『この日が来たな』
「うん」
オールマイトの鍛錬により、今の出久はワンフォーオールを全身に8%まで安定して展開できるようになった。これを技として「フルカウル」と呼んでいる。かなりの速度で動く出久に目を追いつかせるため、私もここまで全身を使って速さに合うように鍛えてきた。
「ここまでできるとは予想外だ!君たちなら入学できるよ!頑張りなさい!」
試験当日、いつもの海岸で軽く身体を動かしてから入試会場に向かった。
試験会場の門をくぐり、改めて決意を胸にした。
「よし!頑張るぞ!………あっ!」
『おい出久!!』
だが、出久は段差に躓いてこけそうになった。急いで出久の首に移動して引こうとしたとき、突然出久が空中で停止した。
「……え?」
『……止まった?』
「大丈夫?」
出久が躓いたことで焦って周りが見れていなかったが、出久のすぐ隣に女子が立っていた。
「私の個性、ごめんね勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね、緊張するよねえ?お互い頑張ろう!」
「………」
『出久?出久ー?』
女子と話したから固まってるのか?まさか、女子とまともに会話できないとは思っていたが、ここまでとは………。
出久の鞄の中で筆記試験を待ち、出久の襟に隠れて試験の説明のための会場に移動した。そのまま鞄の中で待つことも考えたが、私も試験の説明を聞く方がいいと判断した。ましてや実技試験だ、なおさら聞いておいた方がいい。
「ボイスヒーロー「プレゼント・マイク」だ!!」
「受験生のリスナー、今日は俺、プレゼント・マイクのライヴにようこそー!エヴィバデセイヘイ!」
マイクの問いに誰からも返事がなかったが、割愛しておこう。
「こいつあシヴィー、なら受験生のリスナーに実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ、アーユーレディ!?」
『………返事もないのに続けるメンタルには拍手しようか』
「入試要項通り、リスナーにはこの後10分間の「模擬市街地演習」を行ってもらうぜ!持ち込みは自由、プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな。演習場には仮想ヴィランを三種・多数配置してあり、それぞれの「攻略難易度」に応じてポイントを設けてある。各々なりの個性で仮想ヴィランを行動不能にし、ポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ」
説明を受けてブツブツ独り言を始めた出久の首を軽く締めて注意しつつ話を聞き終え、出久と一緒に受験票に書かれてあった会場Bに向かった。
◇ ◇ ◇
会場のスタート位置で私が首に巻きつくと、出久は軽く頑丈なプロテクターを腕と足に取り付けた。そしていつでもスタートと同時に飛び出せるように構えた。
『ハイ、スタート!!』
スタートという言葉に反応した出久が飛び出した。何か放送で言っているのを横目に、人間がサーモグラフィーと呼ぶ仕組みですぐにロボを探した。
『次の角を右だ!』
「ブッ殺ス!」
「SMASH!!」
出久は順調にロボを拳で破壊していった。既にサーモグラフィーによってどの位置にロボがいるか確認が済んでいるため、私は近くのロボへの最短距離を考えて的確に伝えられた。すると、受験生の声が聞こえてきた。
「こんなに大きいなんて聞いてないぞ!!」
「逃げろ!!」
「何かあったのかな?」
『行ってみるか?』
出久と見に行ってみると、受験生が逃げてくる方からビルの高さの倍ほどの巨大ロボットがいた。
「ガガガガガガッガ!!!!」
「でっ!!?」
『0P、得点にならないにしても邪魔すぎるな』
戦いを避けようと2人で相談したが、ロボの近くに門で助けてくれた女の子が倒れているのが見えた。
「鏑、あれ!」
『あのとき助けてくれた女子か。出久、決まっているよな?』
「もちろんだ!行こう!」
出久が駆け寄り、瓦礫をどかして抱えて走った。
「瞬間フルカウル10%!!」
女子を戦いの音がないある程度安全な場所に下ろした。
「ここまでくれば………」
しかし、ロボは私たちを的確に追いかけてきていた。
『出久、少しずつだが近づいてきている』
「え?私………」
「大丈夫?」
女の子が意識を取り戻すと、出久は逃げることを提案した。
「あれは0Pロボだ。ここから逃げた方がいい」
「でもあなたは………!」
「僕は大丈夫だよ」
『出久!!来るぞ!!』
会話をしている間もロボは待ってくれるはずもなく、徐々に近づいてきている。出久はフルカウルを現時点の身体の限界まで上げた。私は他のロボの基板がかなり上の部分にあったことを思い出し、そこを破壊しようと提案した。
「瞬間フルカウル15%!!」
『いい角度だ!そこから!』
「SMAAAASH!!」
思い切り地面を踏み切り、弾丸のように飛び出してロボに向けて拳を振るった。
ボゴッッ!!!
ロボは拳一発で装甲が剥がれ、勢いを殺さずそのまま上に跳んだ出久が露出した基板を確認した。
「見えた!」
出久は空中で上向きに蹴った。
「NEW HAMPSHIRE SMASH!!」
そのまま下向きに加速され、拳で基板を破壊した。
「SMASH!!」
攻撃は上手くいったものの、瞬間的に限界を超えたことで着地の動きができず背中から落下していった。
『出久!!身体を捻ろ!!』
(ヤバいヤバいヤバい!!どうしよう!?)
「私の手を叩いて!!」
「!?」
するとさっき助けた女子が落ちてくる出久に必死に手を伸ばすのが見えた。
『あの子に何か策があるはずだ!』
「わかった!!」
私の動きと合わせることで何とか身体を捻り、出久は何とか手を叩くことができた。すると、手を叩いた瞬間に出久が空中で停止した。
「これって!?」
『対象を停止させるのか?いや、出久は動けている。その場に留まらせるのか?』
「よかった!」
空中で止まっている間に出久が体勢を整え、無事に着地することができた。
『終了~~!』
「終わった………」
『お疲れ様、出久』
マイクの放送で試験が終わり、怪我をしていないか女子の身体に目を走らせた。大きな熱が集中している箇所がなく、大きな怪我はしていないようで安心した。だが、女子ではなく出久が顔をしかめた。
『瞬間でも安定して出せるフルカウルの上限を一時的に超えたからな、全身が痛いはずだ』
「はい、お疲れ様~~お疲れ様~」
「あれは!」
「怪我してるね。ほら、こっちにいらっしゃい」
「リカバリーガール!」
出久と女の子に近寄ってきたのは身長の低いおばあさんだった。ただその姿は何度か見たことがある。雄英を拠点にして活動しているリカバリーガールだ。
「あ、はい!」
女の子はリカバリーガールの治療を受け、怪我が治ったらしい。
「お互い受かってるといいね!」
「助けてくれてありがとう!」
私は無事女の子を助けることができた出久を褒めながら帰路についた。
部活が落ち着いてきたので少しずつ投稿していきます。