おっとり系お姉さんな先輩が破天荒モンスター系マスコットキャラの中の人やっててギャップがヤバい 作:スタッフの二癖(ふたくせ)
オリジナル:現代/日常
タグ:R-15 着ぐるみ 中の人 アクター ギャップ 先輩
保険委員とかやってておっとりした声で手当てしながら「後輩くん、大丈夫ですか?」とか言ってくれるお姉さんな先輩が実は学外でボイスチェンジャーと着ぐるみで『ギャーーッ‼︎カ○チョーしやがったのは誰ダァー‼︎』とかガラガラ声で言っちゃうようなテンション高い系のマスコットキャラクターに変身していた、
みたいな話。
ギャップ。
※とりあえずジャンル:日常にしましたが変わるかもしれません。
私の位置付けはいつの間にか決められていた。
『みどりちゃんってとってもきれいだね!』
周りのみんなに。
『さすが
『──いいえ、それ程でもありませんよ?でも、ありがとうございます』
──……他ならぬ、私自身に。
私の立ち位置は定められ、言動、服装、選択、そして私の人格すら縛られ、封じられていく。
私の気質すら縄となり、抜け出そうにももがく事すらできない。
変えたくとも変えられない“私である事”が縛りの根元、振り解く事などできようはずも無い。
「ただいまー」
……ゆっくりと、“私である事”で“私”が消えて行く。
そんな本末転倒な日々の中、
「──?」
母が持ち帰った中の一つが、目に入った。
「──それでウチ来たのかー、久我山さん。まさかかの久我山華さんの元にまで届くとは思ってなかったね」
「えっと、それでどうなんでしょう。お伝えした通り、私、未経験で……」
「あー、それはいいよ。“そういうのもアリ”って方針で募集したのはウチだから。じゃ、まあ一度着てみよっか?」
とあるプロジェクトが借りた事務所の、オフィススペース。
「はい、っ……!」
そこでの面接を終えて、スタジオスペースに移動する。
「──これが仮称・ブルモンくんだ」
スタジオで広げられていたのはフサフサの毛むくじゃらで、細い牙の生えた赤く笑う口に黒目がちの目をした青い
──その、着ぐるみ。
私、
「じゃあとりあえず久我山さんのブルモンくんがどんなもんになるのか見てみる感じで」
「はい、っ!」
……けれど、私は今まで着ぐるみを着た事が無い。
ブルモンくんが素人の成長を見所にする案から玄人で手堅くする案まで、振れ幅のある想定をされたプロジェクトだったから着ぐるみ未経験の私でも応募が通ったけどどうなるんだろう……。
「しっかし久我山さん背ぇ高くてすらっとしてるよねー……。身長いくつ?」
「確か171でした」
「おぉ〜……」
あぁ“モンスター”だから大きいのがいいだろうって高い方の身長規定があったっけ。
それはともかく着ぐるみが汗で汚れないように長袖の運動服に着替えて、頭にタオルを巻いた。
「じゃ、体からだね〜。足上げてー」
「はい、っ」
いよいよ着ぐるみを着ていく。
「っ、……」
「ファスナーはこっちで閉めるからねー、毛が挟まったら大変だしねー」
まずは腕と足の付いた体に、ファスナーで開かれた背中から手足を通して、体を入れる。
着ぐるみの内側の生地はつるつるした感じで、するっと着てしまえた。
「うん、サイズは良さそうだ。ピッタリだね」
「……、」
背中のファスナーを上げてもらうと──
──私の体は青い毛むくじゃらになっていた。
「──」
「……あれ?どした?」
私とは似ても似つかない、
毛むくじゃらの、モンスターの体。
「……あの、ボイスチェンジャーいいですか?」
……気付くと、お願いを口に出していた。
「え⁉︎いいの⁉︎」
「はい。お願いできますか……?」
ブルモンくんはトークや司会を勝ち取れるように“喋れるマスコット”というコンセプトの元、声出し用のボイスチェンジャーが用意されていた。
ブルモンくんのアクターが付ける事ももちろん想定されてたけど、私は着ぐるみ未経験だからまずは無しで、ってなってたけど……。
「分か、ったけど、今事務所だからちょっと取って来るねー!」
「‼︎ありがとうございますっ!」
──お願いは受理されて。
「よーし続きだよー」
「はいっ!」
再開。
爪の生えた手に手を入れて、爪の生えた足を履く。
「……!」
これで手足の先まで、私の体はモンスターの体になった。
にぎにぎ。
「ヘッドセット大丈夫ー?キツくなーい?」
「はい!大丈夫です!」
「じゃ、スイッチ入れるね〜」
ボイスチェンジャー付きのヘッドセットを付けてもらい。
「じゃ、頭かぶせるよ〜」
「!、!」
──最後に残った頭を持ち上げて、かぶせてもらう。
とさり。
「ベルトごめんねー」
「……!」
外れてしまわないようにベルトを留めた手が抜き取られて。
「…………」
全身が、モンスターの重さに包まれる。
「……」
腕を上げてみると、するっとした感触と毛むくじゃらのフサフサした感触が伝わってくる。
「…………」
ぐにゃん、
と体を動かす。
……ぐにゃん、ぐにゃにゃん。
なんか、繰り返してしまう。
「…………」
「えっと、大丈夫……?」
……そして、繰り返すうちに。
「…………!」
……なんか、なじんできた!
「!」
ばっ、と顔を上げれば、鏡に映るのは青い毛むくじゃらのモンスター。
『──待たせたナァ!』
牙の生えた赤い口から出るのはモンスターらしいガラガラ声。
『オレ様はブルーモンスターのブルモン!ブルモンくんって呼んでくれていいんだゼェ‼︎』
──私はブルモンくんになった!
「……えーと。……久我山さん?」
……かち、かち、ごそっ。
「はいっ⁈」
「……未経験なんだよね?」
「はいっ‼︎でもなんかなれちゃいました!」
ブルモンくんの頭を外して答える。
「……そっかー、なれちゃったかー。……“違う自分になりたくて”だったかー。
「?」
「──ヨシ!じゃあ君の設定決めちゃおっか!」
「分かりました!」
かち、ごそ、かちっ。
『──オレ様の出番ダナ!』
「……切り替えすごいね?」
「プロフィールお願いできるかい?」
『オウ!好きなイロは青!好きなモノは水と空気!海の青と空の青から生まれたブルモンくんダゼ!』
──私はあっさりと、
「さっきめっちゃグネグネ動いてたけど、最大どんくらい動けそう?」
『ウーン、
「いや着ぐるみで10曲は休憩入れないと無理でしょ⁉︎……でもじゃあ2・3曲くらいやってみてくれるかい?」
『ハハッ、舐めんジャネーゾ!』
それはとっても楽しくって。
『──ドウダ!』
「おー……。でもそろそろ脱がないと、部屋ん中でも熱中症んなるよ?」
『ンンッ、確かにそうダガ……(「熱気も、よじって……!」)……コウダ!』
「うわっ⁈」
こもった熱気を放出する、必殺技を生み出しちゃうぐらい。
「──結局10曲見たし、今日はこのくらいにしとこうか?」
「──はいっ‼︎」
すっごく、いい時間だった。
「それじゃあまた連絡するよ。──どんな形でも、君はもう欠かせなさそうだからね」
「こちらこそ、今日はありがとうございました!──連絡、楽しみにしています!」
今日は、私の位置付けを変える事のできた、
「♪」
素晴らしい日になった!
・久我山緑
自分の立ち位置に悩んでいた。
が、ブルモンくんになって解消された。
有名人の母を持つ。
・熱気放出
ブルモンくんの必殺技。
内に籠った熱気を体をよじって口から排出する事で活動時間を延ばす。
若干ギャグとかファンタジーに片足突っ込んでる。