きれいな森には、精霊たちと、四匹のユニコーンが暮らしていました。
あるとき、森に人間がやってきました……
5分ぐらいでサクッと読める童話形式の一話完結短編です。
遠い遠い昔。
精霊たちの暮らす、きれいな森がありました。
キラキラ光る無邪気で小さな精霊たちは、毎日森の恵みを受けて、遊んで暮らしていました。
森の中心には、四匹のユニコーンがいました。
七色の大きな角を持つ、とってもかしこくてやさしいユニコーンがいました。
四匹のユニコーンは、精霊たちと笑って、楽しく暮らしていました。
ある日のことでした。
きれいな森の外から、一人の人間がやってきました。
人間はきれいな森を踏み荒らし、精霊たちを殴っていじめはじめました。
「ユニコーンさん、たすけて!」
精霊たちは四匹のユニコーンに助けを求めました。
四匹のユニコーンは、森の中で暴れる人間のもとへ向かいました。
「やめてください! 精霊たちをいじめないで!」
一匹のユニコーンが叫ぶと、人間はいじわるな笑顔を浮かべて四匹のユニコーンを見ました。
「ユニコーンの角を寄こせ。そうしたら、おとなしく立ち去ってやるよ」
四匹のユニコーンは驚きました。
ユニコーンにとって、その角は折れれば一生生えない、誇りの証だったからです。
七色の角は鋭く大きく、きらきらと光っていました。
緑色の毛並みを持つ一匹のユニコーンが、人間の前に出て角を向けました。
きゅうっと歯を食いしばって、目の前の人間を角でねらい、体をかがめました。
心臓を一突きにするつもりでした。
「君が角を差し出してくれるんだね! ありがとう!」
緑色のユニコーンの後ろから、青い毛並みのユニコーンが叫びました。
「お願い、森を守るために力を貸して。あなたの角が必要なの」
赤い毛並みのユニコーンが、泣きそうな声で言いました。
「君の勇気は永遠に称えられる! 僕たちが見ているよ!」
黄色い毛並みのユニコーンが、感動の涙を流して言いました。
緑色のユニコーンは、信じられないという顔で背後の三匹のユニコーンを見ました。
三匹のユニコーンは、ゆっくりと後ずさり、おそろしい人間と緑色のユニコーンから離れました。
緑色のユニコーンは、ぎゅうっと目をつむって、目の前の石に自分の角を叩きつけました。
七色の角は、ぽっきりと折れて、ころころと人間の前に転がりました。
「物分かりがいいじゃねえか。これはもらっていくぞ」
人間は七色の角を拾い上げて、緑色のユニコーンの後ろを一目見て、がっはっはと笑って去っていきました。
うなだれる緑色のユニコーンの周りに、恐る恐る三匹のユニコーンは歩み寄りました。
ぼろぼろと涙を流して、七色の角で緑色のユニコーンを撫でました。
「ありがとう。本当にありがとう……おかげで、森はすくわれたよ」
一匹のユニコーンが涙を流して言いました。
そこに精霊たちが集まってきました。
「もう、人間は去った。勇気と献身をたたえて、像を作ろう!」
一匹のユニコーンが言うと、精霊たちは笑って像を作り始めました。
あっという間に、緑色のユニコーンの像ができました。
角がなく、それでも笑顔を浮かべている緑色のユニコーンの像が、森でいちばんきれいな広場に飾られました。
その周りには、森でいちばんきれいな花がたくさん飾られました。
像の前に三匹のユニコーンは跪いて、ぼろぼろと涙を流しました。
その後ろに、緑色のユニコーンは立っていました。
「角がなくても、君は私たちの誇りだよ。本当にありがとう!」
青色のユニコーンは、緑色のユニコーンに深く礼をしました。
「今の君の方が、ずっと美しいよ」
赤色のユニコーンは、にっこりと笑って緑色のユニコーンを見ました。
「この像を見るたびに、君の偉大な犠牲を思い出すよ。英雄よ」
黄色のユニコーンは、涙を流して緑色のユニコーンへ言いました。
「ありがとう! ありがとう!」
精霊たちも無邪気に歌って、森の英雄をたたえました。
三匹のユニコーンは、七色の角をきらきら光らせて、森の英雄をたたえました。
緑色のユニコーンは、角のない頭をゆっくりと下げて、角のない像を見ていました。
ある日のことです。
きれいな森に、たくさんの人間がやってきました。
人間たちは手にトゲトゲした武器をもって、精霊たちをなぎはらい、森の中心へ攻め込みました。
遊んでいた角のある三匹のユニコーンを見つけると、人間たちはその首に縄をかけて、ひきずり倒しました。
「なぁ、おれの言った通りだろ! ユニコーンの角が三つも手に入った!」
人間の中には、かつて森に来た、おそろしい人間もいました。
首に縄をかけられた三匹のユニコーンは、角の無い緑色のユニコーンを見ました。
緑色のユニコーンの首に、縄はありませんでした。
どの人間も、緑色のユニコーンを見てはいませんでした。
「お願いだ! 英雄よ、もう一度助けてくれ!」
青色のユニコーンは、角を振り回して緑色のユニコーンへ言葉を投げかけました。
「僕らは仲間だろう! 像を作ってあげたじゃないか!」
赤色のユニコーンは、悲しみと怒りをこめて緑色のユニコーンをにらみました。
「嘘だろ、どうして僕たちが! ねえ、早く助けてよ! 君は英雄なんだから!」
黄色のユニコーンが、涙を流す目で緑色のユニコーンを見ました。
角のない緑色のユニコーンは、静かに一歩、後ずさりました。
三匹のユニコーンは、縄を首にかけられ、森の外まで引きずられていきました。
人間たちは、去っていきました。
緑色のユニコーンの周りに、怖くて隠れていた精霊たちが集まり始めました。
「……彼らは、人間を怒らせてしまい、連れていかれてしまったんだ」
緑色のユニコーンは、ぼろぼろと涙を流して言いました。
「彼らのおかげで、もう二度と人間は来ないだろう」
緑色のユニコーンは、周りの精霊を見ました。
精霊たちは、ほっとした顔をしていました。
「身を挺して森を守った三匹をたたえ、二度と繰り返さないよう像を作ろう」
緑色のユニコーンが言うと、精霊たちは笑って像を作り始めました。
あっという間に、三匹のユニコーンの像ができました。
地面に引きずり倒され、絶望の表情を浮かべる三匹のユニコーンの像が、森でいちばんきれいな広場に飾られました。
その周りには、森でいちばんきれいな花がたくさん飾られました。
像の前に一匹の緑色のユニコーンが立っていました。
「本当にありがとう……おかげで、森はすくわれたよ」
角のないユニコーンは、笑顔で言いました。
こうしてきれいな森には平和が訪れました。
キラキラ光る無邪気で小さな精霊たちは、毎日森の恵みを受けて、遊んで暮らしました。
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
読んだ後にモヤッとしていただければ嬉しいです。
こんな感じのモヤッとする話を普段から書いている者です。
好みに合うと思っていただければ、他の話も読んでいただけると、とても嬉しいです。