太陽系で最後に発見されたこの星は、太陽系の果てだとよく言われた。
そもそも惑星にも属さないんじゃないか、とまで言われ、常に仲間外れだった。
しかし、人類が最後に開発したこの星は最終的に太陽系外縁への進出には欠かせないものとなり、人類の偉大なパートナーとなっていた。
異質なものを認めた結果、それが素晴らしき伴侶になることがある。
(人類で初めて宇宙人と契りを交わしたレッドウィンターの冒険家の言葉)
君が足を踏み入れた先には、暗く黒い無機質な通路が続いている。機械だらけで配線も床で絡まり合い、やはりここはスクリーンの内部なのだろう。後ろを見ると、ノドカが入り口の方からこちらをじっと見ていた。君は彼女を待つかのように立ち止まる。
ずっと憧れ、崇拝し、見つめ続けてきたものの醜い実態を覗かなければならない…そのことが辛いのは、言わずともわかる。ここ数日で、ノドカは大分変わってしまったように感じる。いつものように無邪気に星を熱く語る、だけどそれでも知的で理性的な瞳を残すノドカが、また見たい。でも、おそらくそれは叶わない。外の世界にも星はあるのかもしれないが、彼女の今までの10年間は虚無であったと言われてしまえば、何も言い返せない。
しばらくして、彼女は曖昧な表情のまま、君のいるところに足を踏み入れた。途端に、暗かった通路に外からの明るい光が集中して差し込んできた。
君は綺麗だと思った。後光を浴びて輝く彼女の姿は、長らく見続けてきたものそのもの。そして君は彼女の言葉を思い出した。
彼女は変わってしまったのかもしれないが、大切な友達であることに絶対に変わりはない。それは今も同じで、永遠だ。
しばらく歩くと、重そうな黒いドアが見えてきた。そこにはこう書かれていた。
『Project227』
君達ははっとして止まった。227…自分達のいる227号特別クラスと何か関係があるのだろうか。それとも、ただの偶然か。
「壊すね。」
「うん。」
ドゴォォン
扉は跡形もなく砕け散った。
「うわぁぁ!」
扉の奥の方から声がする。外界の人間がいたのかもしれない。この技をやたらと使うのはやめたほうが良さそうだ。
そして扉の中に進む。そこにいたのは…人間だった。作業服のようなものを着ている。ただし、明確に違う点があった。
「ノドカ…」
「うん…初めて見た…」
その人にはヘイローがついていなかった。それだけで、不安になったし、不気味だった。ヘイローがついていない人間。目の前に怪物がいるような気がした。その怪物は、恐怖と驚きで顔を引き攣らせていた。
「シグレちゃん、私、こんなものは見たくないよ。」
「うん。ノドカ、そうだね。」
ノドカは殺そうと…
「ま、待ってノドカ!!!」
「うん?何かあった?」
君は咄嗟に彼女を止めた。テルがいつの間にかノドカの肩から降りて、君達の方を見ていたからだ。君は思い出した。自分がテルに恐怖したあの日のことを。テルはヘイローのないオコジョを狩っていて、それを恐ろしく感じた。だが、今初めてその時のテルの気持ちが理解できた。いや、少しも理解できていなかったわけではなかったのだ。他の学校の生徒には角があったり翼があったりして、それを異質なものと感じる経験は多々あった。だが、ヘイローは神秘の源であり生命の源。それがない人間はいてはいけないと今、本能で感じた。今の自分達と、あの時のテル、何が違うだろうか。いや、何も違わない。
「殺すことはないよ。放っておこう。」
「…そうだね。」
君達は目の前の異質なものから目を背け、先へと進んだ。
道が開けてきた。分岐もしている。目指すべき場所は分からないが、大きい道を通っていけばいずれ一番重要なところに辿り着けるだろうと思って、その方に進む。
やがて、大きなドアに辿り着く。ここにも、project227と書かれている。しかし、先ほどのものとは違い、制御室と書かれている。ここが、メインルームなのかもしれない。
「壊すよ。」
「うん。」
ドゴォォン
そして、君達はその部屋の中に入った。そして君達は…
私と出会う。
中には、人間が一人だけいた。スーツを着て、青いカードを首から下げている。そして先程の人間とは違って、こちらをじっと見ていた。鳥肌がたった。ヘイローを持っていない人間と目を合わせるなんて、毛虫と会話を試みるようなものだ。
「行こう、ノドカ。」
「うん、シグレちゃん。」
「待てよ。ここに用があるんじゃないのか。」
…!?喋った。不安だが、用があるのは確かだ。何より、ここを出ても何が何だかわからないことだろう。その人に聞く。
「私達を閉じ込めて、映像を見せ続けていたのは、あなた?」
その人は少し悲しげな瞳をして、言った。
「そうだ。」
「目的は、何?それより、あなたは、誰?」
「私は…」
その人は苦しむような表情を垣間見せて、言った。
「シャーレの、先生だよ。」