新作ロボゲー『ヴァンガードフレーム』で傭兵生活を始めます 作:ののじん
それは、若い男の声だった。頼りないというか、ヘタレた印象が一瞬で伝わる。
敵機は8機。よく見れば、1機はVFみたいだ。エリンドを囲んでいる。
敵VFはともかく、UFに後れを取ってるのはVF乗りとしてどうなんだ?
数が多いのは分かるが、リヴェラはもっと多くを撃破していた。
倒せるだけのポテンシャルはあるはずだ。リヴェラが強いってのはもちろんあるだろうが、こいつがヘタレすぎるのだろう。
だって敵の攻撃に背中を向けて逃げているから。
だが不思議と攻撃を受けてはいなかった。回避のセンスを感じる。
第六感が強いのか、未来予知じみた動きだ。
「こちら救援に駆けつけたワンダーだ。そのまま逃げ続けてくれ。デト、アイツを囮にするぞ。バックアタックだ」
『右は任せろ』
「バズーカ合わせろ。3秒だ。3、2、1――」
ドカンッ! と敵機2機の背中が爆ぜる。そこそこのダメージが入っただろう。
『なんだぁッ!?』
『カシラ! UF2機がこっちに来てる!』
『4機向かえ。グラズお前がまとめろ。俺たちスプレーラッツに喧嘩売ったことを後悔させてやれ!』
『任せてくれカシラ! 行くぞお前ら!』
4機が素早く隊列を組みながら向かってくる。なかなかに訓練されている。
『フッ、随分舐められたものよ。我らにたった4機で挑む愚、その身をもって知るがよい。よっし、やるぞぉ! ワンダー!』
デトがノリノリだ。
「あまり油断するなよ? 統率が取れてる。こっちのHPも意識しろ。半分切ってる」
『了解。お互い距離を取ろう。囲まれたくない』
「分かった」
とはいえ、1人2機は苦戦するほどの事ではなかった。
『コ、コイツら。なかなかやるぞ。挟み込め』
挟み撃ちをかけようと動き出すが、先にフルスラストで1機に突進する。
『ッ!』
キックしてバズーカを撃つ。離れ際にミサイルを撃ち込む。お手軽高ダメージコンボだ。
距離を取りながらライフルで狙っていくと1機沈んだ。
『……あぁ、ネリス……すまな――』
残り1機も丁寧に撃っていくと、ダメージを喰らう事なく撃破できた。
……なんか凄い重い最後だったな。将来ネリスとやらに恨まれそうだ。
――良し、切り替えた。
デトの方を見ると、1機落として、2機目と戦っているみたいだった。
「あれだけ大見得切ってたのに、苦戦してんじゃん」
『うっせーし。もう倒すからいいんだよッ!』
そう答えるととどめのバズーカを撃っていた。
「VFの援護に向かうぞ」
エリンドはまだ無事だった。
今も逃げ回っている。
『助けてぇえええッ!』
今も叫びまくってる。
「1機ずつ落として数を減らそう」
『敵VFはどうするんだ』
「シカトしろ」
『無茶言うぜ。絶対強いぞ』
確かに、俺がリヴェラに勝てたのは消耗していたことが大きい。
ミサイルが弾切れになり最終的にリヴェラはライフル一本で戦っていたからな。
逆に言えば、VFの性能ならば、ライフルとミサイルが一つずつあればUFに互角以上の戦闘ができるという事だろう。
そして今、敵VFはフル装備だ。避けるだけでも一苦労だろう。
だからこそ雑魚を早めに削りたい。
あ、そうだ、ここにはもう1機いたのだった。
「おい、エリンド! 俺たちが道を開く。その後、後ろに下がって、援護しろ!」
『え!?』
「距離を取ってから落ち着いて攻撃するだけだ。出来るな?」
『や、やってみる』
『やるな。1人分の火力確保だな』
「まだ、エリンドは囲まれてる。やることは分かってるな?」
『VFから一番遠い奴を狙おう』
「近づいたら、ミサイルを先に撃て。ディレイを入れて俺も撃つ」
同時に撃ったミサイルが全弾当たれば理論値のダメージが出るだろう。しかし敵はすでにこちらを認識している。ミサイルの発射タイミングが合っていた方がかえって避けやすい。
あえてディレイを入れることでクイックスラストで初弾を避けても、その後の弾の命中率は飛躍的に伸びる。
瞬間火力より、確実なダメージを選んだ。
「速攻で落とす。交互に攻撃して休ませるな」
『任せろ』
予定通りミサイルを撃った後、デトが突撃、キックする。
衝撃で動きを止めた敵機に俺がバズーカを喰らわせる。
なるべくデトと対角線上を意識しながら背中を狙っていく。
もちろん敵VFも合間を見てこちらを狙ってくる。
だがエリンドに気を取られているので思ったほど怖くはなかった。デトと二人だから攻撃が分散されるのもありそうだ。
危なげなく目標UF1機を撃破した。
『今だ、エリンドこっちまで下がれ』
声をかけるまでもなかった。
四方八方に逃げ回っているなか、敵機を撃破する様子がすでにエリンドの目に入っていたのか。デトの声が終わるより早くこちらに駆けてきた。
「頼むぞエリンド、俺たちはかなり消耗している。少し後ろで狙っていけ」
『とりまVFは狙わなくていっからー、ねらいやすそうなUFを攻撃してれば、俺らが勝手に合わせるし』
「エリンド、回避技術は天才的だ。あとは弾を当てるだけでお前は強い」
『……ッ! ルド……ガルドさん』
ん? 誰だ?
一瞬疑問に思ったが、すぐに意識を戻す。
『ワンダー作戦は?』
「安全第一」
『わかりやすいな』
「敵VFはエリンドから俺たちにターゲットを切り替えてるはずだ。回避を優先して、確実に当てていくぞ。残りの弾が心もとない」
『そうだな。弾薬温存しつつ、エリンドの支援をうまく使っていこう』
まもなく適当な地点まで下がったエリンドが攻撃を開始する。
エリンドの武装は、左右の手にそれぞれバーストライフル、小型グレネードランチャー。肩の装備は、20連装マイクロミサイル、自動照準小型ガトリングだ。
敵機の注意を引きつけていると、エリンドの攻撃が当たり始める。
意外にも当て感は良かった。落ち着いて狙えさえすればしっかり当たるじゃんか。
「いいぞ、その調子だ。ランチャーも使っていけ。当てられなくとも圧になる。回避を強いられれば息切れする」
『わ、分かった』
分かり切っていたけど、敵VFの装備が厄介だ。特に左手のソードオフショットガンが避けにくい。
拡散範囲が広く回避しても数発喰らう。幸い一発一発のダメージはそこまで大きくはない。だが、至近距離で全弾くらうと、今のHPで耐えられるか分からない。
ロケットポッドは無誘導でまっすぐ飛んでくるから避けやすい。だが恐ろしいのは4連装ミサイルと併用してくることだろう。
ロケットだけ避けていればミサイルを避けきれない。なるほどこういう使い方もあるのか。
『……やっべぇ、超、楽しい』
デトの気持ちは良く分かる。このひりつくようなギリギリな戦いを俺も求めていた。
『左手武器、残弾ゼロ。パージします』
バズーカ終わったか。
しかし、役目は果たしてくれた。敵UFを1機落としきったから。
『チッ、今回は負けだ。引き上げるぞコリック』
声をかけられた敵UFが、素早く方向転換し、辺りにスモークを展開する。
爆発するように広がったスモークで2機を見失った。
正直助かった。あのまま戦っていたら、こちらのリソースがなくなっていただろうから。
『た、助かったぁ』
エリンドは機体に乗っていなければへたり込んでいそうだ。
『なぁ、エリンド。救難依頼なわけだけど、報酬は期待するからな?』
デトがからかうように通信を飛ばすと、あわてたようにエリンドが返事をする。
『ああもちろん、君たちは命の恩人だ。それと……できれば通信IDを教えてほしい』
『そんぐらいならOKだ』
『もしよければ、ミッションレコーダーの記録を送ってくれませんか』
「ミッションレコーダー?」
『すべての戦闘は保存され、傭兵会館に送られるんです。依頼をこなしたかどうかや、実力に見合う依頼を割り振るためとか。その記録は自分で見返したり、共有したりできるんです』
ふーん、なるほど……なんか監視されてるみたいでちょっとヤだな。
『僕は、戦闘が下手だから……お二人の戦い方を勉強できたらって……』
どちらかと言えばメンタルの問題な気がするけど……
「まぁ、問題はないかな」
『こっちもイイゾォ、UFの戦闘データが役に立つかは知らんが』
ミッションレコーダーの渡し方を教えてもらい、送信する。
「俺たちは帰るけど、もう問題ないな?」
『はい、本当にありがとうございました』
『じゃ、お疲れぇ~』
俺たちはその場を後にして、バルディアへと向かった。
まもなく格納庫区につくとUFを預け、宿舎に移動する。
宿舎ではリスポーンポイントの更新やログアウトだけでなく、報酬の確認やミッションレコーダーを見返すこともできるみたいだ。
まあ、ログアウトに関しては別にどこでもできるんだけど。
「今日はこの辺にしておくか」
「そうだな、初日としては良い出だしだろ。満足したわ」
「おい、エリンドの救難報酬出てるぞ」
「どれどれ~、おお! 4000万じゃん。今回の殲滅ミッションよりたけぇじゃねぇか」
「ああ、軽量機体ならもう買えるな」
「軽量か、うーん、フェルガの機体はやや耐久値が低めだから中量くらいは欲しいな」
「俺も最初は中量機がいいかも」
「じゃあもうちょっと稼がないとだな。明日何時?」
「18時までバイトだから、そのあとだな。20時くらい? 明後日日曜なら一日空いてるけど」
「了解了解、それまで情報収集とか探索とかしてるわ」
「はいよ、んじゃ、お疲れ、おやすみー」