戦姫絶唱シンフォギア RE:EVOLT   作:どーべんうるふ

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第四話 「盤上の怪物」前編

 

 

 世界には。

 

 表に出る者と。

 

 裏で動かす者がいる。

 

 シンフォギア装者。

 

 ノイズ。

 

 特異災害対策機動部。

 

 そして。

 

 それら全てを静かに眺める存在。

 

 ブラッドスターク。

 

 かつて世界を滅ぼした怪物。

 

 エボルト。

 

 彼は今。

 

 この世界の物語を楽しんでいた。

 

⸻

 

「いやぁ。」

 

 カフェnascita。

 

 石動惣一はカウンターを拭きながら、テレビに映るニュースを見る。

 

 表向きは。

 

 ただの喫茶店のマスター。

 

 誰とでも気軽に話す気さくな男。

 

 しかし。

 

 その裏では。

 

 世界中の情報を整理している。

 

「装者が増えて。」

 

「敵も動き始めて。」

 

「いやぁ、賑やかになってきたねぇ。」

 

 笑う。

 

 以前なら。

 

 この状況ならすぐに支配へ動いた。

 

 力を集め。

 

 敵を利用し。

 

 最後には全てを奪う。

 

 それがエボルトのやり方だった。

 

 しかし。

 

 今は違う。

 

「勝つだけなら簡単なんだけどねぇ。」

 

 コーヒーを飲む。

 

「それじゃあ、つまらない。」

 

 勝利だけを求めるゲームは。

 

 もう経験している。

 

 一度目のシンフォギア世界。

 

 完全な勝利。

 

 全てを掌握した結末。

 

 だからこそ。

 

 今は過程を楽しむ。

 

⸻

 

 夜。

 

 ブラッドスターク。

 

 街の屋上。

 

 視線の先には。

 

 一人の少女。

 

 風鳴翼。

 

 天羽々斬の装者。

 

 孤高の戦士。

 

「へぇ。」

 

 スタークは興味深そうに見る。

 

「響とは真逆のタイプだねぇ。」

 

 響は。

 

 誰かと繋がることで強くなる。

 

 翼は。

 

 背負うことで強くなろうとする。

 

 どちらも違う。

 

 だから面白い。

 

⸻

 

 翼はノイズとの戦闘を終えた後。

 

 一人、夜の街を歩いていた。

 

「……。」

 

 その前に。

 

 黒い影が現れる。

 

「こんばんは。」

 

 ブラッドスターク。

 

 翼は即座に刀へ手を伸ばす。

 

「何者だ。」

 

「怖いねぇ。」

 

 スタークは笑う。

 

「初対面でその警戒心。」

 

「悪くない。」

 

「質問に答えろ。」

 

 翼の声は鋭い。

 

 スタークは肩をすくめる。

 

「俺はただの観客。」

 

「……。」

 

「でも。」

 

 一歩近づく。

 

「君には少し興味がある。」

 

⸻

 

「興味?」

 

「そう。」

 

 スタークは翼を見る。

 

「君さ。」

 

「強いよね。」

 

「力もある。」

 

「技術もある。」

 

「覚悟もある。」

 

 しかし。

 

「一つ足りない。」

 

 翼の表情が変わる。

 

「何だ。」

 

「余裕。」

 

⸻

 

 翼は黙る。

 

 スタークは続ける。

 

「君は全部背負おうとしてる。」

 

「自分がやらなきゃ。」

 

「自分が守らなきゃ。」

 

「そう思ってる。」

 

 図星。

 

 翼の目が細くなる。

 

「……貴様。」

 

「俺はさ。」

 

 スタークは笑う。

 

「そういう人間が。」

 

「どこまで無理できるのか見るのが好きなんだよねぇ。」

 

⸻

 

 挑発。

 

 しかし。

 

 翼は斬りかからない。

 

 怒りで動けば。

 

 相手の思う壺。

 

 そう理解している。

 

「なるほど。」

 

 スタークは笑う。

 

「ちゃんと考えるタイプか。」

 

「ただの挑発ではないようだな。」

 

「さぁ?」

 

 スタークは答えを濁す。

 

「自分で考えてみなよ。」

 

⸻

 

 その頃。

 

 別の場所。

 

 フィーネは報告を受けていた。

 

「ブラッドスターク……。」

 

 資料を見る。

 

「装者への接触。」

 

「敵対行動なし。」

 

「しかし目的不明。」

 

 フィーネは考える。

 

「まるで。」

 

「こちらを試しているようね。」

 

⸻

 

 正解だった。

 

 エボルトは。

 

 誰か一人を見ているわけではない。

 

 響。

 

 翼。

 

 フィーネ。

 

 全て。

 

 それぞれの選択を見ている。

 

⸻

 

 翌日。

 

 nascita。

 

 石動惣一として。

 

 響が店に訪れる。

 

「マスター。」

 

「おや、響ちゃん。」

 

 いつもの笑顔。

 

 響は少し安心する。

 

 この人は普通だ。

 

 そう思える。

 

 だが。

 

 その裏に。

 

 ブラッドスタークがいることを。

 

 彼女は知らない。

 

「最近、大変そうだねぇ。」

 

「え?」

 

「いや。」

 

 石動は笑う。

 

「若い子が悩んでる顔してたから。」

 

 響は少し驚く。

 

「分かるんですか?」

 

「そりゃあね。」

 

 エボルトは。

 

 人間の感情を理解している。

 

 だから。

 

 今の響の迷いも分かる。

 

「無理して答え出さなくてもいいんじゃない?」

 

 その言葉。

 

 響は少しだけ救われる。

 

⸻

 

 夜。

 

 石動惣一は一人になる。

 

 そして。

 

 ブラッドスタークへ戻る。

 

「さて。」

 

「一人目は響。」

 

「二人目は翼。」

 

「次は……。」

 

 笑う。

 

「どんな答えを見せてくれるかな。」

 

⸻

 

 怪物は。

 

 もう世界を壊すためだけに動いてはいない。

 

 人間を理解したから。

 

 感情を得たから。

 

 そして。

 

 自分自身が。

 

 その変化を楽しんでいるから。

 

「ゲームは。」

 

「勝つだけじゃ面白くない。」

 

 暗闇へ消える。

 

「盛り上がってこそだよねぇ。」

 

⸻

 

 

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