新作ロボゲー『ヴァンガードフレーム』で傭兵生活を始めます   作:ののじん

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12話 シムアリーナ

 エリンドをカウンター席に座らせる。

 

「マスター、この酔っ払いに何か、酔いがさめそうなものを」

 

「かしこまりました」

 

 マスターはトマトジュースをエリンドの前に置く。

 

「あぁ、ありがとう……」

 

 エリンドはトマトジュースをぐびぐびと飲んでいきあっという間に飲み干した。

 

「酒飲んでつぶれるなんて、何かあったのか?」

 

「傭兵会社をクビになったんです」

 

「クビ?」

 

「救援要請は今年に入って4度目だったんです。会社での立場はいわゆる”みそっかす”、戦力として数に入れてもらえなかったんです」

 

 逃げ回ってばかりだとな……

 

「……君たちに貰った戦闘記録の映像を見たんだけど、二つの意味でショックだった。凄かったよ! 敵は18機、こちらは2機。圧倒的な数の不利、普通はぜったい戦わない戦力差だ。そんなこと臆しもせず戦って見せた! ディトゥアさんが切り込んでいって、ワンダーさんが上から奇襲して隊長機を素早く仕留める! 僕は夢中になって何度も見た、君たちが殲滅していく姿を。感動すると同時に自分が情けなくなってしまいました……」

 

「お前も、あのぐらいできるようになるさ」

 

「あんな芸当……僕には」

 

「できるさ、お前はVF乗りなんだぞ?」

 

「無理ですよ……怖くて足がすくむんです」

 

「お前にとって何が一番怖いんだ?」

 

「死ぬことです……」

 

「どうして?」

 

「どうしてって……死んだら何もかも終わりじゃないですか。それに……」

 

 俺は黙って言葉を促す。

 

「僕のことを助けてくれたあの人に申し訳ない。僕が死んでしまったら、あの人が命を懸けたことが無意味になってしまう……」

 

 命を懸けて助けてくれた、か。そこにどれほどの思いが込められているかは分からない。

 

 現実の俺だって死ぬのは怖い。特に理由もなく怖い。

 

 だがエリンドにはこの世界の住人であるワンダーとして応えようと思う。

 

「その気持ちは大事だと思う。だけどその恐怖を超える勇気を見つけたなら、お前は強くなる」

 

「強くですか?」

 

「人間性が変わるわけじゃない。恐怖が完全に消えることもないと思う。だが死力を尽くせるようになる。勇気の形は何でもいい。守りたいもの、生への渇望、希望になるもの。必死になれば見えるものもある」

 

「お前そういうロール好きだよな」

 

 デトが横から口をはさむ。

 

「うっせ、茶化すなよ」

 

 俺はかっこいい生き方をしたいだけだ。

 

「私は好きよ、その考え」

 

 スカーレットさんは味方してくれるようだ。

 

「すぐに勇気なんて見つからないと思うけど、傭兵である限り技術は鍛えておいた方がいい。心が技術に追いついたとき、お前は一流傭兵になるはずだ。まあ俺もまだ一流とは言えないけどな」

 

「駆け出しも駆け出しだしな、俺たち」

 

「俺たちと一緒に鍛えないか?」

 

「いいんですか?」

 

 かかった。俺は画面越しににやりと笑う。

 

「ああ、実戦で鍛えるつもりだ。ただ前には出なくていい。ちょうど一人後方で戦ってくれる奴を探してたんだ。後ろから落ち着いて攻撃するんだ、やばくなったら下がってもいい。どうだ? やるか?」

 

「……やってみたいです」

 

「じゃあ決まりだ。授業料は高い、って言いたいところだが、今回はなくていい。報酬も成功すれば出す、山分けだ」

 

「本当ですか! ありがとうございます」

 

「逃げるなよ?」

 

 デトが釘をさす。

 

「え? あ、はい……」

 

「よろしい」

 

「ふふ、中々やるわね」

 

「あーいや、あははぁ……」

 

 笑ってごまかしたがスカーレットさんには俺が雇用費を払わず戦力に加えたことはお見通しのようだ。

 

「デト、そろそろ行こうか」

 

「おん? ああそうだな、VFの性能確かめないとな」

 

「じゃあスカーレットさん、またよろしくお願いします」

 

「ええ、頑張ってちょうだい」

 

 俺たちはフライングシープを後にする。

 

 向かうはシミュレーターがあるという施設だ。

 

「スカーレットさん美人だったなぁ。……ぐへへ」

 

「ぐへへってお前な……」

 

 スカーレット・ディオスか、覚えておこう。

 

 かなりのやり手だろう。カジノ取り仕切ってるとか言ってたし。

 

 敵に回したらおっかなさそうだ。

 

 スカーレットさんに限った話ではないが、わざわざ敵を作ることもないだろう。仲良くしておいて損はない。

 

「それで? シミュレーターって、具体的に何ができるんだ?」

 

「ん? 知らないけど?」

 

「もっとちゃんと調べておこうよ」

 

「なんだよ教えてやったのに」

 

「あーはいはい、あんがと」

 

「もっと感謝しろぉい! プンプン、プンプンプン」

 

 デトが文字通りプンプン言いながら先を歩く。

 

 道中でタクシーをひろうと目的地にはすぐに着いた。

 

 ダークグレーの建物で横にも縦にもかなりデカい施設だ。

 

 壁面には各企業のロゴが貼られている。壁に組み込まれた大きなモニターがVFの戦闘映像を流している。

 

 入口の上部にSIM ARENA(シム・アリーナ)と書かれた発光サインがデカデカと飾られている。

 

「デッケーな」

 

 デトが思わずといった感じにつぶやいているが、気持ちは分かる。

 

「入るぞ」

 

「あ、ああ」

 

 自動扉を抜けロビーに入ると正面に受付があるのだが……一人の女性受付の前に男性傭兵が何人も並んでいた。

 

 ほかの受付は空いているところを見るにアイドル受付なのだろう。

 

「って、おいデトてめぇはこっちだ!」

 

「えー? はいはい……」

 

 しれっとその列に並ぼうとしているデトを呼び止め、がらがらの隣の受付に向かう。

 

「こんにちは、今日はどの様な用件でしょう?」

 

「あー、ここに来たのは初めてなんだけど、VFのシミュレーションができると聞いたんだが、他に何ができるのか教えてくれないか?」

 

「初めてのご利用ですね? ではこの施設を説明いたします」

 

「ああ頼む」

 

「この施設ではVR技術を使い、VF操作訓練、機体性能テスト、決闘、チーム戦、戦闘記録の再現などができます。ほかに目玉として、大会や主催イベントもやってますね」

 

「へー大会とか面白そうじゃん。ワンダー今度やってみようぜ!」

 

 大会か、確かに面白そうだ。

 

 受付にそれぞれ詳しい説明を受ける。

 

 VF操作訓練は初歩的な動きを学べるチュートリアルの様なものらしい。

 

 機体性能テストはそのままの意味だ。持ってるパーツを組み替えて好きなだけ機体を試せる。

 

 決闘とチーム戦はPvP要素だ。ここでできるのはカジュアルマッチだけらしく、ランクマッチは実機のみのようだ。受付はここでできるが、輸送ヘリで実機をロケーションまで運んで戦うらしい。

 

 対人戦闘が大好きな人はここにこもるだろうな。

 

 カジュアルマッチはリスクはないのだが、ランクマッチは修理費、弾薬費は自己負担の上、参加料を取られるようで、勝利すればファイトマネーが入るみたいだ。

 

 大会はトーナメント戦や、チームデスマッチ、拠点制圧戦などいろいろあるみたいだ。

 

 また実機を使うものもあるらしい。

 

 種族限定や、異種族合同も選べるみたいで、優勝賞品もその都度変わるらしく、強力な武器も手に入るとか。

 

 主催イベントは各企業やプレイヤー個人が主催することもできるため、退屈はしないと思う。

 

「実機を使ったランクマッチや大会以外はVRルームでアクセスできます」

 

「そのVRルームってどこに行けばいいんだ?」

 

「3階から7階までが一般のVRルームです、ちなみに2階はラウンジ兼バー、観戦エリアなんかがありますよ」

 

「へー、面白そうだな。ワンダー、今度見に行こうぜ」

 

「ああ、でもお前なら、どちらかといえば参加側じゃないか?」

 

「まあな。でも、お前も同じっしょ?」

 

 まあ、そうかも。

 

 手に汗握るような限界ギリギリの戦いをしたいものだ。

 

 願わくは強くなりたい。

 

 説明を終えた俺たちはVRルームに移動した。

 

 大部屋にずらりとカプセル型のマシンが並んでいる、これがVRの機械なのだろう。

 

「じゃあ機体性能調べてくる、またあとでな」

 

「ああ、また」

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