僕のヒーローアカデミア 〜黒翼の守護者   作:コバハト

7 / 7
第4話『烏の活動』

第4話『広がる空』 前編

 

『烏』として活動を始めてから、数週間が経った。

 

最初に投稿した動画。

 

『夕焼けの空の中』

 

あの日の登録者は3人。

 

数字だけ見れば、本当に小さな始まりだった。

 

でも。

 

俺にとっては特別だった。

 

初めて。

 

自分が見た景色を。

 

誰かと共有できた日だったから。

 

◇◇◇

 

「今日も撮影?」

 

学校から帰ると、友羽那がカメラを見る。

 

「うん」

 

「どこ行くの?」

 

「まだ決めてない」

 

カメラを持ちながら窓の外を見る。

 

毎日同じ景色を見ているはずなのに。

 

時間。

 

天気。

 

季節。

 

それだけで全然違って見える。

 

「今日は……川の方に行ってみようかな」

 

「また綺麗なの撮れそう!」

 

「だね」

 

友羽那の笑顔を見て、俺も笑う。

 

◇◇◇

 

裏山へ向かう。

 

いつもの広場。

 

でも今日は修行じゃない。

 

カメラを持って、空へ飛ぶ。

 

翼を広げる。

 

風を感じる。

 

地面が遠ざかっていく。

 

何度飛んでも。

 

この瞬間だけは特別だった。

 

「やっぱり好きだな」

 

空から見る世界。

 

人が歩いている街。

 

風で揺れる木々。

 

遠くに見える山。

 

地上では気付けない景色が広がっている。

 

カメラを向ける。

 

でも。

 

ただ綺麗な景色を撮るだけじゃない。

 

見ている人が、その場所にいるような。

 

そんな動画にしたかった。

 

◇◇◇

 

家へ帰る。

 

撮った映像を確認する。

 

「……ここいいな」

 

夕日に照らされた雲。

 

風で揺れる木々。

 

飛んでいる時の音。

 

必要な部分だけを残して編集する。

 

鳥話兄さんから教わった編集技術も少しずつ身についてきた。

 

色を整える。

 

音を調整する。

 

最後にタイトルを決める。

 

『夕暮れの空』

 

投稿。

 

数時間後。

 

通知が鳴る。

 

コメント。

 

『この景色、本当に綺麗』

 

『空を飛んでるみたいな感じがする』

 

『また見に来ます!』

 

画面を見る。

 

自然と笑顔になる。

 

自分が好きでやっていること。

 

それを誰かが楽しんでくれている。

 

その事実が嬉しかった。

 

◇◇◇

 

ある日の夜。

 

鳥話兄さんが俺の部屋に来た。

 

「天理」

 

「最近、歌ってるだろ」

 

「……聞いてた?」

 

「神社まで聞こえる」

 

少し恥ずかしくなる。

 

昔から歌うことは好きだった。

 

でも。

 

誰かに聞かせようなんて考えたことはなかった。

 

「歌ってみた、やってみたら?」

 

「俺が?」

 

「ああ」

 

「空撮だけじゃなくてもいい」

 

「お前が好きなものを届ければいい」

 

その言葉を聞いて考える。

 

景色。

 

空。

 

歌。

 

全部、自分が好きなもの。

 

「……やってみようかな」

 

「決まりだな」

 

兄さんは笑った。

 

◇◇◇

 

数日後。

 

初めての歌ってみた撮影。

 

顔は出さない。

 

名前も出さない。

 

ただ。

 

『烏』として。

 

マイクの前に立つ。

 

少し緊張する。

 

「……よし」

 

録音開始。

 

自分の声が部屋に響く。

 

歌い終わる。

 

編集して。

 

投稿する。

 

タイトル。

 

『ピースサイン歌ってみた』

 

投稿ボタンを押す。

 

◇◇◇

 

しばらくして。

 

通知が鳴る。

 

コメント。

 

『声綺麗……』

 

『曲の雰囲気に声めっちゃ合ってる!』

 

『また歌ってほしいです!』

 

画面を見つめる。

 

不思議な感覚だった。

 

空から見える景色。

 

自分の歌声。

 

自分の好きなもの。

 

それを誰かが受け取ってくれている。

 

「……楽しいな」

 

小さく呟く。

 

この日から。

 

『烏』の活動は、少しずつ広がっていった。

 

第4話『広がる空』 後編

 

『烏』として活動を続けるようになってから。

 

投稿するものは少しずつ増えていった。

 

空撮。

 

風景。

 

歌ってみた。

 

そして。

 

もう一つ。

 

俺が好きなもの。

 

ゲーム。

 

◇◇◇

 

「天理、またゲームしてる」

 

部屋に入ってきた友羽那が、机の上を見る。

 

「うん」

 

「新しいの買ったんだ」

 

「鳥話兄さんが貸してくれた」

 

昔からゲームは好きだった。

 

知らない世界を冒険する。

 

強敵に挑む。

 

仲間と協力する。

 

それが楽しかった。

 

「これも配信するの?」

 

「……どうかな」

 

少し迷う。

 

空撮や歌ってみたとは違う。

 

ゲーム配信は、画面の向こうにいる人と直接話す必要がある。

 

「緊張する?」

 

「少し」

 

友羽那は笑う。

 

「でも、てんにぃが楽しいなら大丈夫だよ!」

 

その言葉で少し気が楽になる。

 

「……やってみる」

 

◇◇◇

 

夜。

 

机の前に座る。

 

マイクを確認する。

 

カメラは使わない。

 

顔は出さない。

 

映るのはゲーム画面と、黒い翼のアイコンだけ。

 

配信開始。

 

画面に文字が表示される。

 

『烏 配信中』

 

「……こんばんは」

 

少し声が震える。

 

「烏です」

 

数秒後。

 

コメントが流れ始める。

 

『こんばんは!』

 

『初見です!』

 

『ゲーム配信待ってました!』

 

「ありがとうございます」

 

少しずつ緊張が消えていく。

 

ゲームを始める。

 

プレイに集中しながら。

 

時々話す。

 

「今の難しいな……」

 

「ここはこうした方がいいか」

 

「やった!」

 

上手くいけば喜ぶ。

 

失敗すれば笑う。

 

作ったキャラクターじゃなく。

 

ただ自然な自分で話す。

 

◇◇◇

 

配信終了。

 

画面を見る。

 

視聴者数。

 

初めてのゲーム配信。

 

思っていたより多くの人が見てくれていた。

 

「……楽しかった」

 

自然とそう言葉が出た。

 

兄さんが後ろから画面を見る。

 

「どうだった?」

 

「楽しかった」

 

「なら続ければいい」

 

「見てる人も、たぶんそれが一番嬉しい」

 

その言葉に頷く。

 

◇◇◇

 

次の日。

 

学校から帰り、スマホを確認する。

 

『烏』の動画に新しいコメントが来ていた。

 

『昨日のゲーム配信面白かったです!』

 

『歌も好きだけど、話してる時の雰囲気も好き』

 

『次の配信楽しみにしてます!』

 

画面を見る。

 

少し前まで。

 

俺の動画を見てくれる人は数人だった。

 

でも今は。

 

待ってくれる人がいる。

 

それが嬉しかった。

 

◇◇◇

 

その日の夜。

 

新しい動画を投稿する。

 

空撮。

 

歌。

 

ゲーム。

 

どれも違う。

 

でも。

 

全部俺が好きなもの。

 

『烏』は、ただ人気になるために始めたわけじゃない。

 

自分が見た景色。

 

自分が楽しいと思ったこと。

 

それを誰かと分け合いたかっただけ。

 

窓の外を見る。

 

夜空には星が広がっていた。

 

「明日は何を届けようかな」

 

まだ小さなチャンネル。

 

まだ知らない人の方が多い。

 

それでも。

 

少しずつ。

 

確実に。

 

『烏』は広がっていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

炎が魅せるアカデミア(作者:妖狐アルル)(原作:僕のヒーローアカデミア)

転生し死ぬ気の炎と匣兵器を持つ少年が自分の信念で悪を燃やし尽くす


総合評価:274/評価:8/連載:4話/更新日時:2026年08月23日(日) 00:01 小説情報

僕のヒーローアカデミア A Little Extra(作者:ジョン堂)(原作:僕のヒーローアカデミア)

 日本に生きるごく普通の一般人だった男は、唐突に【個性】が存在する世界へ転生する。▼ 原作に登場するキャラ達、事件の数々、襲い来る敵、物語の中心『雄英高校』での試練……。▼ 転生主人公が、薄い原作知識とチート【個性】をもって、どうあがいていくか……。▼ これは、そんなよくある話――▼※注意※▼ 拙作・愚作・凡作・駄作、ご注意されたし。▼ 何卒寛容な心をもって…


総合評価:789/評価:7.2/連載:32話/更新日時:2026年08月27日(木) 17:30 小説情報

文ストの異能力をすべて持つ者の雄英生活(作者:ライタードーパント)(原作:僕のヒーローアカデミア)

文スト読者であるオリ主が異能力をすべて持ちこんでヒロアカ世界に転生して無双する物語。▼書き始めた理由としては文スト✕ヒロアカの小説が案外ゼロだったからです。▼※オリ主が持っている異能力は原作はもちろん外伝、映画のみしか出てきていない異能力も持っているとします。▼※なるべく全ての異能力を使うよう話を展開していきますが、本当に使いづらかったり、名称や能力がはっき…


総合評価:224/評価:5.45/連載:7話/更新日時:2026年08月14日(金) 01:06 小説情報

ダイヤのアカデミア(作者:妖狐アルル)(原作:僕のヒーローアカデミア)

仮面ライダーギャレンに変身する橘 冴幸の物語▼ ⚠かなりのキャラ崩壊があります、主に耳郎響香のキャラ崩壊が凄いです▼ ▼【挿絵表示】▼ table___様のはりねず版男子メーカー2で制作させていただきました▼ オリキャラのイメージです


総合評価:124/評価:6/連載:9話/更新日時:2026年06月01日(月) 10:58 小説情報

個性、海賊。ヒーロー向きじゃないって?これ以上ない英雄の個性だろ!(作者:紡縁永遠)(原作:僕のヒーローアカデミア)

事の始まりは中国、軽慶市。『発光する赤児が産まれた』というニュースだった。▼ 以降各地で「超常」は発見され、いつしか「超常」は「日常」に、「架空(ゆめ)」は「現実」となった。世界総人口の約八割が何らかの「特異体質」である現在、個性を悪用する敵(ヴィラン)により混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が、脚光を浴びていた。そう、「ヒーロー」と呼ば…


総合評価:763/評価:5.57/連載:7話/更新日時:2026年08月21日(金) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>