新作ロボゲー『ヴァンガードフレーム』で傭兵生活を始めます   作:ののじん

4 / 5
4話 熟練の駆出し傭兵

『クッ! このあたしが、UFに負けるなんて』

 

 いやーきつかった。何とか勝てたー。

 

『いいさ、とどめを刺しな』

 

 と、ここで選択肢が出てきた。とどめを刺すか、生かしておくかだ。

 

 とどめ刺すとどうなるんだろうか……? このNPCいなくなるのかな?

 

「いや、刺さないけどね」

 

 俺は生かす方を選んだ。

 

『……何故殺さない?』

 

『IFF識別信号、送信』

 

 COMの声が機内に流れる。ワンダーが何かしたみたいだ。

 

『……ん? IFF(敵味方識別)だと? これは……ヴァルガの識別コードじゃない……』

 

 しばらくの沈黙の後。ハァ、と彼女が息をつく。

 

『なんだい、敵じゃないのかい。戦って損しちまったよ。随分と高くついちまったね』

 

 VFの修理費がいくらかは分からないけど、これだけボロボロだし、本当に高そうだ。

 

『悪いけど、少し待ってもらうよ。うちの回収班を呼んだ。あんたも来な』

 

 回収班とやらはすぐに来た。

 

「うお! でっけー」

 

 それはVFが小さく見えるほど巨大なVTOL(垂直離着陸機)輸送機だった。

 

 輸送機から姉御肌の女性に通信が入った。

 

『珍しいですね、姐さん。随分派手にやられたみたいじゃないですか』

 

『うるさいよレンゾ! さっさと収容しな。そのUFも一緒さ』

 

 VFとUFが収容され、輸送機は再び空へと飛び立つ。

 

『ワンダーって名前なのかい。自己紹介がまだだったね。あたしの名前はRivera Doll Valente(リヴェラ・ドール・ヴァレンテ)。リヴェラと呼びな、特別だよ』

 

「リヴェラさんか。姐さんって呼んだ方がいいのかな?」

 

『ヴァルガのUFに乗ってた理由を教えとくれ』

 

 と、そこで事情を話すか話さないかの選択肢が出る。

 

「まあ話しとこうかな。何も知らないし」

 

『オルビス解放作戦に参加してたのかい。道理で強いはずさ。精鋭のVF乗りじゃないかい。その若さで大したもんさね』

 

 主人公って精鋭パイロットだったのか。

 

『でも人民軍から恨みを買うことも多かっただろう? それで身を隠してたってわけだね。だけど人民軍の一派、ヴァルガに捕まった、と』

 

 解放作戦が何なのかはまだ分からないけど、ヴァルガとかいう奴らに尋問を受けてる時にも逃げ回ってたとか言ってたな。

 

『傭兵資格失効してるって言ってたね。また登録しなおすんだろう? あたしが案内してやるさね』

 

「案内役を買って出てくれるのはありがたいな」

 

『そろそろ見えてきたよ。あれが工業都市バルディアさ──』

 

 画面が大きく引き都市を映す。

 

「うぉお、すっげぇえ! 随分とデカい都市だな」

 

 名前通りの見た目だ。都市そのものが一つの巨大工場のようにも見える。

 

 巨大な配管が街に張り巡らされている。

 

 都市の外縁にはVFやUFの格納庫や輸送区画が並んでる。

 

 奥に、これまた大きく頑丈そうなビルが建ってる。

 

 天まで高くそびえ立っており、一種のモニュメントにも見える。

 

『あの大きなビルがバルディア傭兵総合会館。みんな傭兵会館って呼んでる。あそこで傭兵登録ができる。傭兵会社のテナントもあって、あたしが所属しているSOL BRAVA(ソル・ブラーヴァ)も入ってる』

 

 プレイヤーが作れる民間傭兵会社も、あそこのテナントを借りるのかな?

 

 やがて輸送区の一角に今乗ってる輸送機が降り立つ。

 

「降りてきな」

 

 言われる通り降りるとそこには美女がいた。

 

 褐色の肌に露出の高めの黒いトップス。

 

 ロングコートを肩掛けしている。黒地に金糸があしらわれているコートの裏地は赤い。

 

 下は細身の黒いパンツにヒールのあるショートブーツ。大きなベルトに、どくろをあしらった金のバックルが鈍く光っている。

 

 腰に赤い腰布が長く垂れている。

 

 一目で熟練の傭兵だというのが伝わってくる。

 

 ダークブラウンのゆるく波打つ長い髪が彼女の魅力を引き立てている。

 

『なんだい。あんた、かわいい顔してるじゃないかい。あたし好みだよ』

 

 不細工だったらどういう反応だったのだろう。まぁ、このゲーム、不細工すぎる顔は作れなさそうだったけど。

 

「ついてきな、こっちだ。徒歩じゃ日が暮れちまうよ」

 

 リヴェラにつれられたのは輸送区にある駅。高架を高速で走る市内鉄道だった。

 

 タイミングよく列車が停車していたので3両目に乗り込んだ。

 

 やがて鉄道が動き出し、十秒もかからず最高速度に到達する。

 

 窓の外を見ても早すぎて風情もクソもなかった。

 

「なんというか、本当に移動効率を求めた鉄道だな」

 

 列車はあっという間に目的の駅まで着いた。

 

 傭兵会館は駅のすぐそばにあった。

 

 近くで見ると異様な大きさだった。

 

「ほら。ボーッとしてないで入るよ。さっさと登録しちまうよ」

 

 傭兵窓口は綺麗な印象だった。

 

 なんか役所みたいだな。

 

「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか」

 

「この坊やの傭兵登録さ」

 

「ご新規ですね」

 

「いや、再登録さ」

 

「そうですか。少々お待ちくださいませ」

 

 奥に向かって割とすぐ戻ってきた。

 

「確認が取れました。ワンダー様ですね。確かに傭兵資格が失効しています。過去の所属、雇用関係、傭兵実績、これら一切が白紙になりますが、お客様の傭兵活動を再開されますか?」

 

 選択肢が出てきた。当然”はい”を選ぶ。”いいえ”を選ぶ人はいないと思うけど。

 

「では、こちらの利用規約に同意していただきます」

 

 画面に本当に利用規約が表示された。下まで一気にスクロールして同意するにチェックすると受付が確認する。

 

「確認いたしました。では、こちらが新しいドッグタグです。データカードになっておりますので無くさないようにお気を付けください。傭兵ID、資格状態、契約履歴、所属、IFF情報等が紐づけられております」

 

 ドッグタグにデータが入ってるのか、かっこいいな。

 

「現在は無所属傭兵になっておりますが、どこかに所属したい場合はドッグタグをお使いいただき、その場で所属情報を更新することが可能でございます。また、こちらの窓口からも変更することが可能でございます」

 

 このドッグタグ、身分証明書みたいだ。

 

「ドッグタグですが依頼受注の際は、あちらにございます、専用端末にご挿入ください。依頼情報を記録し、ワンダー様の立場や報酬を保障するものでございます。端末を利用しない依頼につきましてはこれらが保証されませんのでご注意を」

 

 なるほど本当に重要なアイテムだな。

 

「傭兵サービスの一環で、パイロットの皆様には宿舎の利用が認められております。ここ、傭兵総合会館を出て西に向かいますと、傭兵向け居住区がございますので、そこをご利用くださいませ」

 

 このゲーム、自分の家とか持てるのだろうか?

 

「すべての傭兵にはUFを無償提供しております。またUFは都市外縁部にございます格納庫からご利用できます。格納庫は東西南北の四方にございます。お好きなところからご出撃くださいませ」

 

 至れり尽くせりだな。それでも儲かっていそうな感じではある。かなりのお金が動いていそうだ。

 

「以上をもちまして、傭兵登録を完了いたしました。あなたの傭兵活動に武運長久をお祈りいたします」

 

「よっし、これで傭兵だな」

 

 そこでHUDにシステムが表示される。

 

 ――フレンド機能利用可能

 

 ――ボイスチャット利用可能

 

 ――部隊設定利用可能

 

 ――傭兵依頼端末へのアクセスを許可

 

 ――ファストトラベル利用可能

 

 ――ドッグタグ情報閲覧可能

 

「あたしの案内はここまでさね。あとは熟練の駆け出しの傭兵として頑張るんだね」

 

 そう言うとリヴェラは携帯端末を取り出し、こちらに通信を送る。

 

「これがあたしの通信IDさ、あんたになら格安で雇われてやるよ」

 

 ボイスチャットをつける。

 

「リヴェラさん、ありがとう」

 

「呼び捨てでいいよ。あたしは気に入った男には目をかけておくんだ」

 

 そう言うとリヴェラは去っていった。

 

 これでチュートリアルは終了したのかな?

 

 よし、じゃあ悠真、いやディトゥアと合流するか。俺はフレンド機能を開いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。