羽田空港防衛戦と同時刻の午前五時三十五分。
東京ハイヴ西中層では、候補生第一隊と正規軍部隊が、
上昇を続ける中枢構造体へ背を向け、浅層出口へ向かって撤退を始めていた。
すでに足元は水平ではない。
中枢構造体が周囲の地層を強引に押し上げているため、
これまで床だった岩盤は急な斜面へ変わり、
壁面だった場所が頭上から覆いかぶさるように迫っている。
通路の形は数秒ごとに変化し、
地図に記録されていた分岐や高低差も、ほとんど意味を失いつつあった。
正規軍の健在機が先頭を進み、その中央に損傷機を置く。
候補生第一隊は、その後方で敵の追撃を防ぎながら撤退を支える。
最後尾を担当するのは、龍園と宝泉だった。
二機は通路の左右へ分かれ、
追ってくる戦車級と要撃級へ交互に射撃を続けている。
ただ並んで撃つのではない。
片方が射撃している間に、もう片方が後退する。
弾倉を交換し、互いの位置を入れ替える。
二機が同時に足を止めれば、最後尾全体がその場へ取り残される。
だからこそ、一方が敵を押し返し、もう一方が下がるという動きを崩さなかった。
龍園が短い連射で戦車級の群れを通路奥へ押し戻す。
その直後、宝泉が一歩前へ出た。
右側の保守坑から要撃級が姿を現している。
宝泉は巨大な脚部へ射撃を集中した。
要撃級を完全に撃破するほどの火力ではない。
だが、片脚を大きく傾かせることには成功した。
巨体が斜めに崩れ、狭い保守坑を一時的に塞ぐ壁となる。
龍園が命じる。
『下がれ、宝泉』
宝泉はそのまま撃ち続けようとした。
倒し切れる。
もう少し前へ出れば、完全に停止させられる。
そう考えたのかもしれない。
だが、一瞬だけ動きを止める。
七瀬の言葉を思い出したのかもしれない。
一人で戦わないでください。
宝泉は要撃級を倒し切らずに機体を反転させた。
龍園と同じタイミングで後退する。
二機は横へ並びすぎず、互いの射線を潰さない間隔を維持しながら、
候補生第一隊の最後尾へ戻っていく。
龍園が低く言う。
『少しは分かってきたじゃねぇか』
『何がだ』
『止まるべき場所だ』
宝泉は鼻で笑う。
『お前に褒められても嬉しくねぇ』
『褒めてねぇ』
『なら黙ってろ』
言い争いは続いている。
それでも隊形は崩れない。
以前なら、宝泉は敵がいる限り一人で前へ出た。
龍園も、命令で押さえつけるだけだった。
だが今は、龍園が宝泉の動きを見て射撃の終わる瞬間を読み、
宝泉も龍園が下がるタイミングに合わせている。
完全な信頼ではない。
互いを好いてもいない。
それでも戦場では、相手が次に何をするか分かるだけで、生存率は大きく変わる。
前方で全体位置を確認していた堀北が、後衛交代を命じた。
『第二後衛、交代準備へ入って』
須藤と高円寺が中央隊列から左右へ分かれる。
龍園と宝泉が後退し、二機と位置を入れ替えた。
宝泉機は七瀬、天沢、八神の第三班前方へ戻る。
第三中継器はすでに放棄されていた。
通信そのものは、まだ後方に残された中継器を経由して地上へ届いている。
だが部隊が進めば、その距離も限界へ近づく。
真嶋の声が通信へ入った。
『第三中継器との距離が限界に近い』
八神が答える。
『確認しています』
『予備中継器は』
『二基です』
『使いどころを間違えるな』
『了解しました』
候補生第一隊は、戦いながら撤退を続ける。
前進する時とは違う。
敵を倒し、道を切り開くためではない。
全員で地上へ戻るための戦闘だった。
だが戻る道は、侵入時よりも遥かに危険になっている。
中枢構造体が上昇するたび、地層全体へ新たな圧力が加わる。
断界作戦で崩落させた主要幹線。
灯火作戦で沈めた海上施設。
お台場地下で破壊された空洞。
人工島周辺の損傷した地盤。
人類側がこれまで壊してきた場所と、中枢が新たに押し広げている場所。
それらすべての歪みが、東京湾地下へ集まり始めていた。
地面が激しく揺れる。
壁面へ新しい亀裂が走る。
天井から大小の岩塊が落ちる。
オレは前方の正規軍機を見る。
一機が損傷した右脚部を引きずりながら進んでいた。
その後方へ平田と一之瀬が入り、左右から牽引装置を接続する。
平田が左側。
一之瀬が右側。
二機で損傷機の傾きを抑えながら、移動を支えている。
神崎が各部へかかる負荷を確認した。
『歩行速度を、あと五パーセント落として』
『このままでは牽引対象の腰部へ負荷が集中する』
平田。
『了解』
一之瀬。
『右側の張力を少し上げるね』
二機の出力が調整され、傾いていた損傷機の姿勢が戻る。
その時、後方から別の要撃級が現れた。
正規軍後衛が射撃へ入る。
だが、さらに前方右上へ赤い照射反応が現れた。
ひよりの警告が飛ぶ。
『前方右上に光線級反応!』
全機が一斉に壁側へ寄る。
直後、赤い閃光が通路を貫いた。
正規軍機一機の突撃砲が照射を受け、武装と右腕部の一部が焼かれる。
警告音。
出力低下。
それでも機体は止まらない。
損傷した武装を切り離し、右腕部も接続部から落とす。
残る左腕で長刀を構えたまま、地上への撤退を続ける。
誰もその判断を止めなかった。
機体を完全な状態で持ち帰ることより。
搭乗者が地上へ戻ることを優先する。
真嶋が何度も教えてきた応急処置が、
撤退中の正規軍機によって実行されている。
茶柱たち中枢接触隊は、さらに後方にいた。
上部亀裂から中層へ戻ろうとしているが、通信は途切れがちだった。
『……坂上、右を……』
『星之宮、爆薬機を……』
『真嶋、後ろを見ろ……』
短い声。
激しいノイズ。
映像も大きく揺れている。
中枢構造体の上昇によって、上部亀裂そのものが崩れ始めていた。
中枢へ設置できなかった大型爆薬を搭載しているため、
爆薬運搬機の動きは他機よりも遅い。
茶柱たちは、その機体を捨てずに戻そうとしていた。
坂柳理事長の声が全回線へ入る。
「爆薬を放棄してください」
茶柱が返す。
『地上決戦で使えます』
「地上には別の爆薬があります」
『ですが、この量があれば――』
「茶柱先生」
坂柳理事長の声が強くなった。
「爆薬より、機体と搭乗者を優先してください」
茶柱は答えない。
代わりに真嶋が口を開いた。
『司令官の判断が正しい』
『爆薬運搬機、コンテナを投棄しろ』
運搬機の衛士が答える。
『了解』
固定具が解除された。
大型爆薬コンテナが機体から離れ、岩盤へ重く落下する。
その衝撃で周囲の地面がさらに揺れた。
傾斜した床を、巨大なコンテナが暗闇へ向かって滑り落ちていく。
その先には統率級と無数のBETAがいる。
だが誰も起爆しない。
地下深部で大爆発を起こせば、中枢だけでなく、
撤退中の部隊や東京湾岸まで巻き込む危険がある。
装備を置いていく。
任務を諦めるためではない。
生きた人間を地上へ持ち帰るために。
爆薬を失ったことで、茶柱たちの移動速度は上がった。
候補生第一隊との距離は二百八十メートル。
少しずつ縮まり始める。
だが、浅層出口側の状況はさらに悪化していた。
午前五時三十八分。
人工島西側の浅層入口では、
葛城を中心とした候補生第二隊十二機が、防衛線を維持していた。
入口の幅は、戦術機二機が並べる程度。
左右には細い補助通路。
その先には、地上から地下へ続く急斜面がある。
第一候補生隊と正規軍が地上へ帰還するための、事実上唯一の道だった。
そこへ、浅層に取り残されていたBETAが集まり始めている。
断界作戦によって深部との接続を失った個体。
中枢上昇に反応して移動してきた個体。
人工島の戦術機反応炉や、人間の存在を感知して集まった個体。
それらが一斉に浅層入口へ向かっている。
葛城機が中央。
大型盾を構えている。
右側にはアルベルトと石崎。
左側には伊吹と神室。
後方で橋本が通信と全機位置を管理し、
軽井沢と櫛田が中央射線と弾薬支援を担当していた。
前方に戦車級数百体。
要撃級五体。
さらに遠方には、光線級一体の反応がある。
葛城が命じる。
『光線級へ射線を通させるな』
アルベルトと石崎が大型盾の左右へ出る。
伊吹は要撃級の脚部を狙い、
神室は左側保守坑から流れ込む戦車級を止める。
橋本はすべての位置を把握しながら報告する。
『右側の反応が増えてる』
石崎が尋ねる。
『どれくらいだ』
『百以上』
伊吹が苛立つ。
『百って言われても分かりにくい!』
橋本も声を荒らげる。
『見えてる分は全部だ!』
神室が冷たく言う。
『雑』
『こんなの数えられるか!』
緊張の中でも、いつもの調子が僅かに残っていた。
中央にいる軽井沢は、最初に実弾を撃った時よりも落ち着いていた。
操縦桿を握る手の震えは、完全には消えていない。
それでも照準は合わせられる。
一体。
発射。
命中。
次に二体が来る。
一体目を櫛田。
二体目を軽井沢。
二人は担当区域を分けた。
『右端は私が見るね』
櫛田が言う。
『じゃあ、私は中央』
『無理しないで』
『そっちも』
短い会話。
それでも互いの位置を確認できる。
軽井沢は自分の照準だけを見ていなかった。
櫛田の射線。
伊吹が前へ出る位置。
石崎が後退する経路。
神室が戻るための空間。
全部を見ようとしている。
平田に言われた言葉。
隣の人を見て。
その意味を、今ようやく理解していた。
一体の要撃級が中央へ接近した。
葛城が大型盾で正面から受ける。
激しい衝撃によって機体が一歩下がった。
石崎が右側から射撃し、アルベルトが反対側へ回る。
伊吹が脚部へ砲撃を集中。
要撃級の巨体が傾く。
神室が百二十ミリ弾を肩部へ撃ち込んだ。
大爆発。
要撃級は入口左側へ倒れた。
だが、巨体が通路の半分を塞いでしまう。
葛城が叫ぶ。
『倒す位置が悪い!』
伊吹が反発する。
『でも、止めたでしょ!』
『第一隊の退路が狭くなる!』
神室が残された幅を確認した。
『右側なら一機ずつ通せる』
葛城は即座に判断する。
『入口右側を空ける』
全機が位置を変更した。
だが、帰還するのは候補生第一隊だけではない。
正規軍と教導隊を合わせれば五十機以上になる。
一機分の道では足りない。
葛城は倒れた要撃級を見た。
『巨体を動かす』
石崎が驚く。
『どうやって?』
『牽引ワイヤーを使う』
アルベルトが前へ出る。
石崎が補助。
葛城は盾で巨体を押す。
伊吹と神室が周囲の戦車級を止める。
三機が要撃級の身体へワイヤーを固定した。
出力を上げる。
最初は動かない。
戦術機三機の脚部が地面へ食い込む。
葛城が命じる。
『もう一度だ』
さらに出力を上げる。
要撃級の巨体が僅かに滑り始める。
左壁へ押しつける。
もう一度引く。
右側へ、戦術機二機が並べる幅が確保された。
橋本が報告する。
『これなら帰還部隊を通せる』
葛城。
『この幅を維持しろ』
その時、遠方の光線級が照射準備へ入った。
赤い発光。
橋本の警告。
『光線級!』
全機が遮蔽物へ入ろうとする。
だが、軽井沢と櫛田は入口中央へ近い。
左右に十分な遮蔽物はない。
葛城の盾は一枚。
二機を同時に守れる幅ではない。
軽井沢が先に櫛田機を押した。
『左へ行って!』
櫛田が驚く。
『軽井沢さん?』
『早く!』
櫛田機が倒れた要撃級の影へ入る。
軽井沢機だけが中央へ残された。
葛城が盾を向ける。
だが、距離が足りない。
その瞬間、神室機が軽井沢の前へ滑り込んだ。
『伏せて!』
二機が姿勢を低くする。
赤い閃光。
光線が神室機の左肩部と背部装甲を掠めた。
装甲が焼け、警告表示が広がる。
『神室機、左肩部中破!』
神室はすぐに答えた。
『動ける』
軽井沢が声を震わせる。
『どうして前に出たの』
『あんたが櫛田を押したからでしょ』
『でも――』
『今はいい』
神室は損傷した左腕部を切り離した。
重い音を立てて、腕部が地面へ落ちる。
残された右腕で突撃砲を構える。
『橋本』
『何だ』
『私の左側を見て』
橋本は神室機の死角を確認した。
『了解』
神室は、自分だけで損傷を補おうとはしない。
左側の視界と射線を、橋本へ任せる。
橋本は通信管制を続けながら、神室の死角から接近する敵を報告した。
『三歩前』
『右へ一歩』
『戦車級二体』
神室が向きを変え、射撃する。
命中。
二体の反応が消える。
二人の付き合いは、長いとは言えない。
それでも戦場で必要な言葉は、それだけで足りていた。
軽井沢が言う。
『助かった』
神室は前を見たまま答える。
『後で返して』
『何を?』
『知らない』
神室らしい返事だった。
だがその言葉は、次があることを前提にしている。
午前五時四十分。
西中層では、後衛交代が行われた。
龍園と宝泉が中央隊列へ戻り、須藤と高円寺が最後尾へ入る。
各機の弾薬残量が共有された。
宝泉機は六十二パーセント。
龍園機は四十九パーセント。
須藤機は五十八パーセント。
高円寺機は七十一パーセント。
中継器を守る役割を任されていた宝泉は、他の前衛機よりも弾薬を残していた。
独断で前へ出なかった結果が、今になって意味を持っている。
須藤が左。
高円寺が右。
後方には統率級一体と、要撃級、戦車級が迫っていた。
距離は八十メートル。
統率級の赤い孔が開く。
ひよりが叫ぶ。
『蒸気攻撃が来ます!』
須藤は百二十ミリ砲を構えた。
『撃つ!』
発射。
砲弾が赤い孔へ直撃し、内部で爆発する。
噴き出そうとしていた蒸気が上方へ逸れ、天井へ激突した。
高円寺も開口部へ三十六ミリ弾を集中させる。
統率級の動きが止まる。
だが、別の肢体が横から須藤機へ伸びてきた。
高円寺が警告する。
『下がれ』
『見えてる!』
須藤機が回避する。
巨大な肢体が地面へ激突し、二機が衝撃で揺れた。
須藤が次の射撃を促す。
『次はお前が百二十ミリを撃て』
高円寺は敵の状態を確認した。
『温存する』
『ケチるな』
『必要な時に使う』
『今が必要な時だろ』
高円寺は動きの止まった統率級を見る。
『今は止まっている』
須藤も確認する。
確かに統率級は内部へ損傷を受け、動きが鈍っていた。
百二十ミリ弾を使う必要はない。
『……分かった』
須藤は認めた。
高円寺が少しだけ笑う。
『君も成長したね』
『それを言うな』
二機は統率級を倒し切らずに後退する。
目的は敵の全滅ではない。
撤退時間を作ることだった。
次の後衛は、オレと堀北。
第三後衛。
最後の交代だった。
前方には、中層から浅層へ続く狭窄区画がある。
戦術機二機が並べるかどうかという幅。
正規軍機が先に入る。
一機。
二機。
平田と一之瀬に牽引された損傷機が通過。
神崎が後方確認。
八神が通信状態を維持する。
宝泉、七瀬、天沢も入る。
龍園。
高円寺。
須藤。
最後に残ったのは、オレと堀北だった。
後方には要撃級と統率級が迫っている。
距離は五十メートル。
堀北が言う。
『先に入って』
「お前が先だ」
『副指揮官より、指揮官が先に戻るべきよ』
「今はオレが最後尾だ」
『また一人で残るつもり?』
「二人いる」
堀北は一瞬黙った。
確かに。
今回は一人ではない。
『なら、同時に下がる』
「了解」
二機は左右へ分かれ、後退しながら要撃級の脚部へ射撃を加える。
爆発。
統率級の赤い孔は閉じている。
正面装甲へは撃たない。
無駄弾を使わず、敵との距離だけを保つ。
一歩。
二歩。
堀北が残り距離を報告する。
『狭窄区画まで二十メートル』
「見えている」
『天井に亀裂がある』
「右側が危険だ」
二機が左へ移動する。
直後、右側天井が崩落した。
大量の岩盤が通路の半分を塞ぐ。
要撃級の進路は狭まる。
だが統率級は、太い肢体で瓦礫を押し退けようとしている。
時間は十秒もない。
「入る」
二機が狭窄区画へ向かう。
オレが先。
堀北が後ろ。
だが、堀北機の左脚部が瓦礫へ引っかかった。
警告表示。
機体が停止する。
『動けない』
オレは即座に機体を反転させた。
「出力を下げろ」
『引けば抜ける』
「その角度では横転する」
第二侵入口で回収したサムライ6と同じだった。
堀北機の左脚部が岩盤の亀裂へ入り、外装が挟まっている。
後方から統率級。
距離三十メートル。
要撃級がその前にいる。
堀北が言う。
『先へ行って』
「命令か」
『そうよ』
「従えない」
『綾小路くん』
オレは牽引ワイヤーを射出し、堀北機の腰部へ固定した。
「右へ傾ける」
『壁へ当たるわ』
「当てる」
『左肩が損傷する』
「装甲は交換できる」
茶柱。
真嶋。
何度も繰り返された言葉だった。
堀北は一瞬だけ黙った。
『了解』
堀北機を右へ傾ける。
左肩部が壁面へ接触し、激しい火花が散る。
左脚部へかかっていた荷重が減る。
オレがワイヤーを引く。
その時、統率級との距離は二十メートルまで縮まっていた。
赤い孔が開く。
坂柳有栖が警告する。
『噴射準備に入りました』
堀北が叫ぶ。
『綾小路くん!』
オレは百二十ミリ砲へ切り替え、赤い孔へ照準を合わせる。
発射。
砲弾が開口部へ直撃した。
内部で爆発。
蒸気攻撃が天井へ逸れ、統率級の動きが止まる。
その間にワイヤーを引く。
堀北機の左脚部が亀裂から抜けた。
二機は狭窄区画へ入る。
後ろには要撃級と統率級。
だが通路は狭く、一体ずつしか追ってこられない。
オレと堀北も横へ並べない。
堀北が先。
オレが後ろ。
堀北が言う。
『次は私が最後尾を担当する』
「交代できる場所がない」
『なら、このまま出口まで行く』
「そうなる」
二機は前後に並んで進む。
オレは後方へ射撃を続ける。
狭い通路では、排除された戦車級の身体そのものが障害物になる。
そのため要撃級も速度を落とした。
やがて通路の出口が見えてくる。
正規軍と候補生たちが待っていた。
須藤が叫ぶ。
『遅ぇぞ!』
高円寺が奥を見る。
『来ている』
龍園。
『後ろを撃て!』
正規軍機が出口側から狭窄区画奥へ射撃を集中する。
爆炎。
要撃級が足を止める。
その隙にオレと堀北は出口へ到達した。
全機合流。
誰も残っていない。
さらに後方の別経路から、茶柱たちの信号が近づいてくる。
距離百メートル。
通信が明瞭になる。
『候補生隊を視認した』
茶柱たちも戻ってきた。
教導隊四機。
サムライ3。
爆薬運搬機。
大型爆薬は失ったが、六機すべてが健在だった。
星之宮機は左腕部小破。
坂上機は脚部損傷。
真嶋機は装甲を大きく損傷。
サムライ3は右肩部中破。
爆薬運搬機は装備を投棄し、軽くなっている。
それでも搭乗者は全員戻ってきた。
堀北が茶柱機を見る。
『先生』
茶柱が答える。
『約束は守った』
『はい』
それだけだった。
長く言葉を交わす時間はない。
全部隊は浅層出口へ向かって進む。
中枢構造体の深度は三百二十メートル。
地表到達まで推定十二分。
浅層入口では、候補生第二隊の防衛線がさらに圧迫されている。
坂柳理事長が全回線へ報告する。
「地下部隊へ」
「浅層西側入口の防衛線が押されています」
「第一隊到達まで推定五分」
軽井沢の声がノイズの向こうから届く。
『五分なら持つ』
平田が反応する。
『軽井沢さん』
『聞こえてる』
銃声と爆発。
それでも軽井沢は続ける。
『心配しないで』
『こっちは葛城くんもいる』
『櫛田さんも、伊吹さんもいる』
橋本が横から口を挟む。
『俺もいるぞ』
神室。
『自分から入ってくるな』
『通信担当だ』
軽井沢が僅かに笑う。
『大丈夫』
平田は短く答えた。
『分かった』
本当に大丈夫かどうか。
誰にも分からない。
それでも信じる。
自分の役割を果たし、地上へ向かう。
候補生第一隊。
正規軍。
教導隊。
その先で、右側から大量の敵反応が現れた。
神崎が確認する。
『右側から百体以上』
宝泉が言う。
『俺が行く』
「第三班は中央を維持しろ」
『でも――』
「中継器を守れ」
八神が最後の予備中継器を持っている。
浅層入口までは残り二百メートル。
ここで設置しなければ、地上との通信が完全に切れる可能性がある。
宝泉は動きを止めた。
『分かった』
七瀬が言う。
『私と天沢さんで右側を見ます』
天沢。
『宝泉くんは中央でお留守番だね』
『後で覚えてろ』
そう言いながらも、宝泉は中継器前から離れない。
八神が最後の中継器を設置する。
その時、地面が大きく揺れた。
中枢深度は二百八十メートル。
地上に配置された囮反応炉が、すべて最大出力で起動した。
東京湾中央。
複数の無人撃震。
大型発熱装置。
模擬通信波。
二酸化炭素。
灯火作戦を遥かに上回る規模で、戦術機と人間の集結を偽装する。
BETA反応の一部が囮方向へ変わる。
さらに、中枢構造体の進路も僅かに変化した。
坂柳有栖が報告する。
『中枢進路の変更を確認しました!』
坂柳理事長。
「誘導成功です」
完全に制御できたわけではない。
それでも、高育直下へ向かっていた進路は東京湾中央の無人海域へ逸れた。
海上艦隊と地上防衛部隊が、そこで待つ。
地上決戦の準備が進められる。
午前五時四十三分。
浅層西側入口。
候補生第二隊の防衛線では、先ほどの光線級が再び照射準備へ入っていた。
橋本が警告する。
『また来る!』
全機が遮蔽物へ入る。
倒れた要撃級の巨体。
岩壁。
葛城の盾。
軽井沢、櫛田、神室は要撃級の影へ入る。
橋本は通信中継器を維持するため、高所へ残っていた。
周囲に十分な遮蔽物はない。
神室が叫ぶ。
『橋本!』
橋本機は中継器を背負ったまま姿勢を下げようとする。
だが照射までの時間が足りない。
ここで橋本が位置を動かせば。
数秒間ではあるが、第一候補生隊と地上管制の回線が切れる。
橋本は動こうとした。
それでも間に合わない。
赤い閃光。
橋本機が光に包まれる。
神室が叫ぶ。
『橋本!』
通信へ強いノイズが走った。
次の瞬間。
橋本機の反応が消失した。
直接的な爆発映像は届かない。
ただ赤い閃光。
その後、中継器信号が途絶える。
第一候補生隊との回線も切断された。
最後に聞こえたのは、神室の声だった。
『橋本――!』
通信断。
地下の候補生第一隊から、音声が消える。
堀北が呼びかける。
『橋本くん?』
返答はない。
神崎が中継器状態を確認した。
「浅層中継器の反応が消えた」
八神。
『予備回線へ切り替えます』
最後に設置した中継器が地上回線を拾う。
数秒後。
通信が復帰した。
地上映像には煙と赤い光。
橋本機の反応はない。
神室機が橋本の位置へ向かおうとしている。
葛城が止める。
『神室、戻れ!』
『橋本がいる!』
『位置へ戻れ!』
『でも!』
軽井沢が叫ぶ。
『神室さん!』
神室機の動きが止まった。
橋本機は光線級の射線上。
反応もない。
救援へ向かえば、神室まで同じ場所へ入る。
神室の声が震えた。
それでも、残された右腕の突撃砲を構える。
『……分かった』
低い声。
『光線級を止める』
橋本が最後まで守った通信を使う。
地上管制から送られる敵位置。
地下から届く一之瀬の支援情報。
一之瀬が言う。
『左側へ二十メートル』
神室。
『聞こえてる』
『次の照射前に――』
『分かってる』
神室。
伊吹。
石崎。
三機が光線級へ向かう。
正面には要撃級の巨体があり、直接射線を通せない。
左側の保守坑を使う。
神室が先頭。
左肩部中破。
視界の一部も失われている。
伊吹が後ろ。
石崎がさらに後方を守る。
軽井沢と櫛田は中央。
葛城は入口を維持する。
橋本を失った悲しみへ立ち止まる時間はない。
神室は左側保守坑を進む。
橋本の声は、もう聞こえない。
代わりに地上管制の坂柳有栖が呼びかけた。
『神室さん』
神室の返答は一瞬遅れた。
『何』
『左側の映像を、こちらで補います』
橋本が担当していた役割。
坂柳が引き継ぐ。
『前方に戦車級三体』
『撃つ』
伊吹。
『右側は私が見る』
石崎。
『後ろは俺が守る!』
三機が進む。
光線級は再び照射準備へ入った。
坂柳が残り時間を伝える。
『あと十五秒です』
神室。
『十分』
保守坑出口。
光線級の側面が見える。
神室は残る右腕で突撃砲を構えた。
一発目。
外殻へ着弾。
二発目。
赤い発光部へ命中。
伊吹と石崎も同じ箇所へ射撃を集中する。
光線級の反応が停止した。
神室が小さく呟く。
『橋本』
誰にも向けない声。
『止めた』
返事はない。
午前五時四十五分。
候補生第一隊は浅層入口まで百メートルへ迫っていた。
通信は復旧している。
だが、橋本の反応は戻らない。
誰も口には出さない。
それでも、全員が理解している。
神崎の表情は硬かった。
同じAクラス。
橋本。
神室。
坂柳。
神崎は回線状態を確認し、役割を続けた。
『中継器は維持できている』
声は揺れていない。
『第一隊、前進して』
「了解」
悲しむことより。
今は橋本が守った通信を使って、全隊を地上へ戻す。
浅層入口には、さらに要撃級二体が現れていた。
第二候補生隊の弾薬は減っている。
葛城の大型盾も損傷。
アルベルトは前方。
石崎と伊吹は光線級側から戻る途中。
神室も片腕しか残っていない。
中央には軽井沢と櫛田。
一体の要撃級が、第一候補生隊の退路へ迫る。
軽井沢はその巨体を見る。
第一隊と正規軍はもうすぐ到着する。
この一体を通すわけにはいかない。
葛城が命じる。
『中央へ火力を集中しろ』
軽井沢と櫛田が脚部へ射撃する。
爆発。
だが要撃級は止まらない。
葛城が盾で受ける。
衝撃。
盾へ大きな亀裂。
機体が押される。
アルベルトが横から支える。
二機のすぐ近くへ要撃級の腕が迫る。
軽井沢から射線は見える。
百二十ミリ弾も残っている。
だが、葛城とアルベルトが近すぎる。
僅かに外せば、味方機へ直撃する。
軽井沢の指が震える。
櫛田が呼びかけた。
『軽井沢さん』
『撃てない』
『大丈夫』
『何が大丈夫なの』
『私が照準を補助する』
櫛田機がレーザー指示を出す。
要撃級の肩部。
葛城たちから僅かに外れた位置。
軽井沢は照準を重ねた。
一人で撃たない。
櫛田。
葛城。
アルベルト。
仲間の位置。
全員を見て撃つ。
櫛田が言う。
『今』
軽井沢が百二十ミリ弾を発射した。
砲弾が要撃級の肩部へ直撃する。
大爆発。
巨体は右側へ崩れた。
入口の左側が開く。
葛城が言う。
『よくやった』
軽井沢はうまく呼吸できなかった。
操縦桿を握る手も震えている。
『当たった』
櫛田が答える。
『ちゃんと当たったよ』
二人は一瞬だけ笑った。
だが、倒れた要撃級の後ろから、二体目が迫っている。
葛城の盾は損傷している。
軽井沢の百二十ミリ弾は残り一発。
櫛田は三十六ミリ弾のみ。
神室たちは戻る途中。
地下からは第一隊の照明が見え始めた。
平田の声が届く。
『第二隊が見える!』
軽井沢も答える。
『平田くん』
入口奥。
正規軍機。
候補生機。
全員が戻ってくる。
あと少し。
要撃級の腕が葛城へ振り下ろされる。
葛城は回避。
盾がさらに破損する。
アルベルトが横へ出る。
石崎。
伊吹。
神室も戻りながら射撃する。
それでも要撃級は止まらない。
軽井沢が一歩前へ出た。
櫛田が驚く。
『軽井沢さん?』
『入口を空ける』
『でも――』
『平田くんたちが戻ってくる』
軽井沢機が要撃級の右側へ移動し、射撃する。
要撃級が軽井沢へ向きを変える。
入口中央が開く。
葛城が命じる。
『戻れ!』
軽井沢は拒んだ。
『今戻ったら、また入口が塞がる!』
正しかった。
要撃級を入口から引き離さなければ、帰還部隊は通れない。
誰かが注意を引き続ける必要がある。
軽井沢は、その役割を引き受けた。
地下側から平田にも見える。
『軽井沢さん待って!』
軽井沢が叫ぶ。
『来ないで!』
平田機が前へ出ようとする。
オレは止める。
「位置を維持しろ」
平田。
『でも!』
「今前へ出れば入口を塞ぐ」
平田機は止まった。
軽井沢が自分で作った道。
それを無駄にするわけにはいかない。
軽井沢機は右へ走る。
要撃級が追う。
神室。
伊吹。
石崎が側面から射撃を加える。
要撃級の腕が軽井沢へ迫る。
軽井沢は一度回避。
続けて二度目。
激しい機動は得意ではない。
それでも動く。
平田が叫ぶ。
『右へ!』
軽井沢は声に従って右へ移動。
巨大な腕が外れる。
櫛田。
『次は左!』
左へ回避する。
要撃級の腕が壁面へ激突。
軽井沢が脚部へ射撃。
伊吹。
神室。
石崎も同じ場所を狙う。
爆発。
要撃級が大きく傾く。
だが後方から複数の戦車級が現れ、軽井沢の退路を塞いだ。
平田が叫ぶ。
『軽井沢さん、戻れ!』
『戻る!』
要撃級が最後の腕を大きく横へ振る。
軽井沢機が回避しようとする。
警告。
間に合わない。
平田が前へ出ようとする。
だが距離がある。
要撃級の腕が軽井沢機へ迫る。
その瞬間、櫛田機が横から射撃した。
砲弾が要撃級の腕へ着弾し、軌道が僅かに逸れる。
直撃ではない。
それでも軽井沢機の肩部へ強い衝撃が加わり、機体は壁面へ押しつけられた。
警告表示。
『軽井沢機、中破!』
平田が叫ぶ。
『軽井沢さん!』
ノイズの向こうから返事がある。
『……生きてる』
平田が息を吐く。
『動ける?』
『右腕が動かない』
『脚は?』
『動く』
葛城が命じる。
『軽井沢機を回収しろ!』
櫛田がワイヤーを接続する。
神室、伊吹、石崎が要撃級へ射撃を集中し、最後に停止させた。
入口は開いた。
候補生第一隊と正規軍部隊が次々と浅層へ流れ込む。
平田機が軽井沢機へ近づく。
『軽井沢さん』
『遅い』
声は弱い。
それでも軽井沢らしい返事だった。
『ごめん』
『謝らないで』
『道、空けたから』
『見てた』
『ちゃんと戻ってきたね』
『うん』
平田が牽引ワイヤーを接続する。
軽井沢機を地上へ向けて引く。
この時点では。
まだ軽井沢は生きていた。
だが右側奥で、別の赤い発光が現れた。
光線級二体目。
坂柳有栖が警告する。
『新たな光線級反応!』
全機が遮蔽へ向かう。
しかし、入口周辺には正規軍と候補生が密集していた。
逃げられる空間が少ない。
橋本の中継器は失われている。
地上管制が照射地点を特定するまで、僅かな遅れが生じる。
神崎が第一候補生隊の予備中継器から位置を割り出した。
『右上、距離三百メートル!』
神室が尋ねる。
『見えない』
『岩棚の向こうだ』
橋本がいない。
その代わりに神崎が全体を見る。
神室と伊吹は射線を通せない。
葛城は損傷した盾を前へ出す。
アルベルトが支える。
正規軍機も二機、三機と盾を並べる。
だが光線級の照射は、複数機をまとめて貫く可能性がある。
軽井沢の機体は中破。
右腕部は動かない。
だが左腕側には、最後の百二十ミリ弾が残っている。
光線級そのものは見えない。
それでも神崎が座標を送る。
右上。
距離三百。
岩棚の奥。
軽井沢が照準を上げる。
視界も完全ではない。
平田が気づく。
『軽井沢さん、撃つな』
『どうして』
『機体が安定していない』
『でも位置は分かる』
『外したら――』
『外さない』
平田は否定する。
『無理だ』
軽井沢は静かに答えた。
『一人じゃない』
神崎が座標を送り。
櫛田が照準を補助する。
坂柳が地形と空気流の変化を計算。
神室が光線級の位置を修正する。
全員の情報が、軽井沢へ集まる。
神崎が言う。
『今だ』
軽井沢は百二十ミリ弾を発射した。
反動によって中破した機体の姿勢が大きく崩れる。
砲弾は岩棚の上を越え、光線級へ直撃した。
爆発。
赤い発光が消える。
照射準備反応も停止した。
浅層入口は守られた。
だが反動によって、軽井沢機を支えていたワイヤー固定部が破損した。
機体が斜面を滑り始める。
平田が叫ぶ。
『軽井沢さん!』
一本目のワイヤーが張る。
だが途中で切れた。
櫛田が別のワイヤーを伸ばす。
間に合わない。
軽井沢機は斜面下へ滑り、断界作戦で生まれた深い亀裂へ向かっていく。
平田機が追おうとする。
葛城が叫ぶ。
『平田、止まれ!』
平田は止まらない。
『……っ!』
軽井沢の声が通信へ入る。
強いノイズ。
『来ないで』
『待って』
『来たら――』
軽井沢は苦しそうに呼吸する。
『道が塞がる』
機体は亀裂の縁で一度止まりかけた。
だが地面そのものが崩れる。
平田が叫ぶ。
『軽井沢さん!』
最後に、軽井沢の声が届いた。
僅かに笑っているように聞こえた。
『戻ってきてくれて』
短い間。
『よかった』
軽井沢機は深い亀裂へ落ちていった。
直接的な衝撃映像は映らない。
通信が途絶える。
機体反応も消失した。
平田機が動きを止める。
『……』
返事はない。
櫛田も声を出せない。
葛城が叫ぶ。
『平田!』
平田は動かない。
オレは平田機へ近づいた。
「戻れ」
『でも――』
「戻れ」
『まだ――』
「機体反応はない」
平田の呼吸が乱れている。
『でも』
オレは言った。
「軽井沢が空けた道を塞ぐな」
厳しい言葉だった。
それでも、それ以外に平田を戻す方法はない。
平田機が震える。
一歩。
後退。
二歩。
入口方向へ戻る。
軽井沢が守った道を、全隊が通過する。
平田は前を向く。
泣く時間はない。
それでも声は出なかった。
一之瀬が隣へ並ぶ。
『平田くん』
返事はない。
それでも一之瀬は離れなかった。
午前五時四十八分。
地下部隊は浅層入口を突破した。
地上まで残り三百メートル。
だが、中枢構造体の深度はすでに百八十メートル。
地表到達まで推定五分。
東京湾中央の海面が大きく隆起している。
艦隊は安全距離へ後退。
地上囮反応炉は最大出力。
重金属雲も散布され、軌道支援部隊が照準準備へ入っている。
坂柳理事長の声が届く。
「地下部隊、急いでください」
茶柱が答える。
『全機を地上へ戻します』
須藤が低い声で尋ねる。
『軽井沢は』
誰もすぐには答えなかった。
平田が通信を開く。
『……戻れなかった』
短い言葉。
須藤は黙った。
堀北は息を呑む。
一之瀬の声も震えている。
龍園は何も言わない。
神崎にとっては、橋本。
平田にとっては、軽井沢。
二人がすでに失われた。
神室も、橋本の機体を地下へ残している。
最終作戦で、戦死者は二名となった。
地上では、東京湾中央の海面が割れ始めていた。
最初に現れたのは、黒い有機構造体の一部だった。
巨大な柱。
続いて白い外殻。
統率級が一体。
二体。
海水と泥を押し上げ、地表へ姿を現す。
東京湾中央へ巨大な水柱が上がる。
艦艇が大きく揺れ、海面全体へ波が広がる。
地中から。
東京ハイヴ中枢構造体が。
ついに東京湾へ姿を現し始めた。
坂柳理事長が全軍回線を開く。
「地上部隊」
「海上艦隊」
「軌道支援部隊」
そして。
「天衝作戦は、最終段階へ移行します」
地下から戻る部隊は、浅層出口まで残り二百メートル。
その地上では。
人類がこれまで遭遇したものを遥かに上回る巨大な敵が。
東京湾中央から。
天を衝くように。
ゆっくりと上昇を続けていた。