを良しとする民族はいなかった。
狂気の沙汰だからこそ、妊娠した状態で戦う女性が歴史に記されるのである。
要するにだ。二人にまだ子供がいないことが、婚姻の否定につながることはない。
戦士ゆえに、子供を作るのを待っただけだと考えられる。
さて、これにて二人の関係の証明は、完了したと言ってもいいだろう。
しかし、二人の関係がグッと近づいたライン時代ではあるが、平穏な生活を送れていたわけではない。
いつの世も、争いが平穏な生活を奪い去る。
帝国暦682年。二人が16歳になった冬。
隣国、フランソワ王国が大軍を率いて、ラインへと侵攻を進めてきたのだ。
後の世で言う第五次ライン会戦である。
フランソワ王国は10万人の軍勢を率いて、ラインへと向かったと伝わっている。
対する、ラインの兵力は1万人。
守る相手を攻めるには、5倍の兵力が要ると言うが、フランソワ王国はそれを軽くクリアしていた。
アーサーは相手の兵力を知るや否や、即座にヒンデンブルク辺境伯に援軍の要請を行った。
ヒンデンブルク辺境伯もそれに了承したのだが、どういうわけか援軍が辿り着くのに、倍以上の時間がかかったとされる。
これは、一説では皇帝ヨーゼフが、中央集権化のために辺境伯の力も弱めようと画策していたせいという話もある。
自分の国の危機でも、己の理想を追う。
そんな行動が『愚かなるヨーゼフ』という仇名の由来になったのかもしれない。
とにかく、援軍が来ない間、アーサー率いるラインは十倍もの兵力を相手にすることになった。
ライン城は周りが川に囲まれた、非常に防衛に優れた城である。
城に続く限られた橋を落としてしまえば、大軍であっても簡単に攻め落とすことは出来ない。
しかし、だからといってライン城を無視して、進めば前後で挟み撃ちに遭う重要拠点。
そのため、フランソワ王国は大軍でもって、ラインの奪取に打って出たのである。
また、このライン会戦のフランソワ王国の総大将は、シャルル・ドゥ・ゼグリーズ。
フランソワ王国きっての名将と謳われた、老将である。
シャルルは十倍の大軍であっても、決してアーサーを侮らなかった。
決して、力押しはせずにじっくりと、包囲して真綿で首を締めるようにじわじわと追い詰めた。
シャルルはアーサーの情け深い性格を、良く知っていたと言われている。
アーサーは、捕虜に対して丁重な扱いをする。
自分の領地の人間は、例え農民であっても見捨てることを良しとしない。
シャルルはアーサーの高潔さを利用する、卑劣な手を用いたと伝わる。
『フランソワ王国は周囲の村を襲い、略奪を行う。食料や物資を自軍へと持ち帰る蟻のような様。しかし、村人はワザと殺さずに、ただライン城へと追い立てた。また、傷ついた自軍の兵士の多くをワザと孤立させて、見捨てることでラインへと降伏させて、捕虜にさせた。そして、捕虜の交換にも一切応じないという、非道な態度を取ってみせた』
“ラインの歴史~ウッドベン家貯蔵~”に書かれている、当時の様子だ。
一体これが何を意味するのか?
それは、ライン城の兵糧攻めだ。
シャルルはアーサーが村人や捕虜を見捨てないことを利用し、意図的にライン城の
人数が増えれば、当然食料の消費は増える。
ライン城には有事に備えて、多くの食料が蓄えてあったが、それも兵士の数を元に計算されたものだ。
村人、そして捕虜が加われば、計算は狂う。
それも時間が経てば経つ程に、城の人員の数は増えていく。
さらに、村人が城に逃げて来る以上は、村人を見捨てられないアーサーは迎え入れるために橋を落とすことも出来ない。
そして、捕虜の数が増えていけばいくほどに、監視の目も増やさざるを得なくなる。
怪我人がほとんどだとは言っても、内側から蜂起されれば、その被害は悲惨なものになるのだから。
焦り、不安、苛立ち。
そうした負の感情を、シャルルはライン城の中へと溜め込んでいくように仕向けた。
責めている側だというのに、まるで自分の領地を守るかのような戦いぶり。
老将らしい、実にいやらしい手だ。
これには、さしものアーサーも援軍の到着を待つ他に、打つ手がない。
そう、誰もが考えていた時。
逆転のカードを提示したのが、クラウスであった。
「きょ、今日は寒い中集まってくれて、ありがとう」
冷え切った城内にウッドベン伯爵の声が響く。
シンとした空気。
それはきっと、冬の寒さのせいだけではないだろう。
戦況が悪化していく焦燥感。
体の怪我は治せるが、心を蝕む不安はどんな魔法でも治せない。
目立った被害はない。しかし、好転する変化もない。
援軍の到着も遅れている。
しかし、援軍が来たとしても、果たして10万を超える大軍に打ち勝てるか。
議論は続く。だが、打開策は出てこない。
「ま、まずは現状の確認を行おうか。我がラインはフランソワの大群に包囲されている。その数は10万人……そうだね、ディエナ?」
「はい。捕虜の方から、お聞きした内容ですので、誇張が含まれている可能性もありますが……目に見える光景からでも、圧倒的多数だということは間違いがないでしょう」
ディエナさんが真剣な顔で、ウッドベン伯爵の言葉を肯定する。
この人、メイドなのにこういうことも出来るんだな……いや、普段のウッドベン伯爵が、頼りにならないからだけかもしれないが。
「そして、フランソワは城下や近辺の村を襲って、村人をワザとこの城へと追い立てているようです……言い方が悪いですが、こちらの足手まといを増やすためかと」
「む、村人達は大丈夫なのかね……? マロン」
「怪我人はいますが、どれも軽傷程度ですね。ただ、食料や物資は綺麗さっぱりに略奪……持ち帰って相手側の食料にされているようみたいです。それだけしても、命までは取らない……蟻のように完璧に統制されていて、逆に怖いぐらいですよ。流石は、『フランソワにシャルル有り』と謳われる名将だけはありますね」
「そ、そうかね。命があるのはひとまず安心だ……だが、軍人ではない民を襲うとは……! ゆ、許せない……ッ」
俺と一緒に怪我人の手当てをしているマロン先輩が答える。
因みに、俺はお口にチャックをしている。
ここに来て、まだ1年のペーペーの俺が、生意気にも口を開くのも何だかなかと思っているのだ。
言いたいことはあるのだが。
「それに加えて、シャルルの奴め……! 傷ついた味方を、ワザと見捨ててもいるそうじゃないか! 騎士道精神の欠片もない!」
「……村人を殺さないのと同じ理由でしょう。こちらの抱える人数を増やして、消耗を大きくするのが、狙いかと」
許せないと憤慨するウッドベン伯爵と、その反対に冷静な様子のディエナさん。
「アーサー様。ご無礼を承知で進言致します。これ以上、捕虜を増やすのはやめるべきかと」
「……もしくは、橋を落として最終防衛体制に移って、これ以上
「そ、それは……」
ディエナさんが捕虜を取るのは、もう止めろと告げる。
そして、マロン先輩が暗に『民を見捨てろ』と言う。
ウッドベン伯爵の顔が青く染まる。
「え、援軍が到着するまで、物資はもちそうにないかね……? 十分に溜め込んでいたと思うんだが」
「本来の予定であれば、持つでしょう。ですが、ヒンデンブルク辺境伯からの援軍が遅れている現状では……楽観視は出来ません」
「それに、相手はこれからも、村人や捕虜を送り込んでくるはずですよ、伯爵。この調子だと、消費量は時間が経てば経つ程に、増加していきます」
残酷な現実。
それを叩きつけられて、ウッドベン伯爵の顔は更に青くなる。
「ライン守るための、ご決断をお願いいたします。アーサー様」
ディエナさんの鋭い声が、冷たい部屋に響き渡る。
それに対して、ウッドベン伯爵は震える口を開き──
「──わ、私は、何があってもラインを守る」
──観念したように呟く。
「そして、ラインとは城のことではない。この地に住む、全ての者がラインだ」
否、腹をくくった声だ。
「お、愚かなことを言っているのは、馬鹿な私でも分かる……だ、だが、こういった苦境の時こそ、私は騎士道精神を貫かねばと……そう思うのだよ」
若干どもりながら。
それでも、反論は許さないとばかりの強い言葉。
なるほど……こういった所が、慕われているんだな。
「君達には苦労をかける……だが、どうか私を信じて欲しい。必ず援軍は来るし、私達はフランソワの卑劣漢共にも決して負けはしない。もうしばらく、私と共に耐えてくれ」
頭を下げるウッドベン伯爵。
おおよそ、城主がやるべき行為ではない。
だが、それでこそウッドベン伯爵なのだろう。
「頭を上げてください、アーサー様。品格に欠けます」
「そ、そんな言い方をするかね……?」
「あなたはラインを、蛮族の手から守り抜いた、英雄となるのですから」
ディエナさんが、厳しいようで絶対の忠誠を示す声をかける。
「軍人は上の命令に従うだけの存在ですからね」
マロン先輩が苦笑する。
他の隊長達も笑って頷く。
「い、いや、そこまで卑屈な言い方はよしてくれたまえ……! 地位や身分は関係ない、君達も何か、この状況を打開する考えがあるのなら、何でもいい。言ってくれたまえ」
少し慌てたような物言い。
しかし、最初の凍り切った空気を溶かす、暖かさがそこにはあった。
これがアイスブレイクって奴か……じゃあ、俺もなんか言ってみるか。
「取り敢えず、フランソワ側と交渉して捕虜交換でもしませんか? そしたら、捕虜が減って味方が増えると思うんですけど」
「あー……いい意見なんだがね、クラウス。フランソワは……シャルルの奴は書状を送っても、ご丁寧な言葉で無駄に装飾した、『断る』という言葉しか返して来ないんだよ」
「あー、そうなんですね」
どうやら、俺程度が考えることは既に実行されていたらしい。
まあ、軍事知識が三国志を読んだことがある程度の、俺の意見じゃあ、役に立たないか。
でも、このまま止めると、また空気が冷たくなりそうだし、最後まで言いきるか。
「──じゃあ、もう、その手紙を捕虜の皆さんに見せました?」
全員の顔の上に疑問符が浮かぶ。
どういうことだと言う視線が、俺に集まる。
「……なぜだね?」
「いや、自分達は完全に見捨てられたって証拠を見せたら、こっちに寝返りませんかね?」
「えー……」
裏切らせて戦力にしようと、続けると更に困惑される。
おかしいな。シェーネ辺りなら、秒で寝返ってくるんだが。
「そ、そう簡単に、祖国は捨てないだろう……」
「違いますよ、ウッドベン伯爵。先に彼らを捨てたのは、フランソワの方です」
「た、確かにそうだがね……それでも裏切るとは……」
「それは伯爵が誰よりも高潔だからこそ、そう思うだけです。普通の人間は、ましてや、戦に駆り出されて、見捨てられただけの一般兵は、祖国を恨みます」
自軍内部であれば、軍規や周りの目が合って裏切るなんかできない。
だが、今の彼らは捕虜だ。しかも、総大将から見捨てられた証拠付き。
丁重に扱ってくれる、ウッドベン伯爵の方に寝返っても何もおかしくない。
というか、普通の人間代表の俺なら、間違いなく寝返る。
「それに、選ぶのは彼らです。伯爵はその書状を捕虜の方々に見せて、彼らを労いつつ、見捨てられたという事実を、説明すればいいだけです」
「ま、まあ、彼ら自身が選ぶのは仕方ない……かな?」
俺達は選択肢を与えてやるだけ。
祖国に忠義を尽くすか、こちらに寝返るか。
答えは二つに一つだと思い込ませる。
普通に逃げるという、第三の選択肢を覆い隠して。
「しかし、敵に言われて信じるかな?」
マロン先輩がもっともなことを言う。
確かに、その通りである。
敵の言うことに説得力はない。
書状だって偽装したものだと言われれば、それまでだ。
「信じて貰えないのなら、捕虜をタダで全員解放して、あちらに返しましょう」
「は?」
だから、信じてもらえない場合は、仲間にするのを諦めて、タダで開放してあちらに返す。
まあ、流石に武器は取り上げるが。
「タ、タダでというのは……こちらに利益が」
「働かざる者、食うべからず。良いですか、伯爵? 無駄飯食らいは、居るだけでマイナスです。こちらとしては、捨て去るだけでプラスになるんです」
「し、しかし、それではせっかく減らした相手の戦力が、また元に……」
「失礼ですが、伯爵。1万対10万と1万1千対9万9千では誤差というものです。相手側もそれが分かっているからこそ、自軍の兵士を簡単に捨てるのです。それに、あちらにも食糧問題が付きまとっているはずです。口減らしとして捨てられた方々をお返しいたしましょう」
時間をかけて攻められているが、普通に考えれば遠征している相手の方が、食糧問題はキツイはずだ。
多分、フランソワ軍内の口減らしも兼ねて、こっちに捕虜として送り込んで来ているんだろうな。
実に無駄のない作戦だ。
あー、三国志の曹操VS袁紹みたいに、食糧庫を丸ごと燃やせればいいんだが……まあ、丸ごとは高望みか。
「この策であれば、捕虜の方が傷つくことはありません。こちらについて頂ければ、それでよし。ダメならば、帰って貰ってこちらの負担を減らす。誰も傷つかない優しい策だと思いますが」
因みに、俺の願いとしては素直に全員あちら側に帰って欲しい。
中にスパイが紛れ込んでいる可能性もあるのだから、サッサと消えて欲しいのだ。
「うーん……み、みんなは、クラウスの意見をどう思う?」
「……よろしいのではないでしょうか。こちらには不利益はありません。むしろ、捕虜の警備に兵士を割く必要が無くなりますので」
「僕もそれで良いと思います。クラウス君の意見なら、確かに誰も傷つかないはず」
ディエナさんとマロン先輩が、ウッドベン伯爵の問いかけに頷く。
どうやら、俺の献策は受け入れられたようだ。
三国志で軍師が、良く献策でマウントを取り合っていたのが分かる気持ちよさだ。
自分の意見が受け入れられるって、楽しいな。
「よ、よし。じゃあ、それで行こう……さて、捕虜の扱いは決まったが、後は肝心の相手の大軍をどうするかだね。クラウス、また何かあるかい?」
「何かと言われましても……9万の差を覆すよりは、素直に援軍を待つのが吉かと」
「まあ、そうだね……辺境伯からの援軍を待とうか。ヒンデンブルクは、昔馴染みの漢だ。我々を見捨てることはしない」
「ですので──」
普通に戦っても、勝ち目なんてない。
逆に、下手に野戦に持ち込んだら、それこそ相手の思うつぼだろう。
なので、出来るとしたら。
「──とにかく、嫌がらせをして相手の士気を下げてやりましょう」
「い、嫌がらせかね? き、君がそのように言うのは珍しいね……」
「これでも、大恩あるラインの地を汚されることに対して、怒っていますので」
嫌がらせだ。
ハッキリ言って、俺は伯爵程優しくはないのでフランソワに対してキレている。
先にしかけて来たのはそっちだ?
やられた分は、きっちり返させてもらうぞ。
「ぐ、具体的には?」
「俺とエリザでゲリラ戦を行って、地味なダメージを与えて、すぐに逃げるのを繰り返します。
「騎士道的には……いや、この際仕方ないか」
エリザがワンパンして逃げる。
そして、俺はエリザを回復させて、無限アタックをしかける。
蠅のようにウザったらしい攻撃で、嫌がらせをするのだ。
「そして、もう一つ……」
「もう一つ?」
俺は言うべきかどうか、少し悩む。
ウッドベン伯爵的には、アウトかもしれないが、そもそも相手が非戦闘員の村から食料を略奪しているからいけないのだ。
相手が悪事を働かなければ、そもそもこの策は発動しない。
だから、俺達は悪じゃない。
そう、理論武装をして、再び口を開く。
「ご存じですか? ウッドベン伯爵。蟻を駆除する時は──」
どうせ相手に奪われる食料なら構わない。
当たった人はご愁傷様。
当たらなくても、次からは食料を食べるのが怖くなるだろう。
そう。相手が略奪していく食料に、ランダムに混ぜ込ませてもらうのだ。
「──巣に毒餌を持ち帰らせるのが、一番効くことを」
少し配合量を誤った
アリの巣コロリ。もしくはブラックキャップ。
次回は15日投稿。
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