前回よりはちょっと長いけど今回も短いです。次回続いたら多少長くなるかも。
「後継者はインドラとする」
偉大なる忍宗の開祖の下知に門弟達はおお、と歓声を上げた。
若く美しい聡明な指導者の誕生。
門弟の誰よりも強く、才に溢れる優秀なインドラ。
しかし、驕ることなく努力を惜しまず、他者を気遣う優しさを併せ持つ新たなる六道の主を皆は歓迎した。
「兄さん、おめでとう!」
アシュラも当然の事と思いながらも改めてこの吉報に喜色満面でインドラを言祝いだ。
幼少から落ちこぼれと言われた弟を見捨てず、激励し、慈しんでくれた優しき兄の吉事にアシュラは心から歓喜した。
未だ未熟な我が身なれど、忍宗を担う兄を支えるのだ、と。
これからも共にありたい、否、変わらず共にあるのだ、と。
アシュラは疑う事なく兄が当主になる未来を信じていた。
「……申し訳ありません、父上」
周囲が笑顔を浮かべてはしゃぐ中で、当のインドラだけが違った。
平時の涼やかな無表情で父のハゴロモを静かに見据えたと思えば、深く頭を下げて謝罪を口にする。
「どうした、インドラ」
「…六道の主の直々の命を断る非礼をお許し下さい。父上の期待を無に帰す不甲斐ない息子の不敬をどうかお許し下さい」
「兄さん…?」
「なに…?」
「私は努力してきました。けれど、私よりも忍宗を担うに相応しい者を知っています。父上がより望む形をした忍宗を継ぐに値する者を。私ではなくアシュラにこそ譲位すべきです」
「な…兄さん!?何を言ってるんですッ!?」
畏まった口調のインドラのまさかの言葉にアシュラは思わず声を上げた。
続いて門弟達の間に困惑と驚愕で騒めきが広がっていく。
「どういう事だ…?」
「なぜインドラ様はアシュラ様を」
「一体なにが」
「どう考えても長男のインドラ様が継ぐべきなのに」
「アシュラ様に不満はないがどうして…」
「普通にここはインドラ様では?」
「意味が分からない」
門弟達のどの声にも一貫して言ってる事は同じだった。
何故、天才であり兄であるインドラが辞退してまで、落ちこぼれの弟のアシュラを推すのか。
その真意が読めず、インドラの行動が理解できない。
「…インドラよ、何故その考えに至った」
流石は忍宗の当主。
この場で戸惑う者達と異なりハゴロモは瞬時に事態を飲み込み、まずはインドラの本心を聞き出そうと問いただす事を優先した。
波紋を描く紫苑の両眼と額の赤目が真っ直ぐインドラを貫く。
「……父上、私は人間です。どれ程父上の教えを学び、学び続けようとも人間である以上は必ず過ちを犯す時がくるでしょう。けれど、だからと言って正しくあろうと正しさに拘泥しても意味がない。正しさだけでは人は従わず、人心は離れ、富は齎されない。だからこそ人を率いる者は、諫言に耳を傾けた上で熟慮し、判断しなければなりません。最善でなくとも限りなく最良であるように。最高でなくとも最悪から遠い堅実であるように…。だから私も忍宗の未来を見据える立場になるなら、そう在らねばなりません」
「ふむ、確かにその通りだな」
そこまで分かっていてなぜ?と、ハゴロモは視線で先を促す。
アシュラも門弟達も一言一句聞き逃さぬように、二人の問答を無言で聞き入る。
「私がいくら諫言を是としても、私が相手では父上とアシュラ以外の皆は諫言は元より進言も難しいでしょう」
「なぜそう思う」
「この目と我が不徳故に」
そう言うや否、インドラは黒目から赤目——写輪眼に切り替える。
まるで心の奥深くまで見通すような真紅の写輪眼でハゴロモを見つめ返した。
「…私が望む望まないにかかわらず、この目は人を威圧し、気圧させます。私にそのつもりがなくともこの目を見れば、人は委縮して諫言などできなくなりましょう。私が忍宗の重要な選択を、判決を下す時。もし誤っていると誰か一人でも気づいてもこの目を恐れて意見等できない可能性が高い。それでは駄目なのです。忍宗が未来を見据え、他者を信じ、共に歩み、成長を重ね、素晴らしい可能性へと導くものならば…私は父上の後継者足り得ない」
忍宗は希望を作るものと云うならば、意思ある声を殺す者が忍宗を背負える訳がない。
なぜなら希望とは必ずそこに人の意思が介在して初めて機能するのだから。
インドラはそう告げる。
「私が違えるだけならまだいい。ですが、私の所為で皆がその過ちを被るのは耐えられません。そんな最悪の可能性を否定できるだけの徳や器があるなら別ですが…私にはない。そんな私が皆を導けないし、導くべきではない」
回避できる過ちも正せないなら、最早それは導き手ではなく人々を破滅させる災厄でしかない。
「ならば潔く相応しい者にその座を譲るべきなのです」
そう締め括るとインドラはハゴロモの反応を待った。
ここまで言えば流石のハゴロモも納得してくれるだろうと思いながら。
「言いたい事は分かった。お前の懸念も。だが、儂はそれでもお前が継いでいいと思う」
「…何故ですか」
「お前が人の為に努力し、尊重し、愛する心が、諫言を受け入れられるだけの器があるからだ」
「それならアシュラも持ってます。私でなくてはいけない理由がありません」
インドラの鋭い指摘にハゴロモは一瞬黙り込む。
ここぞとばかりにインドラは畳み掛けるように言葉を発する。
「弱き者、強き者の両方の視点を持つ優しきアシュラなら人の心に寄り添いながらも一方に偏る事なく指導者として適任でしょう。アシュラなら私の懸念の心配もない。アシュラなら忍宗を更に栄えさせられます」
「インドラ、」
「父上、どうか賢明なご判断をお願い致します」
深々と頭を下げながらインドラはそう告げた。
「……」
インドラの言葉はどれも否定できる要素がなかった。
写輪眼の瞳力の懸念もそうだが、アシュラが相応しいというのも考慮の末に出した答えだと分かる。
ハゴロモはそれを否定しない。
それでもハゴロモがインドラを推したのは、今までのインドラの功績によるものだ。インドラは人々の助けになる事を第一に考えていた。
果樹の育成を。果実、野菜、香草、魚、養蜂で得た蜂蜜等を使った保存食等を。軟膏や氷室を。植物油、石鹸、養蚕を。藍染めという防虫効果のある染色技術や蚊帳、蚊取り線香等を幾つも研究し開発した。それ等を家族、門弟、里人達に教え広めた。何が駄目で何が良いのかを教えたりもした。
豊かな生活を人々が送れるように尽くしてきた。アシュラを慈しみ、ハゴロモを気遣う。門弟に体術や術が上手く出来ない者がいれば軽く手解きし、里人に知識を授けたりと心を砕いた。
インドラはその涼やかな美貌故に度々内面が冷たいように思われる。
だが、実際には優しさに溢れた子なのだ。
和を尊び、知を求め邁進する、愛を与える賢しき者。
それがハゴロモから見たインドラだった。
そのインドラが言う。後継者をアシュラに、と。
「お願いします、父上。どうかアシュラを」
これ程までに皆に慕われるインドラに徳しかないと言うのに。
あれ程までに人々の為に努力する者に指導者の器がない訳がない。
それでもインドラは己には資格がない、アシュラに家督を譲れと言う。
どれ程の苦悩と覚悟を持ってインドラが直訴しているかハゴロモには分からない。分かるのはインドラが自分が跡目を継ぐより、忍宗の未来を思って具申している事だけ。…それだけ分かれば十分だった。
「相分かった」
「…!」
「後継者はインドラではなく、アシュラとする」
「ありがとうございます、父上」
頭を上げたインドラは安堵に頬を綻ばせ、柔和な笑みを形作った。
正直、これでいいのか、と思っていないと言えば嘘になる。しかし、インドラのその心底嬉しげな笑みにハゴロモはこれでよかったのだ、と素直にそう思えた。
「ちょ、ちょっと待ってください!?父上、兄さん!!」
「なんだアシュラ」
「オレに忍宗なんて継げませんっ!兄さんみたいに優秀じゃないし、強くないし、頭だってそんなによくない!オレには無理です!!」
ハゴロモの決議に再び騒めく門弟達を尻目にアシュラが慌てた様子で父に詰め寄るが、対するハゴロモは呆れたように口を開いた。
「だが、インドラが辞退した以上、忍宗を継ぐのはお前だぞ、アシュラ」
「だから、オレには無理だって…!」
「そんな事ない。私も父上もいる。皆もまたお前を支えるだろう」
「兄さん!?」
「私が頼りないばかりに重責を背負わせてしまってすまない。せめてお前が望む限りお前の側にいると誓おう。だから皆を導いてくれ」
「兄さんでも無理ならオレに務まる訳ないじゃないかっ!?」
「そんな事はない。お前なら大丈夫だ」
「なんでそう言い切れるんだ!?」
「お前は決して諦めずに努力し続け、皆からの信頼も得た。誰にでもできる事じゃない。それに私は前からお前ならやればできると知っていた」
「…!」
「だから頼んだぞ、アシュラ」
黒真珠のように艶やかな、黒曜石より鋭い光を帯びる黒目が歓喜で一層煌めく様にアシュラはたじろいだ。
否定したいのにインドラの声音には確信を持ったような揺るぎなさがあった。
なぜインドラがアシュラをそこまで評価してくれるのか分からない。インドラは昔からアシュラに優しい兄ではあったけど、弟可愛さに後継者の座を譲るような人ではないのも知っている。
「何も案ずる事はないよ」
「兄さん、」
「お前の人格ならこれからより多くの仲間を、友を、味方を得るだろう。だから安心するといい」
「でもっ、」
「父上もお前が継ぐのを認めている。それが答えだ」
「っ…」
アシュラは爪が食い込む程に拳を握りしめた。
インドラはアシュラを褒め称えるがアシュラだってインドラが誰よりも素晴らしい人だと思っている。
誰もがアシュラを落ちこぼれだと陰で言う中でインドラだけが一度も言わなかった。唯一、落ちこぼれだと扱わなかった。才のないアシュラをお前なら大丈夫だ、と信じてくれた。アシュラが落ちこぼれと呼ばれる以前と同じ、変わらぬ優しいインドラにどれ程の安らぎを覚え、救われたかアシュラにしか分からないだろう。
アシュラの脳裏に次々と幼き頃の日々が、今までのインドラとの思い出が浮かんでは消えていく。
春に日頃の感謝に花を贈り桜の下で兄と花を愛でた。
夏で異国の星座の神話や星々の話を語ってくれた夜。
秋の紅葉した森を共に歩いて夜には月を共に眺めた。
冬は雪降る寒い夜には寄り添いながら眠りについた。
インドラはアシュラが怪我をすれば誰よりも心配して手当し、アシュラが好きな食物が膳に上がれば快く分け与えた。眠れぬ夜は面白い寝物語を聞かせてくれた時もあった。インドラがアシュラに触れる手はいつも優しかった。
アシュラにとって一番の味方で誰よりも支えてくれた人がインドラだった。
父よりも身近な家族で。亡き母より甘やかで優しい。
友達から聞く兄姉弟妹よりも心穏やかで聡明で美しい。
インドラが兄で誇らしく自慢だった。
今も尊敬する信頼を寄せる大好きな兄だ。
だからこそ、こんなにも優れたインドラよりアシュラが当主が務まるなど到底思えなかった。
「アシュラ…?」
いつまでも俯き答えないアシュラにインドラが心配そうに声をかける。
そろりと顔を上げてインドラを見た。
あれ程までに期待に煌めく黒目が鳴りを潜め、不安げに揺れている。
「(そんな顔を、させたくないのに…)」
さっきの期待に輝く眼差しの高揚した笑顔も初めて見たが、とても素晴らしく美しいモノだったのに。
それが消えたのが惜しいなと、自分の所為なのに場違いにもそう思ってしまった。
「兄さんはそれでいいのか…?」
「…?何がだ?」
「…ッ、だって、あんなに皆の為に頑張って!忍宗の教えだって全部覚えて!なのに、オレに後継者を譲ってッ!兄さんはそれで本当に良いのか!!?」
アシュラの悲鳴のような叫びにインドラは何処かキョトンとした顔をした。
「良いも悪いもないよ。私はその席に座るに相応しい者が他にいるから座るつもりはない。それだけだ」
「なっ…」
「父上の思想と理想。忍宗の説く在り方がアシュラの方が適任だった。アシュラこそ父の望むこれからの忍宗に必要だった。だから良いんだよ」
インドラの答えにアシュラは言葉に出来なかった。
この人はこんなにも情が深いのに合理的に判断してる。
インドラは弟のアシュラが後継者になるのを悔しい、傷付いた、報われなかったと思っていないとのだと悟る。そして本気でアシュラが後継者に適任だと思い、その考えを間違いだと思っていないのだろう事も。
「アシュラ、私はむしろ嬉しいんだ。お前がこんなにも立派になってくれた事に」
「えっ」
「私の背を追っていたお前が仲間を得てここまで来て、私の背を追い越してくれた。…ありがとう、お前は私の誇りだよ」
インドラは嬉しそうに笑った。
心からの満面の笑みだと分かる軽やかで明るい笑みだった。
アシュラは理解した。
インドラ曰く、成長して兄を追い越したアシュラ。
それを誰よりも祝福してるのは、他ならぬインドラ自身なのだ、と。
「…兄さん」
「ん?」
「兄さんはオレが成長して、嬉しい?オレは本当に…後継者になって大丈夫だ、と思う?」
胸の内から湧き出す不安からそう問えば、インドラは不思議そうに首を傾げた。
そして何を当たり前な事を、とでも言うように微笑んだ。
「勿論」
…嗚呼、自分は漸く此処まで来たのだと、アシュラはふいに思った。
別にアシュラは後継者になりたいと思った事はない。
だって天才で兄のインドラがいたから。
落ちこぼれの自分が選ばれる訳ないと不満や諦めよりも先に納得してたから。それでも父と兄、何より自分に恥じないように頑張って歩んで来た。そんな自分にも共に歩む友が、仲間が出来た。嬉しかった。
本当に後継者なんて興味がなかったのだ。
自分にはもう友も仲間も居るから。父も兄も居るから。
でも。
『お前ならやればできると知っていた』
それでも。
『私の背を追い越してくれた』
そうだとしても。
『お前は私の誇りだよ』
そんな事を言われたら、嬉しくない訳がない。
「(後継者に、なるしかないじゃないか…ッ)」
目の奥がジンと熱い。
視界が涙で滲むのに溢れる雫を止められない。
「兄さんッ、オレ…ッ!頑張るから!だからッ、これからも傍にいてください!!」
インドラは小さく口元を緩めた。
「最初からそう言ってるだろう。…おめでとう、アシュラ」
再び白光で柔く煌めいたインドラの黒目が、写輪眼よりもずっと輝いて見えた。
何故かその輝きが奇跡や幸福に似ている、と思った。
ああ、でも。きっと、それは間違いじゃない。
だってこんなにも自分は今、満たされてる。
***
「ゔゔぅ〜、…グスッ…ヒグッ……」
「ああ、もう。そんなに泣かないでくれ」
あの後、門弟の皆に祝いの言葉を贈られながらもアシュラは歓喜の涙を止められずにいた。
「ほら、明晩には父上が次期当主決定のお祝いをしてくださるんだから。良い加減泣き止め」
それにインドラは困ったように眉を下げ、懐から手拭いを取り出すと優しい手つきでアシュラの頬と目元を拭った。
「グスッ……す、すみません…」
「いや、謝らなくていい」
何か飲む物を持ってこようか?と聞きながらアシュラの涙を拭うインドラにアシュラは安らぎを感じた。
嗚呼、例え立場が変わっても兄は兄のままなのだと。
「ヒック…だ、大丈夫、です」
「そうか。…ああ、そうだ。アシュラ、これを」
「はい…?」
インドラが懐から取り出した長方形の薄い木箱。
それを差し出されるも意味が分からず、インドラを見れば優しい微笑を浮かべている。
「それはお祝いだ。次期当主おめでとう、アシュラ」
「お、お祝い!?」
「一応用意したはいいがお前が気に入るか分からなくてな…良かったら開けてみてくれ」
「は、はいッ!」
兄さんがオレの為に!?と驚くもそういえばこういう所は昔からマメな人だったな、と思い出す。
誕生日や他にも祝い事によく贈り物を貰っていたものだ。
それでもまさか次期当主のお祝いの品まで用意するとは思わなかったが。
恐る恐る震える手で木箱を開けて中を覗く。
「わぁ…」
そこにあったのは、細長い6角柱の柱面が錐面へと移行し、錐面が集束して先端を形成した一つの紫水晶を絹糸を編んた細紐に通された首飾り。
光に照らされたそれはその澄んだ輝きを反射し、艶々とした絹糸には汚れはなく、紫水晶の高貴さえ感じる深味のある色合いは光の加減で薄らと虹色の光が入っている。
「(綺麗だな…)」
何処で手に入れたのか分からないが素晴らしい品だった。
「……あまり良い物を用意出来ず、申し訳なかった。もし、気に入らなかったら他の物を用意して交換を、」
「えっ!?いえいえいえ、とても素敵です!交換だなんて、そんなっ!嬉しいです、ありがとうございます!!」
首飾りを黙って見つめるアシュラに何を思ったのか、そんな事を何処か悲しげな無表情で告げるインドラに慌てて弁解すればほっとしたような顔をした。
「そう言ってくれるのは有難いが、無理に気を遣わなくていいんだぞ?」
「無理だなんて…本当に嬉しいです!兄さんがオレの為に…宝物します!」
そう言うと、インドラはおかしそうにふ、と笑った。
「お前は昔からそう言うな」
「え…?」
「私が贈り物をする度に宝物にすると言って喜んでくれた」
「そ、そうですか?」
「うっかり駄目になったり、なくしてはよく泣いていたな」
「えええっ!?」
「別に怒ってないのにごめんなさいと大泣きするから流石に困った」
「わー!?やめて下さい兄さん!?恥ずかしい!!」
顔を真っ赤にして懇願するアシュラにインドラはおかしそうにクスクス笑った。
「水晶には魔除けの意味もある。もし、壊れてもそれはお前の身代わりになり役目を果たしたか、もう必要がないという意味だと思えばいい」
「え、でも、折角兄さんがくれたのに…」
「気にする必要はないよ。それに形あるモノはいずれ壊れる。それが早いか遅いかの違いでしかない」
インドラはこうやって時々本質をつくような事を言う。
同じ親から生まれたのに、インドラは遠くを見据えたような言葉を紡いでは何処か違う所を見ているような目をする。
アシュラにはそれが何故か堪らなく悲しく寂しかった。
この人だけが世界に取り残されてたった一人で立っているような孤独や孤高を感じるから。
それを感じる度に幼少期のアシュラは兄の気を引こうとした。
貴方にはオレがいる、オレを見て、と思いながら。
「なんなら壊れてもまた同じのか別のを贈ろう。だから、泣かないでくれよ?」
「な、泣きませんよ!?もー、兄さんったら!」
忍宗を継ぐのは自分でいいのか、時折遠くに感じるインドラに不安を覚えるが兄が側に居てくれるなら大丈夫。
兄と共に支え合い忍宗を担う未来に思いを馳せて、その未来の輝きを信じてアシュラは笑った。
***
「兄さんが、行方不明……?」
アシュラが忍宗を継いでから十年後。
雪が降る日の突然の悲報に呆然とするしかなかった。
「兄さん……」
庭に植えた椿の花が雪の重さでボトリと落ちた。
***
「いったた…え、ここ何処…?アシュラー!?父上ー!?ん?あ、アレって……」
なお、時空間忍術(禁術指定)の研究で何処かに飛ばされたインドラは兄の悲報にSAN値がピンチの弟とは別の意味でピンチだった。
おもに身の安全というか、衣食住的な意味で。
アシュラ「兄さん大好き一緒に忍宗を頑張りましょう!」
インドラ「次期当主を押し付ける酷い兄でごめんよ……」
十年後アシュラ「兄さん何処!?兄さん兄さん兄さん兄さん」
十年後インドラ「ここ何処!?皆は!?あ、アレはまさか…」
書いていて後半が予想とは違う方向に暴走して作者も吃驚。次があるなら万華鏡を開眼したインドラ視点とその他諸々書こうと思いますが、十年後の続きも早いとこ書きたい所です。
理由?さっさとアシュラを兄と再会させないとインドラ成り主が過去に戻った頃のアシュラがヤンデ…SAN値が心配なので。まぁ、アシュラも愛の一族の千手の祖だから愛は比較的重…深いのは仕方ないけど、アシュラには仲間も家族もいるから大丈夫でしょう!多分!(アシュラの転生体のナルトのサスケへの執着から目を逸らしつつ