新作ロボゲー『ヴァンガードフレーム』で傭兵生活を始めます   作:ののじん

15 / 15
15話 恋する乙女の朝

「由衣さま。朝食の時間です」

 

「はい今行きます」

 

 布団の片づけを家政婦に任せて部屋を出る。

 

 洗面室で顔を洗ってから茶の間に入る。

 

「来たか由衣。おはよう」

 

 初めに挨拶を交わしたのは母の巴(ともえ)だ。

 

「おはようございます。お母様」 

 

「由衣さん、おはようございます」

 

 私をさん付けで呼ぶのは父の誠一(せいいち)だ。

 

「はい、お父様もおはようございます」

 

 漆塗りの盆には麦ごはんに秋刀魚の塩焼き、あさりのお味噌汁、だし巻き卵と小鉢がきれいに並んでいる。

 

「いただきます」

 

 お味噌汁を一口飲むとホッとして落ち着く。

 

 お母様がこめかみを抑える。

 

「お母様。また二日酔いですか?」

 

「……ああ少しな」

 

 お母様はお酒が好きだから、家でも外でもよく飲んでいる。

 

 護衛の人がいるし大丈夫だと思うけど、少し心配になる。

 

 会社の幹部の方たちもお酒を飲む人が多いのでよく一緒に飲みに行くみたいだ。

 

 視線を料理に戻す。

 

 秋刀魚の頭側から身をほぐして食べ始める。脂がのっていて非常においしい。

 

「そういえば由衣」

 

 ふと思い出したようにお母様がこちらを見る。

 

「好きな男がいるらしいな」

 

「……っ!」

 

 秋刀魚の身が箸先から落ちる。

 

 どうして!? 

 

 誰にも言ったこと無いのに!

 

 行動だって誰にもばれないようにしてた……はず。

 

「なんだ、本当にいたのか」

 

 は、はめられたぁ……

 

「そうですか……由衣さんにもそういう年が来てしまいましたか」

 

 ちらりとお母様の方を見たお父様の眉尻が下がる。

 

「相手はどんな子だ?」

 

「ひ、秘密です」

 

「……そうか、今のうちに遊んでおくのは悪くない。異性との付き合い方も学ぶべきだ」

 

「でも、他の異性はその……怖いというか」

 

「雅奈(まな)から学校の雰囲気は聞いている。私にも覚えがあるが、視線が集まると煩わしいからな」

 

 中学生くらいから異性を怖く感じるようになった。

 

 成長して体つきが変わっていくにつれて、男子の視線が――痛い。

 

 中にはぐいぐい来る人もいて立ちすくんでしまうこともあった。

 

 でも困ったときは雅奈(まな)ちゃんが助けてくれたから何とかなった。

 

 だけど、一人だったらと思うと怖い。

 

 雅奈ちゃんは代々続く武術の名家の生まれで、苗字を藤代(ふじしろ)という。

 

 藤代家初代当主は武術に秀でた武士だったが主家(しゅけ)を滅ぼされ戦場で孤立した。

 

 そこを助けたのが一ノ瀬の軍勢。

 

 恩義を感じた藤代は一ノ瀬家に仕えるようになった。

 

 その後一ノ瀬家の武術指南を任されるようになり、3代目である藤代燧(ひうち)が家伝の武術を柳転流(りゅうてんりゅう)として体系化した。

 

 藤代家では今でも、一部の技術を口伝(くでん)で受け継ぐ。

 

 雅奈ちゃんも幼いころから柳転流を学んできた。

 

 同い年で、同性という事もあって中学から護衛として一緒に学校に通っている。

 

「それに、あの件もあったしな」

 

 お母様の言葉に沈黙する。

 

「由衣さんはその好きな人とどこまで関係を築けましたか?」

 

「えっと……その、まだ全然……」

 

「はぁ……由衣は誠一君に似ているからな」

 

「そうですね、僕なら一生告白などできないでしょうからね」

 

 私も想いを伝えられるか分からない。

 

 そもそも気軽に話せる間柄になれてない。

 

「何か話せるようになるといいんですけど……お母様たちはどう知り合ったのですか?」

 

「ん? ああ、部活が同じだったんだ。剣道部でな」

 

「懐かしいですね。巴さんが入部したときの男子の熱気はすごかったですからね~」

 

「ふふ、当時主将だった誠一君との初戦で負けたことが悔しくて躍起になっていたが、ついぞ勝てなかったな」

 

「由衣さん、共通の話題などあれば仲良くなれるかもしれないですね」

 

 共通の話題、かぁ。

 

 やっぱり――

 

「……ゲームが好きみたいです」

 

「ふーん、良いじゃないか。由衣もゲーム好きだろ?」

 

「はい」

 

「最初の一言を切り出すのはとても大変だと思います。そういう時は話す前に柳息(りゅうそく)を使うといいですよ」

 

 柳息は柳転流(りゅうてんりゅう)の呼吸法だ。柳転流の基本であり、根幹。

 

 静の呼吸と動の呼吸。そして瞬間的に二つをつなぐ転の呼吸。

 

「普段やっていることを繰り返すだけで大丈夫です。深呼吸より効果あると思いますよ」

 

「やってみます」

 

「それから……仲良くなったら、遊びにつれて来てください。父親として話しておきたいので」

 

「わ、わかりました」

 

「そういえば、そろそろテストなのだろう? 勉強の方はどうだ」

 

「多分、大丈夫です」

 

「まあ僕は勉強は最低限でもいいと思っています。将来やりたい職業があれば別ですが、働かなくとも一生養える自信がありますからね」

 

「社会に出て働きたいのなら私の会社に入るという選択肢もある。今のうちに考えておくことだ」

 

「はい」

 

「少し話が長引いてしまったな。ご飯も食べ終わったことだし、各々支度をしよう」

 

 部屋に戻り、制服の袖に腕を通す。

 

「スゥ……フゥゥー……」

 

 心機一転、渡会君と仲良くなるぞぉおおお。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~(作者:SIS)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

 友人の勧めで『ビルドロボオンライン』なるゲームを始めたサラリーマン小鳥遊将也(たかなししょうや)。▼ 最初はそこまで乗り気ではなかったものの、作りこまれたゲーム内容に魅了された彼は、文句を言いながらもなんだかんだとゲームを楽しみ、独自の道に突き進んでいく。▼ 彼は知らない。▼ 後に、自分が廃人ゲーマー達から正体不明、野生のレイドボス、なんて呼ばれるようにな…


総合評価:2913/評価:8.05/連載:187話/更新日時:2026年10月20日(火) 06:00 小説情報

魔法少女だけが戦う世界で、男が生き残る術とは? A.映画ボスを集めます(作者:異星人アリエン)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

『魔法少女マギアイリス』。それは人気がすこぶる高いアニメとして、名を馳せていたアニメタイトルであった。▼話としては、至極単純世界征服を目指す組織《ディスナンド》が、ミラクルパワーとかいう力を操る魔法少女によって倒される。そんな分かりやすい物語。▼だけど、そんな世界で生きることとなった身としてはたまったものではない。▼そんな世界に転生した男、須佐八雲は男である…


総合評価:14247/評価:8.05/連載:55話/更新日時:2026年10月18日(日) 12:02 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>