事情聴取を終えたときには空が赤く染まり始め、出久と帰ろうとすると勝己が言った。
「俺はテメェに助けを求めてなんかいねぇぞ!恩売ろうってか!?見下すなよ俺を!クソナードが!」
『………出久、家に帰ろう。そろそろ筋トレの時間だ』
勝己はそう言うと家に帰っていった。私は出久に筋トレの時間が迫っていると催促して家に帰ろうとした。すると、どこからともなくオールマイトが現れた。
「私が来た!!」
「なんでここに?」
「なぜなら私はオールマイ………ゴホッ!」
オールマイトが萎んだのを確認し、この男が本当にオールマイトなのだと判断した。
「礼と訂正、そして提案をしに来たんだ。君がいなければ、君の身の上を聞いていなければ口先だけのニセ筋となるところだった。ありがとう」
「そんな!そもそも僕が悪いんです。仕事の邪魔して学生なのに生意気なこと言って………」
「そうさ、あの場の誰でもない、小心者の君だったから私は動かされた。トップヒーローは学生時から逸話を残している。彼らの多くが話をこう結ぶ。『考えるより先に身体が動いていた』と。君もそうだったんだろう?
」
この瞬間、確信を持って断言したオールマイトに対して威厳を感じた。私は座り込んで泣く出久のポケットからハンカチを取り出し、尻尾を使って涙を拭いた。
『出久、落ち着いたか?』
「うん………」
落ち着いた出久にオールマイトは自分の個性について語り、力を受け継がないかと提案した。
「僕でよければぜひ!」
「見たところ君はかなり鍛えているね、ならば今譲渡しても問題ないだろう………食え!」
そう言ったオールマイトの右手には1本の髪の毛が握られていた。
「別にDNAを取り込めればなんでもいいんだけどさ!」
驚愕に包まれつつも出久が頑張ってオールマイトの髪の毛を飲み込み、個性を受け継いだ。
「ってその蛇はどうしたんだい?」
「僕の個性は『蛇と話すことができる個性』なんです。一概に戦闘向けとは言えないですけど、何とか戦闘に活かせるように頑張ってきたんです」
「ほう、例えばどんな風に?」
「さっきも、どこからヴィランが攻撃してくるか教えてくれていました」
「友、いやそんな言葉で括れないほど信頼しているんだね。早速だが、明日から個性に慣れてもらう!朝9時に海浜公園に来てくれ!」
「わかりました!」
こうして個性「ワンフォーオール」に慣れるための鍛錬が始まった。
◇ ◇ ◇
『出久、もっと腕を振れるぞ!』
「わかった!」
私はオールマイトが普通に活動できていることから個性は常時100%でないと考察し、水道の蛇口を少しずつ開くというイメージを伝えたところ出久はすぐに適応した。
「Shit!すぐに慣れるなんて驚きだ!」
「ワンフォーオール3%!!」
『その状態で動こう、出久』
「わかった!」
入試まで10ヶ月、2人で綺麗にした海岸でオールマイトとの特別メニューをこなしてさらに身体を鍛えた。
時には砂浜で激走し
「HeyHeyHey!!もっと速く走れるだろ!?」
『ジープはズルくないか?』
「死ぬぅぅぅ!!!」
※轢かないように特別な速度制御機械を取り付けられています
時には海で泳ぎ
「うおおお!!」
『こうやって私だけ海面から出るのもありだな………あっ』
目線の先ではオールマイトが水着の女の人に囲まれており、出久は嫉妬からより速度を上げた。
『嫉妬したとて出久は異性と会話できないだろうに………』
時には砂浜のソリを引き
「HeyHeyHey!!足が埋まってるぜ!!」
「うおおお!!」
『さすがに夏は暑いな』
出久は少しずつ身体を個性「ワンフォーオール」に慣れさせていった。