新作ロボゲー『ヴァンガードフレーム』で傭兵生活を始めます   作:ののじん

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9話 厄介ごとの始まり

 店を出た俺はにっこにこだった。

 

 めちゃくちゃかっこいい頭部パーツを組み込んだVFを買うことが出来たからだ。

 

 量産機なのに頭を変えたことで専用機みたいになった。

 

 しかし同時に懐が寂しくなってしまった。後悔はしてないけど。

 

 本体価格1億2800万Crから540万の頭部パーツを抜いて3000万の試作頭部に換装した。お値段締めて1億5260万Crだ。

 

 残ったお金は590万Cr……

 

「武器買う金まで消えてしまった」

 

「大丈夫だって、今から行く店で一個くらい武器買えるって」

 

「でもこの手持ちで買えるのジャンク品なんだろ?」

 

「ないよりマシだろ?」

 

「うーん、ジャンク品がどのくらいか分からないと何とも言えないだろ? 素直に金貯めた方がいいかもだし」

 

「まあな、でもとりあえず行ってみようぜ」

 

 商業区の北西端に向かっているのだが、だんだん治安が悪くなってきたな。

 

 浮浪者が物陰で座っていたり、ガラの悪そうな連中がたむろしていたり。そこいらで罵声が飛び交い、中には殴り合いをしている者もいる。

 

「おい、こっちで合ってんのか?」

 

「そのはずなんだが……お? あれじゃね?」

 

 デトの声に反応して通りの先を見ると大きな看板が見えた。今にも落ちそうにぶら下がっている。

 

 看板にはレックピッカーと書いてあった。

 

 と、そこで、裏路地につながる小道から少年少女の二人組が飛び出してきた。

 

 看板に気を取られていたせいで反応が遅れる。とっさに避けようとしたが……こっちに突っ込んできた? ぶつかるようにしてすれ違う。

 

 避けきれなかった? 子供が通れるくらいには避けたはずだ。

 

 いやな予想が頭をよぎる。俺は数歩歩いたところで立ち止まる。

 

「ん、どしたー?」

 

 デトの言葉を無視してその場で傭兵プロフィールを確認した。

 

 所持金がいつの間にか0Crになっていた。そしてプロフィール画面を閉じると同時にイベントミッション《スリを追え》がHUDに表示される。

 

「クッソォ……」

 

「どうしたんだよ?」

 

「スリだ……」

 

「え?」

 

「だから! スられたんだよ! ぶつかったガキに!」

 

「スリ? え、何お前スられたの? ぶっはっは……ん?」

 

 嘲笑したデトが不自然に止まる。

 

 聞かなくてもわかる。相手は二人組でデトもしっかりぶつかっていた。

 

「……ッ!……やがった……あいつら、スリやがったぁあああ! オ、オレの!! 2000万クレジットがぁああああ!!!」

 

 土曜日は俺より長くヴァンフレにインしていたからだろう、随分と貯めていたらしい。まだ2000万残っていたとは、俺よりスられた額が高いので、俺は落ち着きを取り戻した。このことはあとで煽ることにしてひとまずは。

 

「おい、戻るぞ」

 

「ああ! 分かってる! 絶対泣かせてやるッ!」

 

 子供の足だ、まだ遠くまで行っていないだろう。

 

 少年少女が飛び出してきた小道まで戻る。

 

 スリを働いたら少しでも早く身を隠したいだろう。走り去っていった先で一番近い脇道は……

 

「こっちだデト」

 

「こういう時は頼りになるぜ、うぉおおお! どこだぁあああ!」

 

 路地を抜けるとT字路に出る。

 

 左右の通路を見ると左の道に走る二人の影があった。

 

「いたぞ!」

 

「待てぇい! 逃げるなぁ! 金返せぇえええ!」

 

 デトの本気の叫びがウケる。

 

 だが他人ごとではない。デトよりも少額とはいえ、俺も盗られているからな。

 

「通信をつなげ。デト、回り込め。東に誘導する」

 

「了解!」

 

 元気よく返事したデトが分かれ道を曲がる。

 

 ミニマップを見ながら、スリの子供たちが通りそうなルートを考える。

 

 見失わないようにしながら、誘導する。西側に回り追い詰めていくのだが、逃げ慣れている。

 

 逃走ルート上の子供しか通れないところをうまく使っている。単純なスピードは負けていないのだが、こちらの足を止めてくる。

 

 でも、こちらも負けてはいない。ミニマップを見るとデトがいいポジションにいる。

 

「デト、二つ先を左に曲がれ。挟み撃ちだ」

 

『わかった!』

 

 俺の方をチラチラ見ながら走っていたので反応が遅れたのだろう。

 

「やぁっとつかまえたぞぉ、ガキども。盗ったもんだせよ」

 

 デトが二人を確保した。

 

 HUDが更新され、二人を尋問しろと出てきた。 

 

「放せよッ! 何も取ってねぇよ」

 

「嘘つけ、じゃ何で逃げたんだよ」

 

 デトが問いかけると威勢のいい返事が飛んでくる。

 

「大人が追っかけてきたら逃げるだろうが」

 

 言い逃れしているがぶつかってきたのはこいつらで間違いない。

 

「俺らに接触したのはお前らしかいないんだよ」

 

「証拠出せよ、俺らがとったって証拠をさ」

 

 ずいぶん強気だな。

 

 ああ、盗んだ金、逃走中に隠したなこいつら。

 

 デトが二人の体を調べ始めるが、案の定金は見つからなかった。

 

「満足したかよ」

 

 こいつら懲りてないな……一芝居うつか。

 

「よし、デト、女の方連れてけ。人身売買で一儲けしよう」

 

「ッ!?」

 

 俺の言葉に男の子の方が反応する。

 

「……お前、鬼畜かよ。でも、仕方ないか。やったことの責任は取ってもらわないとな」

 

 デトは俺の狙いに気づいているだろう。一応乗ってくれたしな。

 

「ま、待てよ! 妹は関係ないだろ」

 

「いやいや……共犯だろ?」

 

「ひッ」

 

 女の子が悲鳴を上げる。ちょっと後悔してきたな。

 

 まぁでも、脅しが効いてるうちに畳みかけていこう。

 

「犯罪を犯すってんなら、俺ァ、ガキでも容赦しねぇ」

 

 ドスを効かせてしゃべる。

 

「嫌なら金のありかをしゃべるんだな。今ならまだ、許してやるよ」

 

 デトがいい感じにフォローしてくれた。上手い具合に飴と鞭になったんじゃなかろうか?

 

「……分かったよ。金のありかを言うよ。その代わり妹は助けてくれ!」

 

「分かった分かった、じゃあ、案内しろ」

 

 手慣れた感じを見るに、こいつら初犯じゃない。少し問い詰めないとな。

 

 やがて金を隠した地点に着く。

 

 小道の影にデバイスのようなものがあった。

 

 逃げる時に投げたのだろう、雑に落ちている。

 

「これが俺らの金か?」

 

「……ハッキング装置なんだ。かなり近づかないとスれないけど性能はいい」

 

 最近のスリはハッキングをしてくるらしい。

 

 この世界では現金を持ち歩く人はほとんどいない。財布もデータチップのような感じになっている。だからハッキングなんだろう。

 

 少年が装置をいじった後、俺たちの財布に重ねるとお金が戻ってきた。

 

 無事にイベントミッションをクリアできた。

 

 今回の事は勉強代になったかもな。まあ自分の金取り戻しただけなんだけどな。

 

「お前らこれまでも、散々スってきたろ? かなり稼いでるはずだ。その金はどうしてる?」

 

「……俺たちの金までとるのか?」

 

「ばーか、俺は自分の金が戻ればそれでいいんだよ。……なんでこんなことを続けてる?」

 

「……金が必要なんだ。スった金から決められた額をここいらの元締めに渡してる。ノルマがあるんだ」

 

「だが残りはお前たちの物だろう?」

 

「母さんが病気なんだ。延命するのにも金が要る。治すにはもっと金が要る」

 

「父親は?」

 

「いない。俺たちを捨てて出ていった」

 

「なるほどな」

 

 しかし、これ以上スリを続けるのはこいつらのためにもならない。

 

「治療費はいくらだ?」

 

 デトが兄妹に尋ねる。

 

「2億って言ってた」

 

 元締めってやつはぶっ飛ばせばいい、母親の方は……

 

「情状酌量の余地あり、か」

 

 デトがそうつぶやくと俺に声をかけてくる。

 

「なぁワンダー」

 

「分かってる」

 

 助けろってんだろ?

 

「オイ、ガキども名前を教えろ」

 

「俺、エリオ」

 

「……ティナ」

 

「歳は?」

 

「15」

 

「14歳」

 

「分かったエリオ、手伝ってやる」

 

「え?」

 

「俺たちがその元締めってやつをぶっ飛ばしてやる」

 

 エリオが俺の言葉に歩みを止める。

 

「無理だ! あいつらVF乗りのマフィアなんだ。交代でアジトを守ってる!」

 

 あいつらねぇ……

 

「そうだな、準備はいるだろうな」

 

 どれくらいいるか分からないけどVFが複数機となると俺たち2機だけじゃちょっときついかもな。援軍を呼ぶか。

 

「任せとけ、ガキんちょども。俺らの腕を舐めんなよ?」

 

「ただし条件がある」

 

「何だよ、条件って」

 

「これ以降スリからは足を洗え。まっとうな仕事をしろ」

 

「なんの仕事をやればいいか分からねぇよ……」

 

 まぁ確かに、これで生きてきたわけだからな。

 

「俺にいい案がある!」

 

 デトが急にそんなことを言い出した。

 

「いい案ってなんだよ?」

 

 エリオより先に俺が問い返していた。

 

「エリオ、お前傭兵になれ」

 

「ばっかお前、コイツまだ子供だろうが」

 

「ここでは15歳は成人だ。そして成人なら傭兵になれる」

 

 突飛なことを言い出したが、どうなんだ? エリオにやれるか? 

 

 ……僚機やほかのUFが付くようなミッションなら、いける、か。

 

 俺たちが鍛えるってのもありだな。

 

「まぁ、いっか。エリオ……お前が決めろ、お前がUF乗りになるなら鍛えてやるし、俺とコイツで2億Cr作ってやる、出世払いでいい」

 

「俺も!?」

 

「お前が助けるって言い出したんだろうが。責任持てよ」

 

 正確には言ってないけど。

 

「ここで決めなくていい。俺たちがその元締めってやつぶっ飛ばしてからでいいさ」

 

「……考えとく」

 

「なあ、その組織の名前分かるか?」

 

「……コルヴォ・ファミリー。バルディア北西部の外れにある、今は使われてない貨物集積場を根城にしてるよ」

 

 とりあえず今後の敵が決まったな。

 

 まずはマフィアぶっ潰すってことで。

 

 っとその前にやることがあるんだがな。

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