新作ロボゲー『VANGUARD FRAME』で傭兵生活を始めます 作:ののじん
ガンッ! ガガガガガン!
黒煙の柱が空を汚していくただなかで、複数の重機関砲の連射音が大地に鳴り響いていく。
放たれた弾丸の雨は二足歩行戦車を瞬く間に撃破していく。
的から外れた大口径弾が大地や岩肌を穿っていた。
『ブレイク! ブレイクッ!』
『距離をとれ! キャラバン9、キャラバン13はキャラバン2の援護に回れ!』
そんな砲火から逃げるべく回避行動をとりながら近くの工場に向かってメインブースターをふかしていく。
再び銃声が鳴るとキャラバン5の機体に弾丸が着弾する。
『クソッ! 右腕を持っていかれた! このVF乗りども、なかなかやる!』
『キャラバン5。そっちは!? 持ちこたえられそうか!?』
『こいつはかなりきついぜ! タンクウォーカー部隊がすでに壊滅した!』
戦力の低下が想定より早いことにキャラバン1は焦りを覚える。
『キャラバン3! 救援要請の状況は!?』
『民間傭兵のVF2機がこちらの救援に向かっているとのこと』
敵のVFは5機。連携もとれており侮れない。
技量も向こうの方が上だろう。どうにも誘導されているように思える。
救援に駆けつけてくれる2機のVFを入れても戦況を覆せるとは思えなかった。
キャラバン1にできることと言えば、今しがた逃げ込んだVF工場にこもり持ちこたえるしかなかった。
一方、銀根商会所属のキャラバン部隊を追い詰めていたプレイヤーにとっては計算通りだった。
『うまくいったな』
『ああ。確認を取っておこう』
リーダー格のプレイヤーは味方に通信をつなげた。
『ジャギット、そっちは準備できてるな?』
『ばっちりだ。三機とも工場の反対側に待機している』
『じゃあ、挟撃と行きますか。楽なミッションだな全く』
『気を引き締めろモングレル、非合法なミッションだ、リスクはある』
『そうだぜ、UFが相手とは言え数が多い。油断すると修理費だけで赤字だからな』
『あいよ』
先頭を進む機体がセンサー反応を拾った。
工場の奥、搬入口を塞ぐように三機のVFが姿を現す。
背後では、先ほどまで追撃していた五機の反応も近づいてくる。
『前方に機影! 三機』
『やられた、やはり誘導されていたか』
『隊長、囲まれました』
「クソッ、ここまでか」
敵機がこちらに銃口を向ける。
撃たれる。そう覚悟した瞬間。
その機体が横に吹き飛んだ。
横からの襲撃にプレイヤー集団の動きが止まる。
『て、敵だッ!』
プレイヤーが気づいたときにはすでに遅く、未確認のVFは突っ込んできていた。
砲撃を受けて体勢を崩した軽量機体のボディに太い杭が突き刺さる。
オレンジ色と黒色の二色が特徴的な機体だ。
右手に高周波ブレードを持ち、左手にパイルバンカー。
近接に特化した機体構成。
右肩にはシャードキャノン、左肩には12連装マルチミサイル。
『気をつけろ! パイルバンカーだ、一撃でHP持ってかれ――ッ!』
突入してきた機体に目を奪われていた間に後方より襲撃を受ける。
高速連射された弾丸がメインブースターを一瞬で損壊させる。
『しまった! もう一機!』
現れたのは白色と黒色の機体だった。
対応すべく振り返ると白い機体は、右手のサブマシンガンと左手のリボルバーでプレイヤーたちの機体のメインブースターを狙い撃ちして損壊状態にしていく。
『こいつ機動力を削ぐつもりかッ!』
プレイヤーたちの移動速度が一気に落ちる。
機動力を失った機体はオレンジの機体にとってただの的だった。
オレンジの機体が追撃し、2機目を倒していた。
『キャラバン部隊あの二機に続け!』
キャラバン部隊も応戦しだすが、そのころにはプレイヤー部隊も体勢を立て直しつつあった。
『オレンジは後回しだ白い方を先に潰せ』
一番最初に動いたのはジャギットだった。ロックオンを
しかし白い機体はほとんどダメージを受けていなかった。
白い機体はクイックスラストで左右に避けつつ距離を詰めていく。
特段スピードが出ているわけではないのにジャギットの照準を避けている。
『こっちに、来るんじゃねぇっ!』
白い機体の右肩についていた軽ランチャーから砲弾が発射される。
ジャギットは砲撃をよけることが出来なかった。
砲撃される瞬間に本来鳴るはずのアラートが鳴らなかったからだ。
だが一撃だけで
ジャギットはすぐに回避行動に移るが、白い機体の放つ弾丸は回避先を予測するかのように、そのほとんどが機体に命中していく。
『クソッ! どんなTCS積んでやがる。もう機体がもたねぇ。まずっ――!』
そして、とどめとばかりに左手のリボルバーから放たれた弾丸が命中してジャギットの機体は大破した。
白い機体は動きを止めない。
4機目を捕捉すると距離を詰めていく。
逃げ道を塞ぐようにサブマシンガンで牽制しプレイヤー部隊から引き離し孤立させた。
プレイヤー機体は必死に応戦するが一機で相手をするには分が悪すぎた。
すれ違い間際リボルバーの弾丸が頭部を穿つ。
頭部が損壊し、メインカメラをやられたプレイヤー機体は視界不良に陥る。
『だ、誰かこいつを――!』
『どうやって狙ってやがる! ピンポイントでロックするTCSなんて聞いたことがねぇぞ!』
『よそ見をするな! 前を見ろッ!』
『ッ!』
前へ向き直ったときにはすでに遅かった。
オレンジの機体がすでに目前まで迫っていた。
高周波ブレードをたたきつけられた衝撃で機体が硬直する。そこにパイルバンカーの追撃が決まり大ダメージを受ける。
『モングレル!』
プレイヤー機体の仲間が横から銃撃するもすでに離脱していた。
『こいつ素早い。何なんだこいつらは』
離脱間際に放たれた12発のミサイルが銃を向けたプレイヤー機体を追尾する。
そこにキャラバンたちの銃撃も加わるが、プレイヤー機体は何とか回避した。
ミサイルやライフルで反撃するもオレンジの機体は紙一重で回避していく。
オレンジの機体が再びモングレルへと接近する。
近接攻撃を繰り出すときの直線的な動きに限って言えば空中戦が得意な高機動特化種族ハルヴィよりも速い。
『化け物どもめ』
そう言い残し、モングレルの機体は杭で貫かれ大破した。
『リーダー逃げよう』
『ダメだ。メインブースターやられている。逃げきれない!』
『腹をくくれグラッチ。ここでこいつらをやらないと生きては帰れない』
『できるだけ距離を取りながら攻撃しろ! 近距離は奴の間合いだ』
『グラッチ、フリッカー、UFどもの火砲がシャレにならん。当たるなよ!?』
リーダー格の男が二人に声をかけると、同時に動き始める。
UF部隊の火砲を回避しながら手持ちの武器を使い三方向から攻撃していく。
オレンジの機体は回避行動を取らざるをえなくなり、距離が離れていく。
オレンジの機体と一定距離を保ちながら追い詰めていくのを見て、リーダー格の男は落とせると確信した。
その瞬間、グラッチの背中に大きな衝撃が走る。
4機目を処理し終えた白い機体が、メインブースターをふかして距離を詰めながら、グラッチに軽ランチャーとサブマシンガンで攻撃していた。
リーダー格の男とフリッカーの視線がグラッチの方に向く。
そしてそれは致命的な隙だった。
白い機体が動くのと同時にオレンジの機体もフリッカーへ距離を詰めた。
『しまっ――!』
避けようとするもののオレンジの機体が切りつける方が速かった。
大型の刀身が機体の動きを止め致命的な隙を生む。
パイルバンカーがフリッカーの胴体をとらえる。
残った機体耐久値をシャードキャノンで削り切った。
大破した機体を横目に、オレンジの機体はリーダー格の方へマルチミサイルを放ちながら詰め寄る。
リーダー格の機体はクイックスラストで回避を試みるもすでに翼をもがれている。避けきれなかった。
だが撃たれてばかりではなかった。負けじとミサイルを撃ちながらヘビーマシンガンで反撃していく。
オレンジの機体が大きく離れて遮蔽へ身を隠す。
射線を通すために移動しようとした瞬間だった。後方から爆発音がしたかと思うと、機体耐久値が大きく減った。続いてサブマシンガンの攻撃を受ける。
反射的に振り向くと7機目を大破させた白い機体が近距離まで距離を詰めていた。
サブマシンガンの銃口が高速で跳ねる。ばらばらと地面に
リーダー格の機体も慌てて反撃するも、とっさの照準でロックオンできず弾は当たらなかった。
白い機体の攻撃だけが一方的に通る。そして銃撃が止まる。
「弾切れか」
ようやくリーダー格の照準が白い機体をとらえた瞬間。
――戦慄した。
白い機体は左手のマグナムをすでに構えていた。
慌ててクイックスラストで横に飛ぶ。
ロックオンから逃れた確信がリーダー格にはあった。しかし――
発射された銃弾は頭部を正確に射抜いた。
頭部は損壊し視界にノイズが走る。
視界不良になる中、リーダー格がかろうじて見たのは近距離で構えられた銃口だった。
ドパァアンッ!
大きな銃声が一つ。
リーダー格の機体はすべての機能を停止した。
あたりは静寂に包まれる。
キャラバン1は驚愕していた。
たった2機で8機を落として見せたその技量に。
『キャラバン3、
『確認しました。
『機体名
『機体名
白い機体から通信が入る。
『こちらワンダー、救援要請受けてきた、大丈夫か?』
『ああ、お陰で助かった。感謝する』
フールの機体が歩み寄ってくる。遅れてタワーも来た。
『いやー、間に合ってよかったぜ。主導権とれてよかったな。ずっと俺のターン、ってな』
女性の声が通信に入る。
『それ言いたいだけだろ? それに、途中危なかったんじゃないか』
ディトゥアの言葉にワンダーが突っ込む。
『いや、お前を信頼してたんだよ。それにお前だって人のこと言えねぇだろ。最後の場面で頭狙いに行くとかアホかよ普通に胴体でよかっただろ』
『いいんだよ、そっちの方が面白いし、狙い通り当たったんだから』
『ったく、……おっと、失敬失敬キャラバンの皆さん、護衛は必要?』
『あ、ああ、お願いできるだろうか』
『じゃ、追加報酬も期待しとくぜ?』
「マスター、周囲の索敵完了。敵性反応はありませんでした」
フールの機体にAIの声が響く。
「オッケー了解」
システムが非戦闘モードに移行する。
ワンダー、
画面の奥ではキャラバン部隊が工場の外に向かって歩き出していた。
『おら、どうした? 行くぞ』
友人の
ああと返事をしてワンダーはディトゥアと一緒にキャラバン部隊の後ろについていった。