新作ロボゲー『VANGUARD FRAME』で傭兵生活を始めます   作:ののじん

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3話 チュートリアル戦闘

 9月26日 放課後

 

 ホームルームが終わるなり俺と悠真は駆け出していた。

 

 その日は誰よりも早く校門を出た。

 

「歩分かってるな? ゲーム内で会おうぜ!」

 

「またあとでな!」

 

 悠真と別れてからも家まで走り続けた。

 

 家にたどり着いたころにはへとへとになっていた。

 

 郵便受けを見る。

 

 俺は安堵した。不在票がまだ入ってなかったから。

 

 7万もかかってる以上、置き配は怖かった。

 

 とはいえなるべく早く遊びたかった。

 

 18時~20時の方は確実だが、俺は16時~18時の配達に賭けていた。

 

 ダウンロード時間もあるからすぐには遊べないが、その間に買い出し、夕食や風呂をすませて。

 

 家でゆっくり特典でも眺めてればあっという間だろう。

 

 インターホンが鳴ったのは20分後だった。

 

 にっこにこでサインして、重めの段ボールを抱え二階へ駆け上がる。

 

 カッターでテープを切り段ボールを開ける。

 

「うぉおおお!」

 

 現れたのはVFの世界観に合わせた軍用ハードケースだった。

 

 しっかりした作りで、ちゃっちさは感じない。

 

 ケースを開けるとVFの象徴的存在、歴戦の英雄の一機、VFBlack Warrant(ブラック・ウォラント)の横顔が描かれたアートブックが一番上に来ていた。

 

 慎重に取り出すと次はソフトが入っていた。

 

 ケースの中身はあとでゆっくり見ればいい、とりあえず先にダウンロードだ。

 

 すぐにオルプレを起動してソフトを入れる。

 

 ダウンロードは約2時間かかるみたいだ。まあただの目安だ。実際はもう少しかかるだろう。

 

 よっし! 一旦やることやってこよう。

 

 ☆

 

 お風呂に入った後、買ってきたお弁当とインスタントのお味噌汁を食べ終えた俺は特典のフィギュアを見たり設定資料集を見たりしながら時間をつぶしていた。

 

 オルプレがダウンロード終了のお知らせ音を鳴らす。

 

 すぐにコントローラーを握り、ゲームを起動した。

 

 軽い設定を終えるとタイトル画面に移る。

 

 VANGUARD FRAMEの文字の後ろで組み立て途中のVFがフレームむき出しで吊られている。

 

 装甲や四肢のユニットがつけられている最中で、最後には顔のメインアイに光がともる。

 

 その光景に少し見惚れてしまう。

 

「……よし始めるかぁ!」

 

 俺はニューゲームを押した。

 

 画面が変わると、四方をコンクリートの壁に囲まれた小汚い部屋から始まった。

 

 天井には裸電球がつるされている。

 

 5つの簡素な椅子に種族の違う5人が座らされている。

 

 手錠をかけられ麻袋を顔に被せられているところを見ると捕虜といった感じだろうか。

 

 部屋には覆面をした男が二人立っている。

 

 そこに一人の男が入ってくる。

 

 ガタイのいい男は、身なりからしていかにもボスって感じだ。

 

「こいつらか」

 

 男が喋り、部下から資料を受け取る。

 

「ここで種族を決めるのか」

 

 捕虜一人ひとりに種族と対応機体の特徴がまとめられている。

 

 ここは事前に決めていた人間種、アミニスを選んだ。

 

 男が資料に目を通した後、捕虜の一人に近づく。

 

「オルビス解放作戦の生き残りは──」

 

 男はナイフを取り出す。

 

 ナイフの腹で捕虜の顎をクイッと上げる。

 

「お前か?」

 

 そう言って、男は麻袋を強引に剥ぎ取る。

 

 そこでキャラメイクが始まった。

 

 うーん、どんな見た目にしようかな。

 

 髪色は温かみのある白にしようかな。白好きだし。

 

 髪型は無造作よりのセンターパート。

 

 年齢は近づけたいな。

 

「んー……ちょっと若すぎるか? やっぱり20歳くらいにするか」

 

 瞳の色は琥珀で、体つきは細すぎず太すぎないやや筋肉のついた感じ。

 

 あとは顔立ちを変えて……

 

「できた」

 

 名前はもちろんWander(ワンダー)

 

 ルビも入れる。

 

 決定を押すと再び男がしゃべりだす。

 

「随分逃げ回っていたようだな──ワンダー?」

 

 名前読み上げたりできるのか地味に凄いな。

 

「こいつを連れて行け」

 

 男は命令した後、次の捕虜の尋問を始めた。

 

 しばらく歩くと外が急に騒がしくなる。

 

 銃撃や砲撃の音が鳴り響く。

 

 次の瞬間壁をぶち抜く鉄の塊が目の前に現れる。

 

 それは二足歩行兵器のようだった。

 

「VF……いや、UFか?」

 

 尻もちをついた護送役にワンダーは見事な回し蹴りを放つ。

 

 気絶した男から鍵を奪い、手錠を外した。

 

 男が持っていた武器を奪うと、停止していたUFに上り、コックピットを開ける。

 

 中には目を回している覆面の男がいた。

 

 その男を放り出してUFに乗る。

 

 手慣れた手つきでスイッチやボタンを押してUFを再起動させている姿が凄くカッコイイ!

 

『生体照合開始。……照合完了。ハロー、ワンダー』

 

 機体のコンピューター(COM)が喋り出した。生体照合とかあるんか。

 

『傭兵ID照会。……照会完了。あなたの傭兵資格は失効しています。再登録してください』

 

 これで一から傭兵活動をやり直していくのか。

 

『UF再起動開始。姿勢制御、正常。推進機関、待機。戦闘システム、スタンバイ。UF再起動完了。戦闘モード、オンライン』

 

「おおぉ! いよいよ操作か!」

 

 機体が動き出すとHUDに操作方法が表示される。

 

 操作方法はシンプルだった。直感的に操作できる。

 

 メインブーストを使うと、地面を滑るように移動する。

 

「これが基本の動きだな。R2、L2で左右の攻撃なのは普通だな」

 

 いろいろボタンを押しているとUFがキックを繰り出した。

 

「近接攻撃もできるのか」

 

 軽く操作を確認した後、表示された目標地点を目指すのだが、あたりにはUFの残骸が何機かある。

 

 誰かが暴れまくっていたらしい。

 

 きっと相当な腕なのだろう。

 

 先へ向かうと一機の人型機動兵器の後ろ姿があった。

 

 その機体はUFより一回り大きい。

 

 これがVFか。

 

 そのVFはUFにとどめを刺していた。

 

 あたりには複数のUFの残骸が転がってる。このVFが暴れたのだろう。

 

 振り返ったVFがこちらを向く。

 

『なんだい、まだ生き残りがいたのかい』

 

 女性の声だった。姉御肌って感じだ。

 

 しかしこの流れは──

 

『まあいいさ、叩き潰してやるよ』

 

「そうですよねー、戦闘ですよねー」

 

 VFにちゃんと通用するんだよな? このUFは。

 

 戦闘は姉御肌の女の発砲から始まった。

 

 反射的にクイックスラストで避けることができた。

 

 こちらも反撃していく。

 

 武装は右手のライフル、左手のバズーカだけだった。

 

 肩にも装備はついているが、煙を上げて壊れているようだった。

 

 とりあえずライフルを撃つ。

 

 連射するのは得策ではなさそうだ。ターゲットロックオンだけでは当たらない。照準が敵機を捉え、赤くなった時じゃないとなかなか当たらない。二段階ロック仕様のようだ。

 

 相手も当然動き回ってるからなかなかロックできない。

 

 連射すると残弾がなくなりそうな勢いなのでやっぱり丁寧に当てに行った方がよさそうだ。

 

 バズーカも撃ってみるがこちらはロックオンが赤くても避けられる。察知されてるみたいだ。

 

 距離を取りながらいかに弾をかわし、ロックオン表示を赤にして攻撃するかが重要だ。

 

 丁寧に確実にライフルで当てていく。

 

 敵の装備は右手に持っているアサルトライフル一本と左肩についているマルチミサイルだ。

 

 特にこのマルチミサイルが厄介だ。8発のミサイルがこちらの機体を追尾してくるのだが、追尾性能が高く避けにくい。

 

 横に動いてなるべく引き付けてクイックスラストで切り返し、反対方向に避けるのだが2発食らってしまう。

 

『なかなかやるね。そこいらのUF乗りどもとは違う。この動き──VF乗りだね。間合いってやつをよく分かってる』

 

 姉御肌の人からお褒めの言葉をもらったが、バズーカの方もうまく使っていかないと先にライフルの弾が切れる。バズーカ単体だと当てられないから、このままだとまずいな。

 

 近づけば当たりはするだろう・だがこちらの方が先にやられそうだ。

 

 特にあのミサイルが厄介だ。近距離だときっと避けきれない。絶対当たる。

 

 そんなことを考えていると、またミサイルが飛んできた。

 

 横に避けるんじゃなくて、すれ違うように前に抜けた方が当たらないな。よし覚えた。

 

 だがミサイルがこれ以上飛んで来ることはなかった。肩の装備を切り離(パージ)したからだ。

 

『チッ、弾切れかい、連戦のツケが回ってきたね。でもまだまだこれからだよ!』

 

 今度はVFがこちらへ突っ込んできた。

 

 速度は向こうの方が上だ。距離を取ろうにも追いつかれる。

 

 ならばいっそ戦い方を変えるか。

 

 距離を取ろうと後ろに下がるふりをする。

 

『逃がさないよ!』

 

 掛かった!

 

 引き寄せたタイミングで前へ一気に加速する。二機の距離が一瞬で縮まった。

 

『ッ!』

 

 俺はキックを繰り出した。

 

 VFが衝撃で一瞬動きを止める。そこへバズーカを放つ。

 

『──強い。ヴァルガにしておくのが惜しいくらいだよ』

 

 ヴァルガってのはここの覆面野郎どものことだろうか? っと、それどころじゃないな。

 

 距離が縮まった以上、互いの弾がよく当たる。どちらのHPが先に尽きるか、チキンレースになりそうだ。

 

 だがこの距離ならばバズーカを当てやすい。ダメージを稼ぐチャンスでもある。

 

 ライフルを連射しながら隙を見てバズーカを撃っていく。

 

 しかし敵の攻勢も激しい。こちらの機体耐久値がゴリゴリ削られていく。

 

 なるべく躱してはいるが、正直かなりきつい。

 

 距離が少し離れるとライフルを撃ち、近づけばキックとバズーカをたたき込む。

 

 一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

『──警告。機体耐久値30%』

 

 かなり消耗してるな。

 

『クッ! このままじゃ……』

 

 姉御肌の女はきつそうにつぶやく。

 

 決めに行くしかない。

 

 一気に距離を縮めた。そして、バズーカを発射するボタンを押すと機体が一瞬動きを止め、発射体勢に移る。

 

 相手は横へクイックスラストで避けようとする。と同時に、こちらもクイックスラストを相手が避けようとした方向へ入力してバズーカの発射をキャンセルした。

 

 そして再度発射ボタンを押す。

 

『しまった──!』

 

 VFの機体耐久値がなくなったのだろう。動きを止め膝をついた。

 

「うぉおおお! やったぁあああ!」

 

 俺は最初の戦闘に見事勝利したのだった。

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