227番目の宇宙   作:elebie

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木星は幸運の象徴である。
人類は火星への入植が終わると、木星がいかに利益をもたらすかに気付いた。
水素にヘリウム、メタン...どれも宇宙開発に必要不可欠な資源。
それが一つの星に大量に眠っていたのである。
当時の人々はこれをみて多くが木星に駆け付けた。職と、野望と、富を求めて。

「金でみる歴史」という大変古い歴史書によると、19世紀半ばに現在のデーモス第31区南西部、当時カリフォルニアと呼ばれていた場所で金塊が見つかったらしい。当時の人々はこの、真偽の明らかでない噂にこぞって群がり、欲望をむき出しにしてカリフォルニアに集結した。そして今、人々は木星で同じことをしている。技術の進歩こそあったが、人類は1200年前から、何も変わっていなかったのである。
(四〇世紀に活躍したレッドウィンターの歴史家の著書「ヘリウムでみる歴史」より)


木星

「で、ここで治療してあげていたと…」

 

君はあの後急いで治療道具のある227に帰り、ノドカにただいまを言う暇もなくそれに取り掛かった。傷は酷かったが、神秘の力のおかげか、応急処置をすると少し元気になったように見えた。しばらくしてノドカは君が帰ってきたことに気がつき、不思議に思って見にきて、一匹の傷だらけのオコジョと、それを見守っている君とを見つけた。そして君から説明を受けた後、思慮深そうに悩んでいた。ヘイローのせいでこのオコジョが自殺しようとしていたことは、同じくヘイローを持っている君やノドカからして、聞いていて気持ちのいい話ではなかった。

 

「ねぇ、ノドカ。もし私にヘイローがなかったら、」

 

君は言おうとして、戸惑った。自分が今何に触れようとしているのかはよくわからなかったが、いつもの談笑と訳が違うことは明確だった。

 

「もし私にヘイローがなかったら、ノドカは、私と友達だったのかな。」

 

気まずい沈黙が流れて、君は後悔した。目の前のノドカは見たこともないような不安げな顔をしている。君が曇らせたのだ。でも、とっさに切り替えられるような軽い話題ではなかった。

 

それはそうだ。なぜなら君は今、人類がその滅亡まで、何万年たっても解決できなかった重大極まりない問題の姿を目にしてしまっていたからだ。16歳の君には、あまりにも重すぎた。

人間は自分と違うものに対して、警戒心を解くことができない。これは長い人類史が証明している。たっただ。たった肌の色が多少違うだけでそこに血が流れるのだ。人間がこの呪縛から離れることはついぞできなかった。

 

「私は今謹慎処分でこの227号特別クラスに問題生徒として押し込められてるけど」

 

でも君は言葉を紡ぐ。それをやめることは、現実から目を背けることだと思った。

 

「私にヘイローがなかったら、そもそも生徒になることすらかなわなかったんじゃないかな...って、思ってね。」

 

ノドカは暗い顔をしていたが、ついに言った

 

「シグレちゃん」

「ヘイローがなかったら友達じゃなかったかなんて分からないよ。分かりっこないよ...でもね、これだけは言えるよ。今のヘイローがある私と、シグレちゃんは絶対友達。絶対だよ。それだけじゃ...だめ、かな...だめ、だよね...」

 

ダメではなかったともいえる。というのも君はその言葉を聞いて酷く安心した。人という生き物はどうしようもなく醜いものなのかもしれないが、そばにノドカがいることだけは確実だった。それだけで君は幸せだった。

 

「キィィ」

 

甲高い声。オコジョは元気を取り戻しているのかもしれない。心なしか、瞳は輝いているように見える。それが、見かけだけの家族や老人から逃れてきたことへの、そして自分たちが本当の家族の役割を全うしてくれるかもしれないという希望に対するものであればいいと思った。でも、君はある考えをぬぐうことはできない。

 

この子がなついてるのなら。それは私たちになついているのだろうか。それとも...

 

ヘイローに安心しているにすぎないのだろうか。

 

 

もう日は暮れた。3つの光の輪が、古びた教室の中で光っていた。

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